第22話 4つの厄災
魔王っていったいなんなんだ!?
黒服さんはその疑問に答えてくれた。
「魔王は、世界を破滅に陥れる4つの厄災のうちの1つだ。」
あらやだ厨二心がくすぐられるじゃない。なに4つの厄災って。
「この世界にレベルとステータスという概念が生まれた頃、とある唯一アイテムによって4つの厄災が予言された。」
「唯一アイテムってのは世界に1つしかないアイテムのことだよ。とっても貴重。」
解説ありがとうクリーム女。それ前に授業で聞いたよ。
「その4つの厄災は古き時代の黙示録の四騎士になぞらえ、死、飢餓、戦争、支配と名付けられた。」
あらやだ厨二レベル上昇。どっかの漫画で読んだことある設定ね。
「そのうちの死にあたるのが、君達が見た魔王だ。世界中の全ての生けとし生けるものを死に導くとされている。」
死……魔王……なーんか聞いたことありますねぇ。心当たりがビンビンにありますねぇ。
「もちろん、その予言については世間には知らされていない。知っているのは一部の特別な家系とAランク以上の冒険者だけだ。」
「ちなみに私の家系もその特別な家系だよ。」
解説ありがとうクリーム女。いやじゃあお前全部知ってたんかい! さっきまで「魔王? なにそれ?」みたいな顔してたやんけ!
「魔王は本来、Sランクボスクラスの力を持っている。君達が見た魔王は遥かに弱体化していた。」
「まぁ、本来の力を持っていても私なら倒せる。」
「自惚れるなよ。あなたの実力は知っているから言わせてもらうが、その程度の戦闘力ではBランク冒険者が関の山だ。今回戦った魔王はさしづめ、Bランクボスクラスといったところか。」
Bランク……? クリーム女ってめちゃくちゃ強いんですけど……?
「ムッ。」
あ、ムッってしてる! こいつ機嫌悪くなるとすぐムッってするんだよな!
「現在冒険者ギルドは学園と協力し、魔王の捜索を行っている。が、未だ見つかっていない。野良の生き物に食われたか、あるいは他の人間に寄生したか。いずれにせよ魔王の脅威が去ったとは言えない。」
黒服さんはガタリと音を立てて、立ち上がった。
「取り調べは以上だ。知りたいことは知れた。」
えっ、もう終わりですか? もっと色々聞かれるかと思ったのに。
「おいおい、ちょっと待てや。その厄災とやらについては全然話してくれねぇじゃねぇか。教えてくれるんじゃなかったのかよ。」
「教えると言ったのは魔王についてだけだ。それ以上のことは、まだ話すことはできない。これらは世界的に秘匿すべき最重要案件だ。子供においそれと話すわけにはいかない。本来、魔王についても話してやる義務はなかったんだ。」
黒服さんはそれだけ言うと、教室からさっさと出ていってしまった。
「んだよアイツ。感じ悪い奴だな。」
「そうだね。私のこと弱いって言った。」
まだ怒ってるよこの人。
「ま、魔王とか厄災とか私ら一般人には関係ない話じゃん? 気にすることないって。」
「私には関係あるんだけどな……。」
というかこいつの家系ってそんなにすごかったんだ。勇者ってカッコいい二つ名だと思ってたけどまさかそんな世界の根幹に関わるレベルだとは思わなかった。
「まぁ、いいや。じゃあここからは私が厄災と魔王について教えてあげるね。」
「えっ!?」
いや、あの黒服さんめちゃくちゃ話すの渋ってたし、我々パンピーがおいそれと聞いてはいけないのでは!?
「あ、でもあんまり迂闊に話してたら怖い人が来るから、ちょっとだけね。」
来るんだ、怖い人。記憶を消す薬とか注射されるのかな? 俺怖いよ。
「まず、厄災っていうのは死を司る魔王、飢餓を司る赤子、戦争を司る兵器、支配を司る組織の4つを指すんだ。そしてそのうちの3つは既に封印されてるか、滅ぼされてる。」
そ、そうなのか。ということは魔王以外の厄災は存在しないってこと?
「でも魔王が復活したから、無力化されてる厄災は2つになっちゃった。これが今回の事件の最大の焦点。私達が戦ったのが本物の魔王かどうかを冒険者ギルドの人は確かめたかったんだと思う。」
「偽物の魔王もいんのか?」
「魔王を名乗ること自体は簡単だからね。自称すればいいだけだから。」
なるほど。つまり冒険者ギルドは、俺達が戦った魔王が厄災の魔王なのかどうかを知りたかったのか。そしておそらく、それが分かったから黒服さんは用を終えたと言ったんだ。
「現在、冒険者ギルドは戦争の厄災、兵器の絶滅を目標にしているよ。もちろんこのことは世間には知らされていない。知ってるのはごく一部で、冒険者ギルドの表向きの目標はダンジョン資源の収穫ってことになってる。」
ダンジョン資源というのはダンジョンの中で取れる金銀財宝クリスタルだったり、アイテムのことだ。いいなぁ、俺もダンジョン行ってみたいよ。
「戦争の厄災、兵器は通称人造人間とも呼ばれているよ。なんかすっごく強いらしい。私なら勝てるけど。」
そう言って鼻息をフンスフンスと荒げる。この人自分の強さに自信を持ちすぎじゃありませんこと?
「そこに死の厄災、魔王が復活したとなれば、魔王の捜索と駆除も目標に加えられると思う。魔王は人に取り憑き邪悪な心を増大させて力を得るって言われていて、放置すると取り返しのつかないことになるんだ。」
じゃ、邪悪な心を増大!? 放置すると取り返しのつかないことになる!? ヤバいじゃん! そんなのぜーったい許されないじゃん! おい聞いてるか俺の腹の中にいる虫さん。
「飢餓の厄災、赤子は封印されてる。支配の厄災、組織は世界的なカルト教団のことだね。これは冒険者ギルドが秘密裏に殲滅したらしい。もう何十年も前にね。」
なるほど。じゃあその2つについては心配しなくてもいいんだ。
「おそらく、今回の事件をきっかけに冒険者ギルドは動くよ。多分この学園にも非常勤講師として監視の目を送ってくるんじゃないかな。まぁ、この学園には私がいるから魔王はもう寄りついてこないとは思うけど。もし魔王を見かけても絶対に近寄っちゃダメだよ。すぐに私を呼んでね。」
はーい。魔王を見かけたらすぐに安倍さんを呼びまーす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます