第36話 幕間 ⑥


 虎谷が死んで半年が過ぎた。


 俺は家の庭先で、空を見上げていた。


 ぼんやりと、どんより曇った陰鬱な空を――。


「早いなぁ……。おまえがあっちの世界に行ってから、もう半年以上たつよ。半年以上たっても、たまにこんな気分になる。まあ、一年後はどうか知らないが……」


 ポツリと、雨が一滴頬に触れる。


 俺は時間を確認した。


 午後三時三十七分。


 七分前後、つまりは空を見上げていた計算になる。


 俺は苦笑して振り返った。


 後方にいたメイと視線が合う。


「ノブくんは空の上にはいないと思うけど」


「知ってるよ。ただの感傷だ。そのうち、こういう感覚もなくなってくんだなって思うと、それはそれでちょっと淋しいけどな。親父のときみてえに、当時の感情を忘れちまう」


「忘れるから、生きてけるんじゃない? その感情がずっと残ってたら生きてけないよ」


「かもな。ま、感情は忘れても思い出は残ってる。ジジイになってもそいつは消えねえ」


 消えない。


 断言すると、俺は確信の語調で最後をしめた。


如月豹牙きさらぎ ひょうが虎谷信人とらや のぶとが親友だった記憶は永遠に残り続ける」

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