第12話 匠の空間作り

「モンスター作成。モンスター作成」


 出てきたモンスターはすでに召喚済のものが2体。

 やっぱりそろそろ中位モンスター作成に手をつけたほうがいいのかもな。


 ポイズンバット 魔力:13 筋力:15 技術:8 頑強:9 敏捷:38

 ダンジョンクロウラー 魔力:10 筋力:23 技術:7 頑強:30 敏捷:19

 ブラッドスケルトン 魔力:25 筋力:30 技術:26 頑強:21 敏捷:28

 ゾンビウォーリア 魔力:18 筋力:33 技術:16 頑強:34 敏捷:22

 コボルトハンター 魔力:5 筋力:22 技術:25 頑強:23 敏捷:29

 コボルトロード 魔力:7 筋力:26 技術:30 頑強:28 敏捷:35

 ゴブリンソルジャー 魔力:10 筋力:25 技術:16 頑強:25 敏捷:17

 ゴブリンメイジ 魔力:32 筋力:10 技術:27 頑強:25 敏捷:24

 ゴブリンキング 魔力:15 筋力:30 技術:21 頑強:32 敏捷:20

 トキシックスライム 魔力:12 筋力:4 技術:9 頑強:41 敏捷:28


 コボルトやゴブリン系はまだ種類がいそうだけど、さすがにかぶりが多くなってきている。

 レアっぽいトキシックスライムだけは1体しかいないが、他はキングやらロードでさえ複数体いるからなあ。


「レイ様。失礼しました。モンスター作成中でしたか」


「いや、もう終わったからかまわないよ」


 プリミラがやってきた。

 ダンジョンで過ごすことになってそれなりに経過するが、話すたびに呼び捨てにし敬語を使わないようにと指摘された。

 そのため、今では内心ではびくつきながらも四天王相手にこんな話し方になってしまっている。

 フィオナ様がそれを聞くたびに難しい顔をしているので、魔王としては四天王にこんな口の利き方はやめてほしいのかもしれない。


「ずいぶんと数が増えましたね。最初の部屋だけでなく、広間のほうも十分な数のモンスターを配備できそうです」


「意外とすぐに埋まりそうだね。広間に罠をしかけようとしたけど、それは別にしたほうがいいかな」


「レイ様であれば、また新たな部屋を作ることができますからね。一度死んだはずのダンジョンを短期間でここまで作り直すとは、素晴らしい力です」


「ダンジョンを生き返らせたのは俺じゃないと思うんだけどなあ……」


 やたらと評価してくれるので、ついつい気が引けてしまう。

 フィオナ様といい、プリミラといい、俺に甘すぎるんじゃないかな。


「ところで、なにか用事があったんじゃないの?」


「そうでした。魔王様に進言しなければならないことがありまして。レイ様も同行していただけませんか?」


「それくらいならいつでも」


 フィオナ様は今は玉座の間にいる。

 対して俺たちはダンジョンの中心にいるから、向かうとしてもそこまでの距離ではない。

 だけど、進言か……。プリミラのことだから、きっと正しい内容であり、フィオナ様がなにかやらかしてる可能性が高そうだな……。


    ◇


「レイ。プリミラ。どうしました? 二人揃って、わざわざ玉座の間にくるなんて」


「プリミラがフィオナ様に進言したいことがあると聞いたので、俺はついでについてきました」


「……ところでレイ。私も名前に様はつけなくていいんですよ?」


「いや、さすがにそれはまずいと思います……」


 話が脱線しそうだったが、プリミラが一歩前に出ると、フィオナ様は真剣な表情で話を聞く態勢を整えた。


「玉座の魔力が減りすぎています」


「うっ……」


「魔王様。魔力の回復に使用していますね?」


「だ、だけど……これは私の魔力を回復させるためのものだったはずじゃないですか」


 魔王と四天王。上司と部下の関係だ。

 そしてプリミラはフィオナ様相手に礼を失する態度はとっておらず、むしろその逆の態度なのは間違いない。

 なのに……なんか、フィオナ様が悪いことをして怒られているように見えるのはなぜだろう。


「玉座の魔力は緊急時のものと記憶しています。具体的には、この場所で魔王様が戦うこととなり、敗北しそうになった際に使うものだったかと」


「そ、それなら、しばらくはこないので大丈夫ではないでしょうか? 人間の勇者も獣人の勇者も倒しました! しばらくは平和です!」


「だからといって、無意味に浪費するのは問題ではないでしょうか」


「はい……ごめんなさい」


 浪費したんだな。主に宝箱ガシャで……。

 フィオナ様。ステータスは飛びぬけて高いのに、なんかだんだんとダメな人なんじゃないかと思えてきた。

 いや、よそう。ステータスは俺の1000倍くらい高いんだぞ。

 変なことを考えていると、一瞬で塵にされてもおかしくない。


「あの……フィオナ様も反省しているみたいだし、そのくらいで」


「……レイ!」


 助け舟を出したためか、フィオナ様が嬉しそうな声で名前を呼ぶ。

 ……あ、これ余計なことした。その証拠にプリミラの矛先が俺に向かっている気がする。


「レイ様もです」


 ほら……だから、触らぬ神に祟りなしなんだよ。


「そもそもレイ様が宝箱を作成しなければ、魔王様も魔力を浪費することはありません」


「ち、違いますよ? レイは私がお願いしたからしかたなく……」


「では魔王様が自制してください」


 だめだ。もはや言い訳の余地もない。

 こうなってしまえば、俺とフィオナ様にできることはただ一つ。


「どうもすみませんでした……」


 プリミラに謝ることだけだった。


    ◇


「フィオナ様」


「なんですか? レイ」


「しばらく、宝箱やめましょう」


「ええ!? な、なんで……」


 たったいま叱られたからです。

 とはさすがに言わなくても理解しているようで、フィオナ様は諦めたようにため息をついた。


「このままでは、プリミラに怒られますからね……せめてその、玉座? の魔力って回復できないんですか?」


「う~ん……ダンジョンの魔力と同じように、侵入者から吸収するのが一番いいのですが、やみくもに侵入者を増やすのも問題なんですよねえ」


 まあそれはそうだろうな。

 俺だけでなく、プリミラも、そしてフィオナ様も、外の様子までは理解できていない。

 下手にダンジョンへの侵入者を増やして、各国の勇者が団結してダンジョンに押し寄せたら一大事だ。


「そもそも、すでに入口は開けていますからね。今以上に侵入者を増やす方法もなさそうですよね……」


 そう考えると、今の状況自体が危険なことをしているのでは?

 やっぱり入口を閉鎖するか? いや、それだと最近ようやく増えてきたダンジョンの魔力がなあ……。


「いえ、それは別にあります」


「え、今よりも侵入者が増やせるんですか?」


「ええ、入口を増やしてしまえばいいんです」


「入口を……」


 そんなメニューなかったよな。

 一通りのメニューは見たけれど、少なくとも俺やダンジョンの魔力で実現可能な項目にはない。

 もしかして、まだ魔力や条件が不足していて解禁されていないメニューにあるんだろうか?


「このダンジョンは地底魔界と呼ばれるくらいですからね。今は勇者たちに……壊滅させられたせいで最低限の広さなんです……そう、勇者たちが全部めちゃくちゃに……」


「しっかりしてください! 俺はフィオナ様のそばにいますから!」


「そ、そうでした……。レイは私のですからね!」


 フィオナ様。勇者がトラウマになってないか?

 まあ、家がめちゃくちゃにされたようなものだし、しかたがないことか。


「とにかく、ダンジョンはまだまだ拡張する余地が残されています。面倒ですが、とっても疲れますが、こういう壁に道を作れば、あとはダンジョンが道や部屋を認識して、ある程度は自動的に形を保ってくれるんです」


 へえ、そういう仕組みだったのか……。

 てっきりすでに空洞の場所にだけ、部屋や道を作れるのかと……。

 あれ、もしかして俺のメニューって、実はもっといろんな場所に適用できるんじゃないか?

 そういえば、分かれ道の他に一本道もあったよな。


 一本道作成:消費魔力 3


 これだ。てっきり整地するくらいの項目かと思っていたけれど、俺の予想どおりなら……。


「レイ。どうしました?」


「フィオナ様。俺、道も作れるかもしれません」


「はあ、道……?」


 いまいち理解できていないようなので、せっかくだから試してみるか。

 3ならギリギリ消費しても問題ない魔力量だし、とりあえず行き止まりである玉座の間のさらに奥に……。


「あ、やっぱりできますね」


「ええ!? す、すごいです。道を形成するのは、私でも面倒くさくて億劫なのに……さすがはレイですね」


 俺の場合、指一本とわずかな魔力でできるからな。

 どうやら、この力は思っていたよりも便利な力のようだ。


「ところで、この道の先どうしましょうか?」


「あ、そうですね……せっかくですし、戦いやすい広間とかになっていると便利そうですね」


 なるほど、たしかに玉座の間もそれなりに広いけれど、ここで戦っていたらこの部屋壊れそうだな。

 今までのフィオナ様だったら、相手を瞬殺していたからそんな派手な戦いになっていなかったのだろうけど、フィオナ様が本気で戦うための場所も必要か。


「魔力が回復したら、すぐに広間を作りますね」


「無理はしないでくださいね? あなたの力は本当にすばらしいです。あなたを失いたくありませんから」


 そう言ってもらえるのはこちらとしてもありがたい。

 どうやら、当初の目的であった便利な道具の役目は果たせているらしい。

 これからも、フィオナ様に見限られないよう、このスキルを活用していくこととしよう。

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