第95話 国寺に会いに行こう!
とりあえず俺は学園に戻ってきた。もしかしたら国寺がいるかもしれないと思ったからだ。しかしアイツが寮生なのかどうかすら知らない。いったいどうやって会えばいいってんだ。
「おや?」
学園の敷地内を歩いていると、目の前を白い子猫が通っていった。迷い込んでしまったのだろうか。その子猫は素早い身のこなしで茂みの中に隠れてしまう。
「お、お待ちになってくださいまし~!」
そして聞き覚えのある声が聞こえた。一度聞けば決して忘れることのないような、特徴的な声。振り替えると、そこには金ピカに身を包んだ令嬢がいた。
「あ、あなたは……。」
「あらご機嫌よう。私あなたのこと知っておりますわ~! でも正直今急いでますので歓談の余裕はありませんことよ~!」
なにやら焦っている様子だ。
「もしかして、白い子猫を探してたりします?」
「そうですわ~! どうして分かりましたの~!? エスパーですわ~!」
「その子猫ならさっきそこの草むらの中に入っていきましたよ。」
「あらそうでしたの。貴重な情報に感謝しますわ~!」
金屋敷さんはそう言って草むらの中に入っていった。高そうな服を汚すことも構わず。かと思うとすぐに出てきた。
「確保ですわよ~!」
出てきた彼女の腕には白い子猫が抱かれていた。あの子猫は金屋敷さんの飼い猫だったのか。
「まったく、どうしていつも逃げ出してしまうのかしら。」
「ンナー。」
子猫はンナンナ鳴いているが、暴れたり逃げようとしているわけではなさそうだった。
「定気さん、でしたわね。謝意を述べますわ。あなたがいなければこの子を見失うところでしたもの。」
「いえいえ。そんな大したことはしてないですよ。」
「ンナー。」
「なにかお礼がしたいですわ。私、施しを受けてばかりではいられませんもの。」
お礼かぁ。シンプルにお金……はダメだな。あっ、そういや金屋敷さんって2組だったよな。じゃあ同じ2組の国寺の連絡先も知ってるんじゃないのか?
「じゃあ、ちょっと教えてほしいことがあるんですけど……国寺の連絡先って知らないですか?」
「知ってますわ~! あの方にご用がありますの?」
「はい。ちょっとした用があって。」
「ならば私が架け橋となって差し上げますわ~!」
そう言って彼女は片手で器用にスマホを取り出した。
「確か、国寺さんなら学園近くの町に住んでいたはずです。ですので都合が合えばすぐに会えますわ。具体的にいつ会いたいとかはありますの?」
「うーん。そういうのは特にないです。」
「分かりましたわ~。」
そう言ってスマホをポチポチ。子猫もスマホを覗き込んでは、たまにスマホにネコパンチをお見舞いしている。金屋敷さんはそれを上手い具合に躱す。
「今連絡を入れましたわ。返事が帰ってくれば内容をお伝えしますわね。スマホを出してくださる?」
俺は画面バキバキのスマホを取り出した。
「L◯NEを登録しますわよ。あのフリフリするヤツで。」
あぁ、アレか。あのフリフリするヤツ。あれ便利だよね。
「友達登録できましたわ~! わぁ、アイコンが初期アイコンですわ~!」
う、うるせいやい! スマホなんてギラに来るまで持ってなかったんだもん! L◯NEも学長に入れてもらったし。
「では私は失礼いたしますわ~!」
そう言って彼女は去っていった。まるで嵐のような人だった。だが、国寺とアクセスできそうなのは幸いだ。俺はそのまま寮に帰った。
「そういや、女の子とL○NE交換するの初めてじゃん。」
冷蔵庫から作り置きのおかずを出しながら、俺はそんなことを考えていた。白市、佐山、ノブといったクラスの男子共とは交換しているが、女子と交換したことはなかった。あの奏明とすらもだ。まぁ、奏明はL○NEとかやってなさそうな顔してるけど。
「大魔王~、そういやこの前出会い系アプリで会ったリーリエって子からなんか来てる?」
「いや、なにも来ておらぬ。」
最近は部屋の中であれば大魔王もちょくちょく俺の腹の中から出てくるようになった。ずっと腹の中にいるのも暇なんだろうなぁ。
「やっぱりかー。あれからなんか連絡つかなくってさー。」
「まぁ、そうしょげるでない。今は目の前のダンジョン攻略にだけ集中するのだ。」
うーん、そう言われてもなぁ。
「む、L○NEの通知が来たぞ。」
「おっ、なんて?」
「金屋敷とかいう者からだ。国寺なら明日にでも都合がつくと言っている。」
おぉ、いいね。スキルの習得に時間がかかるかもしれないから、なるべく早めに会いたかったんだ。
「じゃあ明日、会うことにするよ。」
「さようか。我の体ではスマホ反応せんから、返信は貴様がやるのだぞ。」
じゃあどうやってスマホ起動したんだよ。
「しっかしダンジョン攻略とは、これまた大事になったねぇ。アレ、本来は何人も冒険者がやってきて攻略するもんだろ。」
「そうだ。だが貴様なら叶う。アレはまだ弱い部類のダンジョンなのだ。だから貴様程度の実力でも攻略は十分に可能なのだ。」
そう言われても実感は湧かない。だけど不思議と、あの〈魔王化〉というスキルを扱えるようになれば、攻略も可能になるんじゃないかと、そう思えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます