第125話 交流戦の結果

 17時になり、俺達はグラウンドに整列させられた。


「えー、今回の交流戦ですが、勝ち星が多かったのは私立学園ギラの方でした。ですがそこまで大差をつけられていたわけではありません。気を落とさずにいきましょう。」


 リーリエさんとの戦いを終えた後、俺は何人からか戦いを挑まれた。当然全勝だ。今の俺はノリに乗ってる。そのかいあってか、交流戦はギラが勝ったようだ。


「ではこれより、本日から皆さんが使用する宿泊施設の清掃。それが終わったら夕食にします。」


 荷物を回収し、宿泊施設……と言っても寮よりボロい建物だが……に置きにいく。そして各自自分達の部屋を清掃した。意外にも1人1部屋与えられたため、誰かと風呂の取り扱いになったりはしなさそうだ。


「部屋の清掃が終わったら1階に降りて飯食うんだっけ?」


 ペコペコなお腹をさすりながら階段を降りる。カレーのいい匂いが漂ってきた。


「おー、定気。これから飯か?」


「佐山か。そうだぜ。一緒に食う?」


「もろちん。」


 その宿泊施設の1階には食堂めいたものがあり、そこで教師達がご飯を作っている。ギラと京都の1年生全員が入るため、中はギチギチ。知らない人と相席になってしまって若干気まずいが、それも仕方ないかと割りきってカレーを飲んだ。いや、しかし量が足りない。


「俺、おかわりもらってくる。」


 最初の1回はよかった。京都の教師からは「食べ盛りねぇ。」とニコニコした顔で言われた。しかし2回目のおかわりとなると、その顔は少し心配を孕んだ。そして3回目。とうとう苦笑を浮かべながらカレーを注ぐようになる。


「チィ、今日は4回までにしといてやるか。」


 4回目はもうドン引きされた。そもそも俺以外におかわりしてる奴がいないのだから、まぁそうはなるだろう。俺から言わせてみればみんな少食。というか、飯なんて無限に食えるだろうに。もしかして、俺が思うほどみんなカレー好きじゃないのか?


「なぁ、この辺コンビニあると思う?」


「ないだろ。山奥だぜ。」


 やっぱりそっかぁ。仕方ない。これ以上の食事は諦めよう。


「でさ、飯終わったらなにすんの?」


「自由時間……いや、確かイベントがあるって言ってたな。」


「イベント?」


「あぁ。22時にグラウンドに集まれって話だぜ。」


「なるほど。」


 とりあえず俺は飯を終えたらちゃちゃっと風呂に入り、それから佐山の部屋に遊びに行った。そこで22時まで時間を潰し、22時になればそのイベントとやらに参加するためにグラウンドに行った。


「あれ、京都の生徒はいないんだな。」


 グラウンドに集まっているのはギラの生徒だけであった。既に辺りは真っ暗で、明かりがなければ誰が誰か分からないくらいだ。グラウンドの照明と月明かりだけが視界を確保してくれている。


「えー、皆さん。集まってくれてありがとうございます。」


 壇上に上がったのは京都の教師。交流戦の時にも見た、スリムな男性だ。


「これより! 肝試しを行うッ!!!」


「き、肝試しィ!?」


「そうだ肝試しだ! この合宿場の裏には幽霊の出る山がある! 今から貴様らにはそこの奥に設置してある肝試し受領カードを取りに行ってもらうぞ!」


 く、口調が変わってる! さっきまでの優しそうな雰囲気はどこに!?


「肝試しは2人1組のペアで行ってもらうが……そのペアはくじ引きで決定する!」


「く、くじ引きィ!?」


「つべこべ言うな! 貴様らの軟弱な精神を鍛え直すためなのだ! くじ引きは教師側で勝手に行う! 名前を呼ばれた者は前に出るのだ!」


 センコウ先生がくじ引きの箱を持ってきて、その京都の教師がそれを引く。そしてそこに書いてある名前を読み上げるのだ。


「佐山サトシ! 紅ノブ!」


「お、やったぜ。知ってる奴だと安心するな。」


「よろしくやで。」


 さ、佐山……! ノブも……! お、俺を置いていくな!


「白市 竜八! 砂原 須波!」


 し、白市ィェェェァァァァ! お前が行ったら俺は誰と組めばいいんだ! いや待て、まだだ。まだ奏明が残って……。


「安倍 奏明! 神谷ヒカリ!」


 奏明ィィィィィィ!!!


「やた! 奏明ちゃん行こっかっ!」


「う、うん……。」


 奏明はヒカリちゃんに手を引かれ、暗闇の中に消えていった。終わりだ。もう俺に知り合いなど……。強いて言えばまだ江津と国寺辺りが……。


「江津 虎穴! 国寺 哲郎!」


 あ、終わった。ガメオベー。もう俺に知り合いはいません。いや待て、まだいる! そうだ忘れていた。最近出番がなかったからすっかり存在を抹消してしまっていたが、タクがいるじゃないか! そう考えたら俺も意外に知り合い多いな……。


「次は……羽山 風舞! 定気 小優!」


 は、羽山? 俺、羽山とペアなの……?


「む、定気 小優! いないのか! 早く出てこい。」


 そういや羽山もまぁ知り合いっちゃ知り合いかぁ、と思いながら前に出る。センコウ先生が懐中電灯を渡しながら肝試しのルートについて説明してくれた。


「目印があるからそれを辿っていくと着く。ただし行きと帰りはルートが違うから気をつけるんだぞ。じゃ、行ってらっしゃい。」


 羽山はなぜだかあんまり目を合わせてくれない。説明を聞いている最中もなぜかやたらとそわそわしていた。もしかして……。


「羽山、お前、幽霊とか怖かったりする?」


「ゆ、ゆゆ、幽霊!? そ、そんなのここ、怖いわけないじゃない! バカ! アホ!」


「なんで罵倒されたの俺……?」


 そうは言いながらも羽山は挙動不審。これはなんだか波乱の肝試しになりそうな予感がする……。

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