第14話 初めての夜
お風呂から上がり部屋へと戻ってからしばらくが経った頃、時間は分からないが夜も遅くなっていると判断し就寝することになった。
おばあさんはそのままリビングで赤ずきんは自分の部屋。そして俺たちはというとおじいさんが使っていた部屋を使わせてもらうことになり、ルナと共に部屋に入ったがそこで一つ問題が生じた。
「……ええと、ベットが一つしかないわね」
「ああ、そうだな。さすがに一緒に寝る訳には行かないし……俺は床で寝るからルナはベットを使ってくれ」
「何言ってるのよ傷が癒えているとはいえ体力まで回復しているわけじゃないのだしベットはユウトが使いなさい」
「いやいや疲れてるのはお互い様だろ、こういうのは男が損を被るべきなんだよ」
「どうやら譲る気はないらしいわね。このまま話していても平行線なのは目に見えているわけだし、もういっそベットで一緒に寝るのはどう?」
「……本気か? 冷静に考えなくてもマズイのは分かるだろ?」
「私はユウトを信じているし何もマズイことはないわよ。まあ強いて言うなら私の寝相が悪いことぐらいだと思うけれど……もしかして私に手を出すつもりなのかしら?」
「ないないない絶対に出さないよ」
「むっ、どうして出さないのよ! 私に魅力がないって言いたいわけ。これでも元の世界では引くてあまただったんですけど」
「ああもうめんどくさいな。ルナに魅力があるとかないとか以前にそういうのは恋人とか好きな人とするものだと俺は思ってるんだよ」
「そ、そんなことは私だって分かってるわよ。今のは全部ユウトを試すために言ったことなんだから間違っても私が軽い女だなんて勘違いしないでよね」
ぷいと可愛らしく顔を逸らすルナに、『はいはい』と返事を口にする。それから間をおかずにルナはベットへと腰掛けるとそっと息を吐き出した。
「……一緒に寝るわよ、もちろん冗談なんかじゃなくて本気よ。ユウトは森が初めてだから知らないでしょうけど夜はものすごく冷え込むのよ。それでも意地を張って床で寝ると言うのなら私もそうする……けどそんなことをすれば私たち二人とも明日の朝には体調を崩しているでしょうね。最終的な判断はユウトに任せるけどどうする?」
本当に意地が悪いな、まだ短い付き合いではあるがこう言えば俺が断らないことをちゃんと理解している。逆に俺だってこのまま強引に床で寝ればルナが対抗してくることが想像出来てしまうぐらいには知っているつもりだ……それに少しずつではあるが肌寒くなってきてるのも事実だ。これが元の世界であれば暖房をつければ済む話だがそれがない以上、床で寝れば風邪をひいてしまう可能性も十分ある。
仕方ない、と自分に言い聞かせて、俺はルナの待つベットへと移動した。
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ベットに入ってからどれぐらい経ったぼか分からないが、目を閉じてぼーっとしてみたり、羊の数を数えてみたりしたが眠りにつくことが出来ずにいた。
理由は明白で俺は今まで異性と同じ布団で寝た経験などないためかなり緊張しているのだ。ドクンドクンと心臓の音だけがうるさくて背中越しのルナに聞こえていても不思議じゃない。高鳴る心臓を落ち着けようと何か別のことを考えることにした。
思考を始めてからまず最初に頭をよぎったのは巨狼との戦闘でみせたルナの実力。俺が思っているよりもずっと強く洗練されていた魔法。
次に思い返したのはキノコ集めをしている最中に突如現れたカイと名乗る星剣の所持者だ。奴は俺の攻撃を意図も容易くかわし実力の差を思い知らされた。俺では奴には勝てないと……自分でも不思議に思うがなぜだかルナやカイとは決定的に何かが違うと感じる。
このままじゃ俺は無力で何も出来ない足手まといになってしまう。それは嫌だ……俺はおばあさんや赤ずきんの世界を守るために後悔しないために強くならなきゃいけないんだ。
「……なあルナまだ起きてるか?」
「起きてるけど、どうしたの何かあった?」
「頼みがあるんだ……俺に稽古をつけてくれ。今よりももっと強くなりたいんだ」
「どうしてユウトは強くなりたいの?」
「ルナや赤ずきん、おばあさんにこの世界、全部守るために力が強さが必要なんだ。俺たちはこの先絶対に戦わなきゃいけなくなるから」
「どうしてそんなことが分かるの?」
「俺たち以外の星剣の所持者に会った。そいつは世界を滅ぼすと言ったんだ……それを俺たちが止めようとすればそいつもまた俺たちを止めるために動くはず、そうなれば必ず戦うことになる」
「神様の把握していない星剣の所持者……分かったわ。それなら明日からユウトに修行をつけてあげる。だから強くなって私をみんなを世界を守ってね頼りにしてるわよ」
「えっああ、ありがとう……いやちょっと待て、自分で言うのもなんだが今の話を信じるのか?」
「信じるわよそれが仲間ってものでしょ。それに元から私達以外にも星剣使いがいるかもしれないって話だったわけだし嘘だとは思わないわよ。それにユウトが逆の立場だったら私の話を嘘だって疑う?」
「…………そこまで信頼されてるとなんだかむず痒いな、ありがとうルナ」
「別にお礼を言われるようなことじゃないわよ。明日からはビシバシいくから今日はもう寝ましょおやすみユウト」
「ああ、おやすみルナ」
それから程なくして俺は眠りについた。
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