第68話 六角のヴァリアブル戦(1)
「さてさて、準々決勝が終わりました。現在勝ち残った生徒さんは、定気くん、ヴァリアブルさん、神谷さん、安倍さんの4人です!」
もう準々決勝が終わったのか。回復酔いめ、インターバル取れなかったじゃないか。
にしても、白市やタワーリシチが敗退しているのか。いやぁ残念。2人とも戦いたかったなぁ。
「そしてそして、現在、たった今、準決勝の準備が整ったそうです!」
準決勝!? もうかよ! クッソ〜、覚悟を決めるしかねぇ。〈リーサル・ドゥーン〉はもう使えないからそれ以外で頑張らないと。できるのか? いや、やるしかない!
「準決勝第1試合は、空間支配人・定気 小優くん対六角のヴァリアブルさんです!」
さっきの試合では派手な登場に執着しすぎて、蘇生リングを受け取るのを忘れていたからな。今回は忘れないように、リングに入る前にキチンと受け取っておいた。それと、さっきの試合で剣を壊してしまったことを伝えると、剣を貸してもらえた。まさか自分の武器を消し飛ばすとは思わなかったよね。わりと愛用してたのに。
「定気くんは新八英対決を見事制した期待のダークホースですよね。」
「えぇ、そうですね。先ほどの試合では意外な超火力を見せてくれました。今回の試合でも、なにかとんでもないことをしてくれそうですよね。」
クッソ〜、もう〈リーサル・ドゥーン〉は使えないんだ。勘弁してくれ。
「対する六角のヴァリアブルさんは八英ランキング2位! 先ほどの試合では圧倒的な防御力で、八英ランキング5位の白市くんを下しました。」
「まさに鉄壁と言えますね。噂では戦闘力は12000を超えているらしいですよ。」
い、12000!? 1年生で10000超えなんて、奏明以外だと初じゃないか? しかも白市を倒すなんて、すごい実力者だ。
「では両者入場です!」
実況解説の声に従い、俺はゆったりと余裕を持ってリングに上がった。対面から、俺の対戦相手であろう六角のヴァリアブルさんが上がってきた。が……なんと俺はその姿に見覚えがあった。
「どーもどーもー。」
歓声に答える彼女を、俺は知っている。ボブカットで、青のインナーカラーが特徴的。奏明よりも薄い、男子と見紛うほどの胸部。上背は俺と同じか少し低い程度。声は女子にしては低めだが、時折ハスキーな部分も見え隠れする。そう、彼女の名は……!
「不定ちゃん!?」
「お、いつぞやの陰キャくんじゃん。久しぶり~。」
「き、貴様……! 貴様のせいで俺は大変なことになったんだぞ! 許さん!」
「まーまーそんな固いこと言わないでさ。ほら、深呼吸深呼吸。」
煮えたぎる怒り。なにを隠そう、俺はこいつのせいでなんかすごい額の借金を背負わされそうになったのだ。あの屈辱、忘れてなるものか。
「それにしても、陰キャくんがまさかここまで勝ち上がってくる実力者だったなんて驚きだよ。」
「俺はお前が八英だったことの方が驚きだよ。」
確かこいつ、入学早々謹慎だったか停学だったか喰らってなかったか? 八英ってそんな問題児でもなれるのかよ。
「ま、ボクって強いし。」
確かに強そうだ。戦闘力12000って聞いたぞ。
「それに君よりモテるし。」
「それは関係ないだろ!」
「あるとも。まったく、陰キャくんはボクの人生理念を忘れてしまったのかい? 話を聞かない男はモテないよ。」
人生理念? そんなの話してたっけ?
「ボクはね、モテたいんだ。分かるかい? この八英戦で優勝すればモテるだろう。だからボクは勝たなくてはならない。強さも、ボクの目的のために必要なものだから身につけた。」
「あー、そんなこと言ってたなぁ。まぁでも、負けられないのはこっちも同じだから。悪いけど速攻で勝たせてもらうぜ。」
「いやいや、それはこっちのセリフだよ。」
「いやいやいやいや。」
「いやいやいやいやいやいやいやいや。」
「いやいやいやい――。」
「ピンポンパンポーン。話が長いです。もう試合を始めてもいいでしょうか?」
ムッ、そんなに話し込んでいたかな。確かに見てる側としては話してるだけってのもつまらないよな。
「申し訳ない。始めてくれ。」
「ボクもオーケー。」
「ではこれより、準決勝第1試合を開始します。」
気の抜けたファンファーレが鳴り響いた。試合開始だ。
「さぁ始まりました、私立学園ギラ八英戦準決勝第1試合、定気 小優くん対ヴァリアブルさんです!」
まずは〈上下左右・右〉を付与。そのまま〈切除〉を――。
「武装起動:
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