閑話 ユキの後悔2

「またやっちゃったー!!」


 頭を抱えるユキに呆れた視線を向けるマリア。

 鷹揚な性格のマリアがそんな目を向けるとは相当である。


「謝ったその場で、また喧嘩を売るってどうなのよぉ。まぁ喧嘩するほど仲が良いっていうけどさぁ」


 困った困ったと目を瞑って「むー」と唸るマリア。


「それで、なんで喧嘩したの?」

「う」


 喧嘩――というよりユキが一方的に怒りをぶつけただけ――の理由。それはマリアとの仲の進展についてアドバイスを求めたところ、まったく参考にならない回答を返してきたためだ。


(そんなことマリアに言えるわけないじゃない……)


 黙り込んでしまうユキ。


「私にも秘密なの?」

「う」


 ちょっと悲し気なマリアに見つめられて、追い詰められるユキ。


「最近のユキってちょっと秘密主義っていうか、距離感じちゃうよね」

「あ、え、それは、その……」


 身内のセンシティブな話にマリアを巻き込みたくないという気持ちと、ローズにアドバイスを貰いたいという目論見があり、ローズやリナと関わるときには、半分無意識のうちにマリアを誘わずに行動していた。

 今更ながらそれを自覚して、冷や汗がユキの背中を伝う。


「違うの! マリアが邪魔とかそういうんじゃなくて!」

「私悲しいなぁ、でもケーキでも食べれば悲しくなくなるかもぉ」

「……はい」


 ワザとらしく嘆きながら、片目を開けてユキの様子をうかがうマリアに、ユキは全面的にその要求を呑むのであった。

 そして、それを口実としたデート計画を頭の中で素早く組み上げ始めたところで、


「あ、マリーとフラムちゃんも誘おうね!」


 との言葉で瞬時に計画が崩壊し、愕然とするユキであった。

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