第28話 さらに下層へ
「カカカッ!」
「こいつは……レッサーオートマタ改。」
レッサーオートマタ改は顔のデスマスクが笑ったようなものになっており、体表の色も若干灰色っぽくなっている。
「こいつは手からレーザーが出せる。私の背中に隠れていてくれ、小優くん。」
あ、こいつ遠距離攻撃持ちか。そういや授業でそんなこと言ってたな。
「カカカッ!」
「カカカッ!」
「さらに2体? しかも挟まれたか。」
「タワーリシチさんは前の2体を頼む。俺は後ろの奴をやる。」
「ダメだ。君では奴に勝てない。」
俺はレッサーオートマタ改に突進していく。その姿を見たレッサーオートマタ改は手をこちらに向けてエネルギーを充填し始める。
「カカカッ!」
レッサーオートマタ改のレーザーが俺の方に飛んでくる。俺は首を90度右に向けて、そのレーザーを手で受け止めた。
「〈上下左右・左〉」
レーザーに〈左〉を付与する。するとレーザーはその速度を落とさずレッサーオートマタ改に向かって飛んだ。
「カカカッ!」
レッサーオートマタ改はレーザーにより吹き飛ばされ、ダンジョンの壁に叩きつけられる。その隙を見逃さず、レッサーオートマタ改に剣を突き立て釘付けにする。
「カカカッ!」
再びレーザーの攻撃が来る。しかし対処法は同じだ。右を向いて〈上下左右・左〉を付与すれば、レーザーは反射される。
「カカ……。」
2度目のレーザーを喰らったレッサーオートマタ改は力尽きた。どうやらあのレーザーは相当な威力だったらしい。反射したから知らんけど。でもちょっと触れただけで手がめちゃくちゃ熱くなったし、多分強かったんだろうな。
「やったのか。」
振り返るとタワーリシチさんが既にレッサーオートマタ改2体を処理し、こちらに来ていた。
「なるほど。君は剣士でありながら飛び道具を反射できるのだな。」
「ちょっと喰らう必要はありますけど、反射できることに間違いはないですね。」
「素晴らしい能力だ。」
タワーリシチさんは俺が倒したレッサーオートマタ改に近づき、その体を砕いた。中からなにか得体の知れない光る玉が出てくる。
「これは……経験値?」
「そうだ。通常経験値は不可視だが、濃い経験値は光る玉となって見えるようになる。モンスターからは濃い経験値が取れるんだ。」
なるほど。つまりこれを取れば俺もレベルアップができると……?
「経験値は鼻、口、あるいは皮膚から摂取するのが普通だ。手間なら手で握るだけでも摂取できる。」
俺はレッサーオートマタ改から出た経験値を握りしめた。するとそれはスーッと手の中で溶けるように消えた。
「経験値はレベルの上昇や潜在能力の解放に使える。レッサーオートマタ改が倒せるならこれからは戦闘のいくらかを小優くんに任せよう。」
「そうか、ありがとう。ただMPが尽きたら戦えなくなるから、戦闘はたまにでいいかな。」
戦闘を終えた俺達は3層を進む。
「トラップだ!」
「壁が……! 掴まれ小優くん!」
トラップを回避し、モンスターを倒し、宝箱を手に入れた。
「これは、注射器型MP回復薬だな。君が持っているといい。」
そしてついに、俺達は見つけてしまった。4層へと降りる階段を!
「階段があるな。」
「階段がある。」
4層へ降りる階段はチェーンで封鎖こそされているものの、全然入れてしまうくらい緩い。つまり、行こうと思えば俺達は4層へ行ける。
「4層には先生は巡回していない。ピンチになったら助けを呼ぶこともできないし、モンスターはより強くなる。」
「そうだ。だが私ならばさほど問題ではないだろう。どうする。行くか?」
俺は悩んでいた。正直このまま3層で遊んでいてもよいのだ。退屈はしていないし。でもダンジョンは深い層に行くほどいいアイテムが見つかりやすくなるという性質がある。つまり、俺は求めるべきなのかもしれない。2つ目のモテ・マクールを。
「私は小優くんの決定に従う。さぁ、選んでくれ。」
悩ましい。実に悩ましい。しかし悩ましく思っている時点で答えは出ているのではなかろうか。モンスターはタワーリシチさんがいるから脅威じゃないし、もし先生に4層に入ったことがバレても大した問題にはならないはずだ。つまり、そう、もう答えは出ているのだ。
「行こう。4層に。」
「そう言うと思っていた。」
タワーリシチさんはチェーンを手で退けて先に降りた。俺も後を追う。
4層は3層より少しだけ暗く、またさらに土臭かった。そして意外にも階段を降りた先には先客がいた。
「な、なんだあれ?」
黒い制服に身を包み、隊列をなす男女。数は約20人ほど。多分生徒だ。彼らはダンジョンの壁に背を向けて、休めのポーズを取っていた。そしてそんな彼らの前には一際目立つ女性がいた。
その女性を一言で表すならば、アイドルだ。ピンクと黄色を全面に押し出した衣装を着た、かなりの美少女。もはや制服すら着ていないというのは校則的にどうなんだ。
「あーっ、タワーリシチちゃんじゃん。4層に来たんだねっ!」
彼女はタワーリシチさんを見ると笑顔で駆け寄ってきた。間違いない。多分、きっと、いや確実に、彼女は八英の1人、みんなのアイドル
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます