第3話
「うん、もう炎症はなくなったし他にも病気がないからもう退院していいよ」
「ありがとうございます」
「そういえば、さっきの女性がこれを忘れてたけど。昔授業をやってた時に道端に落ちてたからずっと預けてたよ」
医師が机の引き出しを取り出し、俺に見せた。
どうやら古い受験票のようだ。受験番号や教室の番号も書いてある。
医師は元々まいの学校の教師だったので、まいの受験票落として、そのまま大切に預かってた。
「これ、無くしたら試験受けれないんじゃあ……」
「大丈夫だよ。電話から合格したって聞いたから恐らく、覚えてたんだろう」
「この伝票……」
なにかを思い出した。
それはまだ幼かった頃、西洋風の学校の時に出会った。
ちなみに内装の教室は、木の机と椅子も同じ。
正面の教卓にはでかい黒板、みんな生徒は坊主や髪はチリチリばかりで、まだ着物の時代なので、そこまでオシャレではなかった。
今は放課中、男女共用で、そこで出会ったのがその彼女、それはとても綺麗だった。
【なぁ、君なんて言うの?】
【人に質問するのはまずあなたの名前から名乗るものよ】
【あぁ、俺は北条爓】
【坂道まい】
【まい、とても綺麗な名前です!】
【なによ、おちょくってんの?】
【いや、とても響きが良くて、】
単純な理由で少しクスって笑った。
【あなたってほんと面白い人】
【……え? あ、どうも】
頭を手に当て、少し照れてる。
僕はとても真面目だったけどこんなに話せるなんて思ってなかった。
と思ったら
【…でも、だらしないね】
【は……はい?】
【顔を合わせんで、いると面倒くさいから】【え……?】
爓は何故かフラれた。
理由は初対面なので、恥ずかしいだけって知った。どうやら懐かしく思えた爓は、受験票見ると思い出した。
8年前……。
【はぁ……はぁ……もうバス行っちゃった……】
次のバスはもう、登校時間をギリすぎる時間だった。
少し泣きそうな時
【何をしてんだ?】
【寝坊しちゃって...急いだらもうバス行ったの...もう試験不合格だよ〜】
【何時から?】
【8時30分から……】
あと30分で試験が始まるのであった。
ここから走ると1時間ぐらいはかかる距離であったけど……。
【……急ごう】
【……え?】
【今なら間に合う、急ごう】
【走るの?】
【大丈夫、ここからなら場所覚えてるし最短距離で案内する】
【…うん、分かった】
急いで試験会場に猛ダッシュして行ったけど車が多すぎるし、人も多い。
【そっちだ】
人気のないところに走った。
意外と俺足早すぎなのか、まいの距離が遠くなっていく気がした。しかも曲がったり、真っ直ぐ行ったりしてるけど、本当にこの道で大丈夫なのか心配してる。感を頼りに進む。
【本当にこの道で、大丈夫なの?】
【大丈夫、全て覚えてる道だし】
かなり走り疲れてきた、まいは、走って20分猛ダッシュで走ったため、息切れした。
【もう……疲れたよ〜……】
【大丈夫か?】
【もういい、もう不合格でいいの……】
メンタルが弱すぎて、ついに弱音を吐いてしまう。
ぐたっと道路に座り、下を向きながら深呼吸してた。
俺はまだ走しれる。
しょうがないから、
【俺の背中に乗れ】
【え? なんで?】
【まだ間に合う、早く乗れ】
【うん……】
背中に乗り、急いで走った。
この訓練は、負傷して、足が動けない時に、兵を医務宿に連れてくために訓練された目的だ。
俺はその訓練では無く、父の訓練で練習してた。BFROというよく分からん部隊の訓練で。
【そんなことして疲れないの?】
【君の思いを届くため、これくらいは最前尽くすよ】
そして試験会場5分前に着いた。
大学だけど西洋風な建物で、ここで試験するのか。
立派な建物すぎて、感動した俺、感謝する。
【ありがとう、お疲れ様】
時間ないので急いで試験会場まで階段登り、走った時
【まい!】
俺の声が聞こえて止まり、後ろを振り返った。
【が……頑張れよ!応援してるから!ネバーギブアップ!!】
拳を見せガッツポーズマークをした。俺はかなり恥ずかしかったけど。
【もー分かったから!】
まいも、恥ずかしかったけど嬉しいかった。手を振って急いで会場の中へと入った。
そして、今は妖魔界で大人になっている。
その思い出だった。
「……思い出した、あの時の受験票だ」
「きっと、その受験票こそが運命の再会かもしれん」
俺はこの受験票を見て医師に伝える。
「俺、もう一回会ってみる!」
すぐ病院から出て走った。
まだ間に合うからそう遠くはない。そしてまいの後ろまで止まり
「まい!」
って言って声が聞こえ、まいが止まり、振り返った。
「どうしたの?」
まいの所まで走り、近ずいた。やっと思い出した。
「まい……その……今思い出した」
「本当に?」
「その受験票を見て思い出したんだ」
「それは良かった」
「これを返すよ」
受験票をまいに渡した時に、どこからか茂みから奇怪が現れた。
「おいおい、仲間が増えたな」
「この奇怪め!」
奇怪が居る前で俺は刀を抜き、素早く構えた。勝てるか勝てないか、微妙なラインだけどやるからにはやるしかない。
「おっと、奇怪って言ったけどただの奇怪では無いぞ」
「なに!?」
「俺は幽霊の上とも言われる存在、澤田正二だ!」「なぜこんな所に」
「幽霊と言ったら半霊なんてただの上だ、こんな半霊が偶然遭遇するとは」
「倒すのか?俺たちを」
「その一択しかないだろ」
奇怪ではなく、幽霊だったのか。ていうことはこの試合、ずっと続きそうだな。
話終わった瞬間、素早く銃を取り出して撃った。
「…くっ!」俺は素早く銃弾を避けたら、次の能力を発動する。
「中級効果【八彩】!!」
刀を素早く振ったけど、正二も避けた。この速さでも避けれるのかよやはりどちらも互角だった。
相手は銃でこっちは刀、遠距離の方が有利だった。
簡単すぎて戦いに飽きたのか
「……くだらん」
俺は能力の発動が終わった無防備の隙に、正二が素早く銃を撃ち、腹に命中した。
「グハッ!……クッ!……」
しまった。読まれてしまった。
そのまま手と膝を地面に付きながら腹の血を押さえた。
「爓!」
まいが素早く銃を二丁取り出し勝に撃った。
銃は1984ピストル二丁と。銃は軽量で、命中率が高いけど……。
「ふっ……」
正二が銃弾避けた。
先を読まれたのだ。
その隙に血を押さえてる爓のところに向かう。
「爓! ……爓!」
「大丈夫、これくらいは」
「出血してる状態で戦うの?」
「大丈夫、平気だ……」
「おいおい、見てられねぇな、半霊さんよ」
「お前を……! 絶対倒すんだ!!」
「いいぞ、いつでもかかってこい」
勢いよく正二に近づき、刀を連続振った。ビュン!っと刀の音がした。
だが、力が入らなすぎて振るのが遅すぎる。
簡単に避けれてしまった。
「おっと」
またビュン! っと切る音がする。
「そんなに俺を殺したいのか?」
爓の左足の太ももら辺を撃った。このまま身動きが取れず、トドメを刺されるのか……
が、体制を立て直した。
「っつ! ……まだだ!!」
右足を前に出して、腕を伸ばし
突きで、刀を正二の胸に刺した。
「くっ……しまった!」
「足を撃っても俺はまだ戦えるんだ!」
そういえば銃や剣を切っても痛いだけで死ななかったな、ただ、心臓が弱点だけどどんなに当てても心臓には必ず当てず、避けるのは上手いのは守るためだったのか。
「くそ!! 相手にしなきりゃあ良かった!」
と正二は倒れて死んだ。
「はぁ……はぁ……うっ……!」
腹と足の出血が酷かった。爓の方に駆け寄り、心配してくれた。
「爓! もういい! 頑張ったよ!」
「大丈夫……死なないんだ……こんな痛み、ただの..……」
そのまま意識失い、倒れた。
その後、どこの家か分からない所で、ベットから目が覚めた。
「あれ? ここ……」
「あたしの家だよ」
まいの家だった。
血まみれの服を洗濯して、一枚のシャツを来てた。
他の服は、干していた。
まだ動けると思って、自力で起き上がろうとするけど止められた。
「ああ!まだだよ、まだ傷が治ってないから」
俺は本当のことを言った。
「あの……なんでそんなに優しくするんだ?」
「そ、それは……」
「言うけど俺は死なないんだ、痛みなどはあるけど一つだけ言う……俺は死なないんだよ」
「そんなこと、分かってるよ」
「んじゃあ、なんで?」
「あなたを見てると……ほっとけないから」
まいは、俺に助けられた恩返しのためにやった。
でも、何故か爓は全く違うことに気づき「あ、もしかして『あれか』? 俺のことが……」と阿呆らしい言葉を放つ。
「あー!! いっけない! 今日ママから頼んでたんだ!ちょっと待っててよ!」
まいのママは実家で暮らしてるため嘘だと分かってるまいだけど、俺の声を聞かないよう大きく喋った。
「あ、あぁ……」
「急がなくちゃ!」
分かりやすい演技をし、まいが家を出た。
出たっていうより散歩するだけだけど……。
不審に思ってた。
「なんかちょっとおかしいぞ?」
少し、俺は待ちくたびれてる時に誰かが来た。
んで、駆けつけたのは『山県洋二』である。
「あぁ、洋二か」
「少し、お土産なんですけど」
「俺にか?」
「そうですよ。これ、向こうの市場で買ったんでよかったらどうぞ」
お土産は、饅頭だった。しかも妖魔界のご当地ともいえる『諏訪饅頭』だった。
「どうも」と感謝してる時、洋二が少し俺の服装が気になってた。
「爓さん、まだその服ですか?もう卒業したのでいいんじゃないですか?」
俺は対奇怪隊の服を来ていて、全身が黒くて少し、赤のラインも入ってる。
コートに付いてる胸ポケットに付いてたのは、バッチの、対奇怪隊の入団賞の青い火の玉が称号と、上官になれた称号が付いてる。
コートのボタンは開けたまま。
ズボンは、サイズが合ってなく、少しブカブカでだらしないのが特徴。
ブーツは白と裏は黒であり、石が足に当っても大丈夫なように作られてる。
刀は対奇怪隊専用の抜刀武器であり、ロックがかかってる。スイッチを押しながら回すと鞘を取り外し可能。
長さはサイズに合うように設計されている。
ただ、座る時邪魔だ。
それにしても洋二は、フードが付いてて、洋二の顔はギリ見えないから顔バレしない。問題は、効果はあるかどうかだけど。
服の色はねずみ色現代風な服だな。
洋二の、手には何か持っている。
「なぁ、その鉄の塊はなんだ?」
「これですか? これは【フォーカルフォン】です
武器は、僕が開発した手帳型の形した鉄の塊。これが銃でいつでも変形して撃てますよ」
あまり感心はないな。
それより、何か洋二の髪型が気に入ってるらしいから少し、切ってないので女の子っぽい髪型になってる。
「そろそろ服変えないと見た目が台無しですよ」
気付かれたので、くだらない言い訳をした。
「い、いや……忘れてただけで……」
「違います、お気に入りの服でしょ?」
「あ、あぁ……」
やはり、洋二は俺と何年も親友で何度も話してるし、俺の性格も分かってる。
やっと、まいが家に帰って来た。
わざわざ家に、出なくていいのに……。
「いやー向こう閉店だったわ、忘れてた……誰……?」
「どうも、お邪魔します」
「え、え!? どういうこと!?」
もう1人知らない人が来たから慌てるので、俺が対応する。
「あぁ!この人は俺の後輩、山県洋二で、向こうは坂道まいです」
「はい、お邪魔します」
「あ、あ?! そうなんですか!」
「坂道まいさんですね。僕は、元対奇怪隊の山本洋二三等兵です」
そう、山県洋二は対奇怪隊の三等兵だった。
今は、もう退役して、食事代はくれるけど、家買えるお金はない。
まいは、対奇怪隊のことは初めて聞いたので、全く知らない。
「ん? たい?……きか?」
「対奇怪隊だ」
「爓、それは言っても分かりませんよ」
「あ、あぁ……そうだった」
「ちょっとお茶入れるから、待ってて」
「ありがとうございます」
まいが台所へ向かい、お茶を作ってる間、爓と話した。
「爓さん、140年ぶりですね」
「そうか? もうそんなに、経ってたのか?」
「あの時は、本当に助かりました」
あの戦争の時に洋二のピンチを助けたんだった。
昔の三里戦争で兵がほぼ全滅した時の出来事はみんな覚えて、洋二も、もちろん覚えてた。
兵士も人々も暴動があって、軍の上層部達も。謝罪やら何やらやってた。
「あーあれは自然とこうなっただけ」
「どう奇怪を助けたら自然とこうなるのか?」
「い、いや……」
すぐ察知され、何も言えなくなった。
まいが寝室に戻ってきた。
お茶が無かったから、近くの店で買ってくると伝える。
「ごめん!お茶の葉がなくなって来たから買ってくるわ」
「あ、ありがとうございます」
「また行くのか?」
「今のは『あれ』なのよ」
お茶を買うため、まいが家を出た、そこまでおもてなさなくてもいいのに……。
その後会話して、爓達があの人が来ないと今気付いた。
「そういえばリーザーさん来ないですね」
「また知らない奇怪退治してるんじゃないか?」
「そうでしたらいつもの事ですね」
予想は的中した。少し人が少ない向こうで、まいが屋台にあるお茶を指さししながら、お茶が何処にあるか探していた。
「ええっと、お茶が売ってるところは…」
屋台でお茶の葉を買おうとした時
「お? 貴様は、さては奇怪だな!!」
「何を言ってるのですか?」
「とぼけるんじゃねぇぞ、俺は見てたぞ!」
「はぁ……?」
訳が分からなかった。
このカウボーイ帽子被ってる不審者に勘違いされた。
「このオーラ、その持ってる武器。そして、その見た事ない服。さては奇怪だろ」
「ちょっと、あたしは奇怪でもないし妖怪でもないの!」
「嘘だ! この奇怪を退治しないと!」
「あーもういい!全く分からない人だわ!」
「覚悟しろ! 奇怪め!」
殴りかかろうと襲い掛かるけど、
「グホッ!」
あっけなく腹の所に、重いキックで蹴り飛ばされて倒れた。
かなりの手応えはあった。
てか、絶対痛かった。
この蹴りは普通だったら気絶するけど、
「……なんて……強い奇怪だ……」
喋れるくらい、耐えてた。
腹を押さえたまま、仰向けに倒れてる。
また、奇怪のことを何度も言い繰り返して本当に嫌になってくる。
「だからあたしは!」
リーザは、何も無かったように立ち上がってまいに指さした。
「覚えてろよ、奇怪め!この蹴りは仕返しするからな!」
すぐ去ったけど、なんか去り方が悪役っぽかったのは気のせいか。
訳分からなかったし、奇怪では無いのに奇怪呼ばわりされていた。
「もー!なんなのよ、あいつー!」
その頃、俺達は、洋二が店で買ったご飯を食べてた。
食った事ないご飯を食べながら感動してる。
「何だこれ……美味い!?」
「これは『ドラゴンスープ』っていう缶ずめで密閉した食べ物です。妖魔界には多分取れない食材です」
「これか?」
誰かがドアをドンドンっと叩いて息が合うように二人は、ドアの方に振り向いた。
洋二がドアの方に返事をする。
「誰ですか……?」
「いや罠かもしれんな気を付けろ」
このことはよくある。任務中に小屋で寝てたらドアを叩いて遭難者かと思いきや、奇怪に殺されそうになるのが二回もあったから侮れない。
俺が立ち上がってドアの方に向かい、武器を装備し、いつでも倒せる状態にして、ドアの前に立った。
「誰だ !?」
「俺だよ! 俺! リーザ!」
少し疑ったけど、声的に本当だと思う。でも、勝手にドアを開けたら殺されるかもしれない。
まずは剣先をドアに向け、いつでも突けるように準備して警戒万全だ。
「本当か?」
「本当だって! 開けろ!」
俺は、ドアの鍵を開ける。
開けたら、本当にリーザだった。
「はぁ、はぁ」
しかもなにか慌てている。深呼吸をし、説明するが
「おい! やべぇ奇怪がいる!」
「はぁ?」
いきなり何言ってんだっていう意味深な顔をした。
意味が分からない。でも、リーザがかなり焦ってるから少し本当かもしれない。
「いや、本当に強い奇怪がいる、これは大物だぞ!」
洋二がドアの方に向かいながら、言った。
「それって、勘違いしているんじゃないですか?」
「いや、この目ではっきり見たぞ!このオーラと服で分かったんだ。しかもあの奇怪、やべぇー強いんだよ。先を読まれてんだよ」
なるほど、いつもの事だ。勘違いしてるからこの話は、なしだと言いたいけど、これ以上言っても終わらないから一旦落ち着かせた。
洋二の言ってることも本当だし、リーザの言ってることも誤想だ。
「とりあえず、ご飯食べて落ち着け」
「おっ!そうだな!」
「このぐらいしかないけど……」
椅子がないので、カーペットに座り、くつろぐ姿勢で胡座をかいた。
缶ずめを取り出し、机に置いたけどリーザがこの缶ずめを取って缶ずめに警戒して、見ていた。
「おい、これ非常食じゃないか? いつのやつだ?」「130年前の缶ずめって書いてある」
「ギリギリだな、まるで、俺に家畜の餌食ってるようなもんじゃね?」
「とりあえず文句言ってないで食って」
毒でも入ってるんじゃないか疑ってるリーザで、変な文句言ってる時にちゃんと食べてる。
「うん、悪くないな」
「食になってないですよ。本当は美味しいんでしょ」
「んなわけ……ない!」
「はぁ……」
リーザは堂々とネガティブなことは言わないけど、心は正直なので分かりやすい。
まだ、俺の怪我が治るまでみんな行けれない。
「とりあえず、爓の怪我を治さないと奇怪を倒せないから…」
「奇怪ならあの強い奴が奇怪だ!」
「はいはい、それは大変でしたね」
呆れた顔をした洋二だった。もうそろ勘弁して欲しいぐらいだ。
「なぁ洋二」
「どうしました?」
質問した。ずっと妖魔界が勘違いしてたから、気になってた奇怪の話しだ。
「奇怪ってその種類だけなのか?」
「なんです?それは上怪、中怪、奇怪ですけど?」
「じゃあ、なんでこんな強い奇怪をみんな奇怪って言うんだ?」
「それは……」
まだ何も分からなかった。魔界全辞典ではまだ途中しか読んでなかったからそこまで分からない。
「奇怪には、特に名ずけた意味なんてない。ちゃんとした名前がある。後は色んな種類がある。それは俺の父さんが言った」
「何故、その事を知ってるのです? ていうよりどういう種類があるのですか?」
「奇怪と中怪と上怪、極怪、超界、凶界、狂怪、無界、絶怪、最界、猛怪……」
あとは忘れた。思い出せないけどそれだけかもしれない。もっとあるはずだけど、父で言った時はこれだけだと思う。
「それだけですか?」
「いや……あぁ、これで全部かもしれない」
「その、猛なんちゃらってどこで出会うんだ?」
「それは分からない。父さんと母さんが死んでその詳しいことは分からない」
誰かがドアを叩いた。すぐまいっていうことは知ってるけど、まだ警戒してるようだ。
開けたらボワって奇怪が現れるかもしれないから。
「まいが帰ってきたかもしれない」
「私が開けます」
寝室から出て、洋二がドアを開けた。
「どうだった!」
俺は、寝室からまいなのか言った。
「問題ない、まいでした!」
「いゃー疲れちゃった」
わざわざ買ってきてくれたのはいいが、そこまでしなくていいのに。
寝室へ案内し 、ドアを開けた。気付いたらテーブルが缶ずめだらけで、片ずけるの忘れた。すぐ様袋に捨てないと怒られる。
てかもう怒られそうだから早く片付けなきゃ。
「以外と遅かったですね」
「そう……ん……?」
「お?」
まいとリーザと目が合った。
「うぉ……?!」
「あ……?!」
さっき道で出会った奇怪と思ってるリーザと全く状況が分からなく蹴ってしまったまいだった。
「あの時の!」
「この! 出たな奇怪め!」
リーザーが銃を取り出して、まいが構える。何だか状況が分からないので、俺と洋二が止めに入った。
「おい、ちょっと待て! 落ち着け!」
「ほ、ほら!リーザさんもやめてください」
さすがに家で喧嘩したら隣の人とかが苦情くるから、爓がお茶を置いてくれてまいの隣に座った。
二人のさっきの出来事の状況を説明して話した。
「そうですか……」
「あいつが奇怪だ!」
まいの方に指を差した。
なんで人になすり付けるんだ。
まず事の経緯だが、いきなり男が奇怪呼ばわりされたことだ、その女の子も訳が分からなく、蹴ったこと、自業自得っと彼女は思ってた。
「違うって! あたしは奇怪じゃないって何回も言ってんでしょ、なすり付けないでよ!」
「二人とも落ち着け」
「とりあえず、リーザさん、勘違いしてますよ」
「いや、何を言ってる!このどこが勘違いしてるんだ」
「まず、まいさんは奇怪でもないし妖怪でもないむしろその奇怪を退治してる半霊さんです」
「んなわけ!……お、そうなのか?」
今気付いたのかよ。特徴で分かるでしょ、なぜ分からないのか……。
「だからこの人は奇怪ではない」
「で、でも! あの攻撃と予知、半霊には出来ない技をしてるぞ!」
「はいはい、あれは訓練されただけで奇怪ではない」
「いや、だが、あのかなりのクソきか、フグッ!?」
今言ってはいけないことを言ったので口を塞いだ。
もう口を挟むのはやめてくれ。
塞いでて、何言ってんのか分かんないけどとりあえず反省して欲しい。
「それはリーザが悪いから」
塞いだ手を離した。
やっと反省して、正気を取り戻した。
「お、おう……」
「まいさんも人を蹴らないでください」
「は、はい……」
二人とも何も言えなくなった。
結論、どっちもしたことは悪いって言うことにした。俺はリーザのことは、対奇怪隊の頃で、仲ではないけど面白いので気に入っただけ、そっから今は仲良くなった。
そろそろ昼飯の時間なので、みんな腹減ったと思うから俺と、洋二で、料理した。
今日は単純で、簡単な料理にした。
「とりあえずご飯は出来た」
「最低限の食材は確保しましたんで大丈夫ですよ」
「あ!ありがとうございます!本当に助かります!」
「いいですよ別に、これくらいの食材は簡単に手に入りますから」
「洋二は、元々狩りが上手いからみんなでおすそ分けしてたこともある」
「あのーそんなに狩りは上手くないですけど…」
「何を言ってんだよ! それくらい出来るのは猿でも進化してるのかぐらいだぜ!」
「リーザ言い過ぎ、やめろ」
俺はリーザに注意した。一言が余計すぎる。
てか猿でも進化って結局ダメじゃん。
「お、おう……」とリーザが言えなくなった時にまいが、空気を変えた。
「ま、まぁ! とりあえず食べましょ! あたしもお腹すいたし」
「そうですね、食べないと、強くなれないですからね」
「それ、爓に言ってんのか?」
「おい」
また怒られた。
だから一言余計なんだよ。
それで怒られたのでリーザはしょんぼりする。
てかリーザも人のこと言えない。適当に謝った。「あ、すまん」
みんなで食事を楽しみんだ。
でも、量は多いけど。
スープに、細かい肉がゴロゴロ浮いてる何かの料理にリーザが気付いた。
「これ上手くねぇか!? なんだこれ!?」
「それはドラゴンスープですよ」
「ほぉー」
こっちも何かの料理に気付いた、どう見てもカレーだけどよく見たら上に茶色い粉が乗ってる。「……このカレーは?」
「それは『大ゼミの抜け殻カレー』ですよ。漢方薬で血行促進する効果もありますよ」
洋二、漢方知ってるとは、頭いいと褒めてやりたい。
不老にはなれてるけど、不死だけはどうしようも出来ないので、漢方でなんとか病気とかにならないようにしてる。
それにしても本当に妖魔界は漢方薬好きな人が多すぎて、ドン引きしてるようだ。
「え、あたし、セミ嫌いなんだけど...」
「えー!? セミ食えないの!? 俺達は妖魔界で食えるけど女が虫食えないのはやっぱり奇怪ではないか!?」
リーザが奇怪とまだ勘違いしているからまいは「本当に蹴るわよ」っと言った。
本当に反省してるのか?すねた顔で「あ、なんでもないっす……」
今のはなしにしたリーザ。
まあ、正直なのは褒めるけど……。
みんなたくさん食って、もう腹いっぱいに食べすぎた。
もう朝飯が食えないくらい食った。
「あー食った食った」
「少し作りすぎましたね」
「いやいや、これくらいは食べておかないと明日に備えないぞ」
洋二が俺の怪我の様子を言った。
「あ、そうです爓さん、怪我はどうですか?」
「あぁ、もう大丈夫」
「以外と治るの早いですね」
「いや、生まれつき治りが早いから」
「まっ!もう食ったし寝るか!」
「そうですね」
「だな」
「あたし、ベットで寝るね」
「おいおい、男女平等だぞ、これくらいは訓練しないと!女にも対奇怪隊の訓練が必要だからここの地べたに座っとけ!」
「また蹴られたいの?」
「いえ!なんでありません!」
また蹴られるのはもうやめて欲しいリーザ。まだ半霊じゃないってのを疑う。もう既にトラウマになった。
優しいのでベットを先に譲って、気を使った。
「まいさんは、ベットに寝ていいですよ。リーザさんも僕達も慣れてるので寝ていいです」
三人はどうするのかと言うと、まいの押し入れにあった掛け布団で床と接触しながら寝てた。
カーペットを布団の代わりにするけど、結局冷たいし、硬い。少し変わらなかった。
でも、慣れてるからそんなのはへっちゃらだから譲った。
「そ、そう?なら遠慮しちゃおっかな」
「おいおい、これは流石に……」
「リーザさんは無視してみんなおやすみです」
洋二がおやすみに消灯を消し、みんな布団を肩まで、かけた。
「ちょ!……あーもう!おやすみ!」
「おやすみ……」
就寝した。
みんなすぐ寝てしまってかなり疲れてたのだろう。
そして、みんなが寝静まった時の午前3時30分「ん〜?」
俺は異変で、目を覚めた。
まだ暗かったけど、なにか気配を感じたらしいので電気を付けないで、その気配を辿っていく。
途中でまいが、足音で爓だと分かって目を覚ました。
「あれ……?爓……?」
寝起きなのではっきりと見えない。
武器を装備して警戒をする。
けれどリビングに行くと何も気配が無かったから不思議に思った。
「おかしいな、気配がしたのに」
「どうしたの……爓?……」
まいが階段を降りた瞬間、爓が危険を感じた。
「避けろ!」と言い、まいが驚いて言う通りに避けた。
ビュン!という音がした。
「なに!?」
しかも壁には引っ掻いた跡、危機一髪だった。
「こっちだ!」
リビングに避難する。爓の跡について行く。
着いて周りを見渡した。
とりあえずここにいるのはまずいと気付いた。
「やばい、見つかったかもしれない」
「どういうこと!?」
「この家は奇怪に占領されている。ここで下手に動くと死ぬかもしれない、もう既に目をつけられたかもしれない」
「何体いる?」
「3体だ」
「3体!?」
「しかも上怪だ!」
突然姿を現した。暗くて見えなかったけど、上怪の顔はトカゲの顔をして、爪も生えており、牙もあった。
三体もほとんど同じく身長もデカかった。
まいは、慌ててた。
かなりピンチだって気付いてたから。
「どうするの!?」
「さっき避難した道は上怪が居るから、リーザと洋二は寝てて向こうへ行けない」
「じゃあ、もうおしまいなの!?」
慌てるまい。どう対処するか、目を瞑り考える。
上怪が三体いるのはかなり不利だった。
ちゃんと冷静に考えて、そして思い出した。
「いや、一つだけ方法がある、俺が、上怪をおびき寄せてまいは音を立てないように、リーザ達を起こしてくれ」
「待って! そんなことしたら……」
「その方法しかないんだ、早く行け」
「……分かった」
そっと音を立てずに、すぐ二階へ走った。
そして誘き寄せるため大声を出し、上怪を気付かせる。
「ここだ!上怪!」
聞こえた上怪は俺の方へ向かった。
「来たか、中級効果、【紅葉切り】!」
皮膚が硬すぎて上怪の攻撃は効かなかった。
「くそ!」
なんて硬さだと、悔しがる爓だった。
「グオー!! ガルル!!」
上怪の攻撃、毒吐きが来てバリアしたが不運なことに発動が遅すぎて命中し、ガードしきれなかった。
俺は毒で麻痺して、全身動けられなくなった。
「グッ!……はぁ……はぁ……」
毒性は低いが、苦しかった。そのチャンスを待ってたのか……。
「グァァァ!!」
また、上怪の攻撃噛みつきで俺は左肩を噛みちぎられた。
「あぁ! ガァッッッ!!」
激痛が走り、痛みのあまり、大声で叫んでた。
また上怪の攻撃で俺の弱点を狙われるその瞬間……。
バーン!と銃を撃つ威嚇の音がした。
銃の音だ。
音のする所に後ろを振り向くとリーザと洋二だった。何とか助かった。
「おいおい、気を付けろよ」
「大丈夫ですか、爓さん!?」
負傷してる俺を心配してくれる。
着いた時には麻痺してるから動こうにも手が動けなくなってた。
大丈夫ではなさそうだけど……。
「あ、あぁ……なんとか……」
「あとは僕達がやります」
「まいさんは爓を治療してください!」
「うん、分かった!」
俺の出血してる逆の右肩を組んだ。
かなり重いけど、頑張って二階へ避難した。
「さて、俺達の出番だな起こされた奇怪の罰だ」「僕も容赦はしません」
上怪の攻撃が来た。走ってきて右爪で引っ掻いてくるところを
「遅い!!中級効果、【デスルーレット】!」
撃たれた上怪の一人は死んだ。
またもう1人の上怪の攻撃が来た。
「無駄です、中級効果、『テスラガン』!」
10000Vの電撃で上怪は痺れ、死んだ。
やはり、リーザと僕の連携は上手い。元々対奇怪隊で訓練されたおかげで慣れている。このまま勝てるが……最後の上怪が……。
「グアァァァァァ!!!」
怪獣の様な高い声で雄叫びを上げ、本当の姿を出し、突然変異をした。身体は翼を生えており、爪が大きく生え、顔は見てられないくらいゾンビ映画に出てきそうな奇妙な顔になった。
口の開きは四つ開くみたいに、ラスボス感溢れる怪物だった。
僕達は、呆然としながら終わったと完全に思った。
こんなラスボスっぽい怪物に出会ったのは初めてだから。
「あー……やばくね?」
「これは本当に死にますね」
上怪の攻撃でドアごと2人は吹き飛ばされ、外に出された。外に出る突然変異の上怪。
「イテテ……」
「これは勝てないですね」
僕とリーザさんは目の前のにアスファルトおもいっきり叩きつけられたから受け身が取れなく、負傷した。
でも、死ぬ覚悟でまだやれると思ったのか、リーザさんが立ち上がった。
「しょうがない、これは堂々と死ぬしかない!俺がやる!」
「ちょ! リーザさん!」
「お、おい! 奇怪が! 俺を倒してみ、みろ!」
少しビビってた。
このこの巨体と顔で、相手にできるわけが無いのに。
「ガギャルルル!!」
物凄い雄叫びで全身震えた。停戦交渉するリーザ、だらしなかった。
「あ……あーそうだな、今のはなしにしてくれ...いやー別に煽ってる訳ではねぇぞ……」
「何言ってるんですか!?」
目を合わせず、下を向きながらボソッと独り言を喋ってた。
リーザはビビっててほとんど戦果をあげてなかった。
口だけは堂々だけど、行動では動かなかった。
だが今は違う。
戦うっていうのがヒーローだからだ、リーザは少し克服し、倒すことにした。
リボルバーを強く握り、下を向いてたリーザさんは、奇怪を見て、獲物を狩る目をした後、拳を強く胸に当て、自分をドヤ顔で、名乗ってる。不可能なのに。
「お、俺は対奇怪隊伍長!ザック・リーザだ!お前なんて怖くねぇ!く、喰らえ!」
銃を構え、撃ったが、それが上怪を刺激してしまった。
「ガルル!!」
「グハッ!……」
「リーザさん!」
上怪の攻撃で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「リーザさん!無茶するなと言ったのに!」
「……俺はやりきったぜ……」
「だからって刺激を与えるのは自殺行為だよ!」
「……んなもん分かってる……俺は少し強くなったんだ……」
リーザの身勝手な行動で、負傷してる。僕は本当にリーザの勝手な行為に呆れてた。でも弱点は首だと意識的に分かった。
「本当に馬鹿だ無茶して……」
「……ここは僕がやる、リーザさんは安静にしてください」
「まて!お前、まだ俺と後輩じゃないか!まだ経験が浅いのに……」
「それは、奇怪を倒すため、訓練して、君達よりもっと練習してます。だから心配しないでください」
「お、おぉ……無事でいてくれよ……」
なんか洋二がかっこよかった。
上怪の爪の攻撃が来た。
洋二は上怪の攻撃をスッと避け、最新の武器で上怪の足を撃った。
「ガールル!! グァルル!!……」
負傷した上怪でも必死に耐えてた。かなりしぶといな。しょうがない、この能力を使うか。
「やりますね上怪さん、この攻撃はどうですか?中級効果、【波動】!!」
上怪に目掛けて銃を撃ち、頭に命中した上怪は青く小さい爆発をした。
かなり手ごたえはあったが……。
「なぜ!? 生きてる!?」
かなり強力な能力を使ったが、鱗が硬かったのかビクともしない。
「不死身か?」
「……!?」
上怪の攻撃で僕は、吹き飛ばされて地面に叩きつけられて転がりうつ伏せで倒れた。
「グッ!……ハッ……」
さっきのダメージで、背中に激痛が走る。意識が朦朧としてきた。
もう、視界が歪んで上怪が揺れてるように見えるくらい意識が無くなりそう。足しか見えないけど、だんだん近付いてきてもう僕の目の前に立ってる。
「やばい……」
上怪のクリティカルでかなりのダメージを負った。もうダメだと思った。
「迎えに……来……た……」
俺はフラフラのまま、上怪のところに近づいた。
左肩の血は腕まで垂れており、腕が正常に動けなくなってた。
「爓? なぜ?」
洋二がなぜ、俺が寝込んでたのに今いるのか疑問で分からないしさっき治療してって言った。
俺は、巨大な上怪を見た。強固な姿勢を見せる。
「おい! 上怪よ!」
もう上怪が来ても怖くなくなった。
俺を見て何かを気付いた。呟きたそうだけど俺は、何言ってるのか分からない。
「ガルル?!」
「俺と戦え!」
「ギャルル!!」
上怪の毒吐きの攻撃が来た。緑色の液が飛んでくるが
俺は、直ぐ避けて飛んで真上で能力を発動した。
「これが本気の能力、上級効果!!【堕威切り】!!」
上怪の身体は真っ二つになり炎が燃えた。他に燃え移るのではないかぐらい火力が強い。
『上級効果』は、下から3番目の能力だった。これを使うのは初めてなので体が持たなかった。
「その能力……」
「爓の、本当の能力がやば……すぎだろ……」
二人が俺の能力に感動し、そのまま気絶した。あまりにも強すぎる能力だった。
まだ、少し、取得してないのに……。
戦い終わって上を見ると朝日が登っており、少し明るかった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
さっきの能力と痛みでもう俺の、体力を使い切って力尽きた。
「爓!?」
まいが俺の方に焦りながら向かった。
気付いた時にはもう布団で目が覚めた。
そこで隣で看病してるまい。
もう治療しないでいいのにまたやってる。
「だから、なぜ俺を治療するんだ?」
「もうその言葉何回目」
「何回目って……」
「その言葉もう聞き飽きたよ、しかもほっとけないよ。そんな怪我して……」
「いや、でも俺は自力で動けるんだ」
「何言ってんの? もしあなたが死んだらどうするの?」
「..….」
確かにそうかもしれないと思った。
いつもこうだ。俺は、勝手なことをしたから勝手な行動しないと誓ってるけど。戦わなきゃあ誰がやるんだろう。
「ここのみんなが、悲しむよ」
「で、でも……俺は動けるし少し経てば治る」
「もういい、次またそんなこと言ったらあたし知らんよ」
「う、うん……」
まいの言う通り頷くことしかなかった。確かに言う通りだ。
この先何があるか分からないし、みんなが悲しむ。
でも、もう考えたくもなかった。
この能力がある事がなにより邪悪で、持ってるだけで人に負担かかるからだ。この勝ってな行動をする症状をどうにかして欲しいよ。
午後の昼を過ぎた。これから皆んな出かける用事は食料調達だが、俺は用事がある。まだ皆、上怪にやられた傷が治ってないようだ。
「もうどうですか?」
まいが、リーザに様子を見て言った。
「いや、こんなもんただのかすり傷だ!あいててて!」
洋二は、リーザの傷はかすり傷程度ではない。
「まだ治ってないじゃないですか……」
まいは俺の様子を言った。
「爓はどう?」
「俺は、動ける」
「はっきりしないなー大尉よ。もっと正直に言わないと伝わらないぜ!」
「そういうリーザさんもあれほどビビってたのにまだその事が言えますか?」
「い、いや! ビビっない! あれは……」
「とりあえず少し治ったら行きましょ」
みんな賛成したけど、俺は立ち上がって、洋二とリーザにあげた。
「これをあげる」
差し出したのは花だった。
「これはなんだ?」
「『ガマ』切り傷や出血を押さえる漢方だ。これ飲んだら少しは治る」
「いいのですか?」
「俺は飲まなくても治るから大丈夫だ。それと、俺を助けたお礼だ」
この世界では寿命なんてない、歳をとっても、おじいさんではないから遊び放題なんだ。
でも、交通事故は外の世界と共通なので、そこは注意すればいい。
俺は『あの』調査のために、出かける。
「あ、ありがとうございます」
「少し行ってくる」
「何処にだ?大尉、まだ治ってないだろ?」
「ちょっと、食材取ってくる」
「気をつけてください」
「帰ってきてよ」
「分かった」
家を出た爓だが、どこに向かうかはもう把握してる。
「さて、この所に奇怪の集まる場所がある、そこに侵入してリーダーを倒すか」
目的地はかなり遠いけどそんなに遠くない場所にあるし、まあまあ遠いぐらいで、そこに侵入すれば足止めできる。
「しかし、かなり遠いな。父さんが言ってたことは本当だったら倒せばよかったのになぜ倒さなかったんだ?」
独り言で疑問に思いながら、歩いて30分してちょっと疲れた。
「すこし休むか……」
ベンチがあったので座り、俺が握ったおにぎりがあったのでそれを食べる。
「うん、上手い……」
食べたおにぎりをじっと見つめた。
「そっか……」
いつも母さんが作ったおにぎりの味を思い出した、優しい味がした。
いつもご飯でおにぎりを作ってた。
塩を振って一緒に握った味が母さんの味を少し思い出した。会いたかった、まだ生きていきたかった、もうここには居ない。
「母さん……」
少し涙を流した。
と、その時向こうから母さんが……。
いや、違った。
「おい、大丈夫か?」
声をかけられたのは平安時代の貴族の格好をした男だ。涙を拭う。
「こんなところで座ってたら奇怪に狙われますよ」
この人は見たことない、むしろ対奇怪隊にそんな人は見たことない。
「誰ですか?」
「俺は安倍秀明」
「本物の陰陽道か?」
「まぁ、そういうことかも、この私、妖怪を召喚できるのだ」
「妖怪を?」
「少し、不思議だけどこれは陰陽道だけしか出来ない技なんだよ」
「はぁ、なるほど……」
あまり関心なかった。
てか、むしろ想いの感動を返してくれと思ってたら、なんかいきなり手品を見せてきた。
「一度見てみるか?」
「いや、いいです」
「いやいや、見たらびっくりするぞ! 見てろよ見てろよ!」
仕方なく見たけど、これで驚かなかったら行くか。
「バーン!これが手品!」
手から花が咲いた。面白くないので、秀明を無視して行く。
「あーはいはい、では先に行きます」
「おいおい! まだまだ! これで終わらないから!」
「はぁぁぁ……早くしてくださいね」
芸を見てると、ため息つく。下らない。
忙しいから、見たら猛ダッシュで逃げるつもりだった。
「今度はちゃんとやるから、いくぞー!それ!」
なんと花から緑の巻物が出てきた。
秀明が、その巻物を指差し、質問してきた。
「その巻物はなーんだ?」
俺はなんの巻物なのか分からないし、むしろ興味を示したかと言うと半々だった。
「なんだって言っても……」
「これは妖怪の古代の書物、これでいろいろと調べれるんだよ」
「でも、そんなに興味無い」
「あーなら君のおにぎりを増やしてあげましょう!」
「そんな事しなくてもいいけど……」
「いきますよー! はい!」
俺の話を聞かず、芸を始める。
さっき食べたおにぎりが元に戻った。
「もしかして、陰陽とかなんとか言ってたけど、道化師じゃないか?」
「んなわけない、それは倒さないと分からないだろ?」
「あ、あぁ……」
倒す相手って言うと奇怪なんだけど、今は居ない
「しょうがない、奇怪のダミーを召喚して……」
奇怪が出た! けどただのダミーだったけど、よく見たら小学生が本気で図工の工作を作ったかのような平凡な作りだった。奇怪(カカシ)だ。
「いくぞ!中級効果!【満場一致】!」
御札が燃え、技が発動した。
火柱が高く、相当な火力だった。
「おー……」
「どうだ?少しは感心しただろ?」
「あ、あぁ……」
少し感心した。
ダミーは灰になって消え、さっき発動した能力の火が手に付いてたので手で振り消した。
「で、何処へ行くのだ?」
「奇怪退治」
「お供する!」
「いや、一人で十分なんだけど……」
「何を言っておる、帰って怪我をしたらどうするのでありますか?」
あのまいの言葉を思い出した。
死んだら帰って来れないので、しかたなく了承した。
「ま、まぁそうだな」
「では、ついて行きますぞ」
お供して歩いて数時間、意外とだいぶ経った。
嫌な空気と静かな森に着き、俺は森の先に指を指した。
「ここだ。用心しろよ」
「これは、とても、嫌な予感がするな」
警戒する秀明そして……。
「あと、この先は危ないから、気付かれないように気をつけろ」
俺が先頭に立って奇怪の足跡を辿り、奇怪を探していた。
辿っていったら、人工的に作ったであろう石が道のように地面に敷き詰めてる。道の目の前、に洞穴があった。
俺は、洞窟の外に何か手掛かりがないか見ながら道化師に警告した。
「気をつけろ。下手に入ると大変な事になるから……」
と、言う前に道化師が洞窟の子供が入れそうな小さな穴を覗いてしまった。
「なにこれ?」
「おい?! 道化師! 覗くな!」
俺が道化師に注意したが、遅かった。暗い洞穴を覗いた瞬間赤い目が向こうに光った。
「うぉっ!?」
飛び上がるようにびっくりした。
「逃げるぞ!」
危険に気づき、急いで走って逃げた。
「後ろ振り向くなよ!」
「分かった!」
かなり猛ダッシュで逃げた。
正面を見てたせいで秀明が丸木に躓いた。
「イテッ!」
地面に滑った。かなり盛大に転んだ。
「何をしてる!?」
「イテテ、足に怪我が、先に行ってくれ」
「何を言ってる! 俺の背中に早く!」
怪我した秀明に爓の背中を乗る。
「行くぞ」
「女じゃねえんだからよ。まぁ、助かるけど」
一緒に走った、そして遠い距離まで着いた。
「はぁ……はぁ……」
「あー疲れたー」
二人は、走りすぎてもう限界ヘトヘトだった。
「とりあえず休むか……」
土の段差に座り、一息つこう思ったら目の前に中怪が現れた。
「なぜ分かった……!」
「ギャルル!」
「……!」
中怪の腕を振るう速度が早すぎる。鋭い爪で、一本の木がなぎ倒された。
「くそ!」
地面が凸凹で転けそうだけど、ギリギリなんとか交わした。
道化師が中怪に近付き、何故か格好つけてる。二メートル近い身長で相手に出来るのか?
「任せろ!この安倍秀明様がこの……グオッ!」
だろうな。いいとこのセリフを無視されて、振り払わられた。
「ちょっと、道化師」
「……ちが……だろ……」
飛ばされて、地面に倒れた。
かなりのダメージを負った。刀を構えて奇怪に近ずいた時
「こうなら俺が!……あ……」
やはり、中怪の身長がデカすぎて勝てるわけない。近くで見ると巨人なデカさだった。
頭がゴツゴツしており、ムッキムキで、目は複数あってどこ向いてるのか分からない方を向いてた。流石の差で、かなり混乱していた。
「……どうすれば……」
「中級効果!【音鐘】!!」
鐘の音で中怪の動きを封じこめた。
「ガールルル!! ギャルル!!……」
鐘音のせいなのか、もがいてる中怪。
「チャンスだ。いけ! 妖怪よ!」
小さい五体の妖怪が召喚した。
「あとは、この中怪を好きなように遊べ!」
そして小さい妖怪達、目の前の中怪に、集まり一斉に攻撃された。
いつの間にか跡形もなく無くなっていた。妖怪は自分家のように消えて帰ってしまった。
「ありがとう道化師」
「だから道化師じゃないって言ってるだろ、てか見たか俺の妖怪達を」
「見てたけどあんま大したことないね」
俺は戦闘に集中していたため、見てたけどパッと見、こっちの方が能力、上だった。
「ちょっと!ちょっと!まだあれは本気出てないから」
「はいはい、分かりましたよ」
中怪を倒し、来た道を戻り、家に戻った。
帰ってきた時にはリーザと洋二とまいで、トランプしてた。三人して楽しそうだな。
「おっ、やっと来たか!」
「遅かったですね」
「おかえり」
「おう、ただいま」
「その人誰ですか?」
洋二が秀明の方に指さした。驚かないのが少し疑問だけど。
「この人は道化師、安倍秀明」
「いや、だから道化師じゃないって!」
「面白そうだな!少し芸を見せてみろよ!」
リーザが芸を見たくて興奮してる。子どもかよ。
ちゃんと道化師もツッコミも受けてる、ツッコミか分からないけど。
道化師が芸をやるのを恥ずかしくなった。
「いや、だから道化師じゃないって……」
っと言って芸を見せた。
あれほどに見せてたのに人前で見せると恥ずかしくなった秀明。何故やろうとしたのか。
秀明は仕方なく芸を見せた。
すると、手に握ってた御札から火を出した。
凄いけど、家でやる事では無いよ。
「おお!凄いな!」
「お見事です」
「すごっ!」
「なあ!それ、どうやってやってんだ!?」
リーザがかなり興味津々してる。
今の手品でもう一回はやめてくれ、間違ってやったら家が燃えるから。
芸をもう一回やるのは、勘弁して欲しい秀明だった。
「いや、だから〜これは技であって手品ではないって〜」
さっき手品って言ってたよ、絶対に言ってたよ。
既にみんな秀明の方に興味が湧いていた。
「はぁ……なんか、面白そうだな」
爓は見てただけであまり関心なかったけど、仲間が増えて楽しい感じがした。
また、この楽しい雰囲気が長引くように……。
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