第72話 二次会!

「と、いうわけで、1年1組八英戦お疲れ様でしたの会、会長の白市でぇ~す!」


「いよっ、待ってました!」


 八英戦が終わり余韻が消えぬうちに、俺達1年1組は近所の焼肉屋に来ていた。時刻はもうすぐ21時になろうかというところ。しかし今日は夜更かししてもいいのだ。なぜなら明日は休みだから! さらに! 寮の門限は今日に限り無効! くぅ~、学園もいいコトしやがるぜ!


「では、会長からの挨拶を……。」


「リュウー、話が長いぞー!」


「まだなにも話してねぇよ!」


「かざちゃんなに飲む~? ハイボール?」


「こらそこ! さらっと酒頼もうとするな! バレたら怒られるの俺なんだぞ!」


 白市は陽キャである。が、陽キャの中でも善なる陽キャなのだ。善なる陽キャなので普通に学級委員長でもある。


「つうか挨拶とかいらなくね? 早く食おうぜ。待ちきれねぇ。」


「クソッ、こいつら自由奔放だな。小優、お前もなんかビシッと言ってくれよ。」


「和牛頼んでいい?」


「しばくぞ~!」


 という風に会長の挨拶は終わり、俺達は各々好きな席でどんちゃん騒ぎをした。ちなみに会場の焼肉屋は他の組の生徒も来ており、ほとんどギラの貸し切り状態だった。


「うんまいなぁーッ! やっぱり肉、肉だぜ!」


 俺は肉をとにかく頼みまくり、とにかく食いまくった。白米はいらない。とにかく肉。肉だけだ。


「えーではお次に新八英のお2人からスピーチをいただきます。新八英の小優、どうぞ壇上へ。」


 壇上がどこなのかは分からないが、とりあえず白市のところまで行く。しかしスピーチなんて考えてないぞ。まったく、こういうことは事前に言ってくれよな! いや、言ってたっけ?


「えー、皆さん。定気 小優です。」


「ワーワー!」


「イエーイ!」


「ワイ将の親友ー!」


 す、すごい。挨拶だけでこんなにも場が盛り上がるなんて! こんな経験初めて!


「この度、八英戦でベスト4に入り、八英になりました。」


「イエーイ!」


「本当ならその枠俺のだぞー!」


「1回戦で当たったの覚えてるー?」


 男子も女子も、こうやってまとまっているのを見るとなんだかほっこりするなぁ。すごくいい。最初の頃とは大違いだ。


「八英になれたからには、これからいっそう頑張っていきたいと思います。皆さん応援よろしくお願いします。」


「スピーチつまらんぞー!」


「1発ギャグしろー!」


「コーラ! コーラ! コーラ!」


 うわあ混沌としてきた。これだからスピーチはやりたくないんだい!


「以上でスピーチを終わりまーす。はい拍手ー。」


 拍手を受けながら俺は元の席に戻る。


「スピーチ、平凡だったな。」


 隣の佐山がニタニタしながら言ってくる。うるせい。


「ではお次に羽山さんにスピーチしてもらいます。どうぞー。」


 白市に連れられて、トコトコと羽山がみんなの前に姿を現した。ほとんどの人にとっては魔王騒動以来だ。


「えっと、羽山です。八英になりました。」


「イエーイ!」


「かざちゃん緊張してるー!」


「かわいいー!」


 羽山 風舞はロリである。いや、正確には違う。だが、黙っていればロリである。背は1組の中でも1番低いし、童顔丸顔。しかし口を開けば自信家で強気。そんな彼女が緊張し、言葉に詰まれば普通に可愛い。多分久しぶりの登校ですぐにクラスに馴染めたのも、その庇護欲誘う容姿のためでもあるだろう。立てば幼女、座ればロリータ、口を開けば女さん。そういう感じの人だ。


「ちょっと前に色々あって、それから休んでたんだけど、今日からまた登校することになりました。だから、み、みんな仲良くしてくれると嬉しい……です。」


 あれ? 別人? 猫被ってる? ニャンコフード? 俺と戦った時そんなんじゃなかったよね?


「私は今回、八英になれました。だけど、私の目標はもっと上。」


 そう言って羽山は焼肉屋の一角を指さす。そこには隅っこでジンジャーエールを飲む奏明の姿が!


「私は安倍さんを……あんたを倒す。あんたを越えてやる。だから今よりもっと強くなる。みんなには、その姿を見ててほしい……です。」


 自分で言ってて恥ずかしくなったのか、羽山は顔を真っ赤にしながら蒸気を出している。どういうスキルだよそれ。


「うおー!」


「いいぞー!」


「安倍ぶっ倒したれー!」


 それに対してみんなの反応は上々。というか俺の時より盛り上がってない? おかしいな。やっぱりビジュアルって大切なんだね。俺も化粧とかしようかな。


「い、以上です!」


 羽山はバビューンと元の席に帰ってしまった。やっぱり恥ずかしかったんだ。


「と、いうわけでスピーチをしてもらいました。今日は23時に解散とするので、それまでじゃんじゃん飲んでじゃんじゃん食べてくださーい。あ、ちなみに代金の心配はしなくていいから。」


 それって白市の奢り……ってコト!?


「和牛! サーロイン! 店員さーん!」


「おい誰か定気止めろ! もう何キロ食ってんだこいつ!」


 うおんうおん、俺は人間火力発電所だ。


「リュウー、肉焼けたからこっち来なよ。」


「おっと、誰か小優の世話しといてくれ。俺はスナに呼ばれたから。」


「し、白市ィィィ! お前以外に誰がこいつ止められるんだ!」


 結局、この日俺は店の肉を食い尽くす勢いで食べまくった。後から聞いた話によると、俺だけで10万円以上は食べていたらしい。まぁそういうことも、あるよね。

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