27.意味深
【ロランの鎧】は瓦礫の中から立ち上がって、攻撃目標を振り返る。
その内部では、演算装置が現在の状況に応じた優先順位や攻撃方法を計算していた。
その過程で複数の警告が発生する。
『警告。戦闘可能時間が一時間を切っています。魔力を補充してください。ワーニングコードNo.1【管理者に問い合わせてください】を実行してください』
『警告。最後のメンテナンスから72222時間が経過しています。メンテナンスを行ってください。ワーニングコードNo.1【管理者に問い合わせてください】を実行してください』
【ロランの鎧】はそれらをログに記録しながら、戦闘行動を再開するべくさらなる演算を進める。
『魔力残量2%。戦闘続行可能』
『ターゲットNo.A-18への攻撃評価……失敗』
『ターゲットNo.A-17が戦闘に介入』
『攻撃目標をターゲットNo.A-17に再変更』
『ターゲットNo.A-17による攻撃の予測値逸脱を検出。戦力再評価を要求』
『再計算実行』
『……』
『……』
『計算時間が規定値を突破。首傾げ動作を実行』
『……』
『……』
『計算完了』
『第一推奨行動。機体能力100%による【朧突き】。撃破確率4%』
『第二推奨行動。なし。その他の攻撃手段の有効性を認めず』
『特殊条件成立。【ロランの意味深ダンス】発動』
『【朧突き】による攻撃を選択。攻撃準備……失敗』
『アクチュエータエラー』
『アクチュエータ再起動……エラー』
『代替アクチュエータなし』
『特殊条件成立。【ロランの意味深ダンス】発動』
『最適行動の再選択……機体能力100%による【朧突き】。撃破確率4%』
『【朧突き】による攻撃を選択。攻撃準備……失敗』
『アクチュエータエラー』
『アクチュエータ再起動……エラー』
『代替アクチュエータなし』
『特殊条件成立。【ロランの意味深ダンス】発動』
『最適行動の再選択……』
―――――
瓦礫の中から立ち上がった【ロランの鎧】がローズの方を向いて首を傾げる。
そして断ち切られた右手を腰だめに構え、そこに左手を添える。
剣もなしにいかなる隠し玉があるのか、その動きにローズは警戒を高める。
「……」
【ロランの鎧】が微かな手足の動きや体重移動を繰り返す動きを始める。一昨日の夜に対峙した時と同じものだ。
しかし、今のローズに動揺はない。
その動きに惑わされることなく、【ロランの鎧】の動作の始点を見極めるべく集中する。
「……」
集中する。
「……」
集中を続ける。
「……?」
【ロランの鎧】の動きが終わらない。さすがに何かがおかしいことにローズも気づく。
(改めて日の下でよく見ると、こちらの反応を誘っているというよりは、それっぽく動いているだけのような……まさかな)
不審に思いつつも次の選択肢を考える。
後の先をとるつもりだったのだが、このまま相手からの攻撃がないのでは永遠に決着がつかない。魔導人形に焦れるという感情はないだろう。
一旦最初の方針を放棄して、小剣で様子見の攻撃を入れる。
それでも反応がない。
「!?」
あまりに隙を晒す【ロランの鎧】に対し、ローズは流れるように間合いを詰め、そのまま胴体の中央に小剣での突きを入れる。
「ピギッ」
【ロランの鎧】は悲鳴のような音を上げて、糸が切れたように崩れ落ちる。
「……え?」
擬態を警戒して構えを解かず、力の抜けた【ロランの鎧】を見つめ続けるが、どう見ても擬態ではない。
恐る恐る足でつつくが、何の抵抗もなくあお向けに転がる。
「え……?」
ローズと【ロランの鎧】との決着はローズにとって全く予想外の形で終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます