寝すぎ44 ピースフル姉妹の〈ぴすぴす攻略配信〉2〜!。 ぴすぴす〜!。姉妹無双(姉)……す、少しなら見てもいいからぁ!

「スピー! ここはあたしがメインでいくわ! スキル〈肉体超活性――戦鎧〉! やああああっ!」


 赤く燃ゆる刃を手に、白い制服のミニスカートをひるがえして洞窟型ダンジョンを駆ける姉パフィールの体を迸る赤い魔力が覆う。


 その視線の先にいるのは、ゴツゴツとした何層もの硬い岩のような鱗に覆われた体長2メートルほどの蜥蜴魔物ロックリザード、その群れ。


 その硬く強靭な鱗は、生半可な斬撃や打撃、魔法攻撃すらも意に介さないほど。――しかし。


「たあっ!」


「ギイオオッ!?」


 ほむら――A級武器の赤熱する刀身と振るうパフィールのスキルで強化された膂力、そして鍛えられた卓越した剣技によって、あっさりとその体ごと断ち割られた。


「せいっ! やあっ!」


「「ギオッ!? ギアッ!?」」


 さらに続けざまに金色のツインテールをなびかせながらまるで舞うような、すばやく的確な身のこなしで、数体のロックリザードを屠る。


 ピコン。


『チャリンチャリンチャリン』


『カッコいい……!』

『やっぱ綺麗だよな……!』

『強くて可愛いなんて、最っ高……!』


 この華麗な――いうならば、配信映える戦いぶりで姉パフィールは人気だった。


 つけ加えると――ぱふぷるるんっ。


『チャリンチャリンチャリンチャリン』


『今日も眼福』

『REC』

『ええい! ロックリザードはいい! パフちゃんを映せ!』

『そうだ! ドローンさん! もっとアップで!』

『できれば仰りアングルで! ドローンさんならやれる!』


 ――やはり、別の意味でも人気だった。


「ちょ、ちょっと! 毎度のことながら、あんたたち! そんなとこばっか見てんじゃないわよ!」


 ピコン。


『ごめんね……! パフちゃんが魅力的すぎるから、つい……!』

『うん。ごめんね……! 応援するから許して……!』


『チャリンチャリンチャリンチャリンチャリン――』


 リスナー同士の過度な競争を煽らないよう、配信画面には金額が表示されない応援課金音が鳴り止まない勢いで次々と鳴り響く。


「わ、わかったからぁ! す、少しなら見てもいいからぁ! みんな無理して応援しちゃ、だめえぇっ!」


「「ギアオオッ!?」」


 ピコン。


『チョロくて草。……だがそれがいい』

『ふ。わかってるじゃねえか』

『必死だめだしたすかる……!』

『ずっとそのままの君でいて……!』

『けど半べそかきながらも、ガンガン魔物倒してるのすげえ……!』


 ――という、だいたいいつものやりとりをリスナーとやっているわずかな間に、十数体ほどのロックリザードの群れは殲滅された。


 その硬く強靭な鱗に守られた生態の結果、大して動きの速くないロックリザードは、まさにパフィールにとっておあつらえ向きの相手と言えた。


 ちなみに。


「……隙あり」


「ギャガッ!?」


 ピコン。


『チャリン』


『上手い……! スピーちゃんのスキル〈精神超官能〉で敵の雑な攻撃を誘ってからの……!』

『反撃で甲殻の隙間から急所を一刺し……! シビれる……!』

『コメントの域ぴったりで、草』


 姉パフィールに比べれば、動きも少なく地味な戦いをくり広げるスピーリアの戦いも玄人向けとして人気だった。


 それと。すぴぷ……。


 ピコン。


『チャリンチャリン』


『胸ってのは、激しく動いて派手に揺れればいいってものじゃねえ。確かにそこに在るってのが重要なんだ』

『胸ソムリエ草』


 ――やはり、妹も別の意味でも人気だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る