第22話 巴との決闘


伊織と巴の決闘を牛若丸、龍馬に加えて鬼一も見守っていた。



「お主ら、二人の決闘をどう見る?」

鬼一は2人に訪ねる。



「さすがに巴ねーちゃんにはかなわんわ。今年、最年少15歳で上忍になったのは伊達やないで。近づくのも無理ちゃうん。」



「水遁だけで考えるなら現時点でも最強って噂ですもんね。この10日間でいーくんの凄さはわかったけど巴さんには勝てないよ。」



「まぁ普通に考えればそうじゃな。」



「違うんですか?」



「いや、八門を開ける人間は普通の人間じゃないからの。なにかあるような気がしてならんわ。」



「おっ!始まるで!」



☆☆☆☆



「はじめっ!!」



伊織は開始の合図と共に突っ込む。

呪力が異常に多い、そして両手には武器を持っていない。おそらく忍術で戦ってくるタイプ。印を結ぶ暇は与えん。



「水遁 水武装 “棍”」

巴が呟くとなにも持っていない右手に水が集まり棍になるとそのまま如意棒のように伸び伊織に襲いかかる。


「なんじゃと!?」


ビュッ

伊織さ間一髪で身体を反らして水の棍を避ける



「まだ。」

巴は左手を伊織が避けた方に向けると水の棍が伊織の顔を捉え吹き飛ばした。


バコンッ!



「もろあたったで!?」

「いーくん大丈夫!?」

龍馬と牛若丸が心配の声をあげる


「いや、差程ダメージは無いの。」

鬼一は2人にかえす。


「いや顔に当たって吹き飛んだんですよ!?勝負は終わりです!」

牛若丸と龍馬が止めにいこうとする。



「待つんじゃ。伊織殿を見てみい。」

鬼一が牛若丸と龍馬を止める。



ガラッ

「よいしょ。いつつつつ。」

吹き飛ばされた伊織は起き上る




「立ちよった!?」

龍馬が驚く。




「木刀で顔への攻撃を防ぎその勢いを殺す為に自ら後ろに飛んだんじゃ。派手に吹き飛ばされてるように見えるが踏ん張るよりもダメージは少ない。」

鬼一が2人に解説する。




「印を結ばなくても忍術を発動できるのじゃな。」

伊織はこの10日で鬼一や龍馬が忍術を発動してるのを何度と見て必ず印が必要なものだと思っていた。その為印を結ぶ前に決着をつけるつもりで速攻したが失敗に終わった。



「忍術は発動速度が早ければ早いほど厄介になる。ふむ。よしじゃあ相手から距離の離れた遠距離で攻めてみるとするか。」

伊織は持っていた。木刀を地面に刺してで弓を構える形をとる。


「足利流 空弓の術」

何も持っていない伊織が弓を放つ動作する



「!? 水遁 水武装 “盾”」

巴は何かを察して右手から自身の前に水の盾を発動させた。



バシュ

伊織の放つ技は巴の盾の前にきえるが、伊織は構わず放ち続ける。

2発、3発、4発と伊織が打ち続けてると巴は盾を発動させたまま伊織がいる前に突っ込む。そして自身の射程距離になると左手に発動させた棍を伸ばし再度伊織を貫く



「足利流 空蝉の術」

伊織は幻を見せて巴の攻撃をかわす。



「分身!?」

巴は印を結ばずに分身を発動させたことに驚くがすぐに切り替えて伊織を探す



「足利流 震脚の術」

幻を囮にして抜け出すと、木刀を拾い巴の横に移動した伊織が地面をおもいっきり踏みしめると伊織の周囲20メートル程で強い地震が発生する。


「くっ。」

巴は強い揺れに思わず膝と手を地面につく。



「もらった。」

伊織は初めて出来た巴の隙をつき木刀を首に振り下ろす。

バシュ。

伊織の勝ちに見えたが巴の身体を水が覆う。


「何!?」

伊織は驚愕する


「残念。面白い攻撃だった。でも、妾は手からだけじゃなく全身から術を発動できる。ただの木刀では水の鎧は貫けない。」

伊織の攻撃を防いだ巴が右手を前にすると水の棍が伊織の腹に強打する。


ボコッ!!



巴の攻撃を受け吹き飛ばされた伊織は膝をつきながら呼吸を整える。

さすがにモロに攻撃を受けるとダメージが大きいの。しかし水の棍に水の盾。それに加えて水の鎧か。攻守に優れておる。さすがは最年少上忍といったところか。

今のままではやはり勝てんの。………仕方ない。

伊織は懐から薬を取り出すと飲み込んだ。




「やっぱり巴ねーちゃんはレベル違うわ。」

「でも、いーくんもいい勝負してたよ!」


2人の声を聞きながら鬼一は伊織の使った技について考えていた。

長介との決着でまさかと思ったが。やはり伊織殿は呪力の技を使える。武士の長、足利家の当主であった方がどういう事じゃ?



「あっ! いーくんまた立ち上がって巴さんに向かって行くよ。」



牛若丸の声に引っ張られ鬼一は思考の渦から抜け出し再度2人の決闘を見つめる。





「伊織殿、まだやられますか?」

審判役をやっていた弁慶が近付き声をかける。



「あぁ弁慶殿試合は引き分けじゃ。」

伊織は弁慶に声をかける。



「どういう? !?伊織殿まさか!!」



「あぁ……いや?これは余の反則負けになるか?」



「いえ。決闘での秘薬は武器と同じ扱いになるので大丈夫です。」

弁慶は答える。



「そうか。まあここから勝っても引き分けじゃ。」

伊織は立ち上がり巴に近づく。





「もう終わりでいい。あなたのことはだいたいわかった。不思議な呪力の使い方をするけど下忍上位くらいの強さ。いくら大きな呪力を持っていても宝の持ち腐れ。」

巴は伊織にいい放つ



「そうじゃな。呪術を、いや忍者は忍術だったか?鬼一殿や龍馬のお陰ですこし興味が湧いてたとこじゃが、お主のお陰で今は忍術に忍者に強烈に引かれておる。じゃが今は武士の戦い方しかしらんのでそれで相手させてもらう。」

伊織はニヤリと笑いながら巴を見る



「武士?気力の無いあなたがどうやって…!?呪力と気力が反転してる!?あなたまさか!?」

巴は驚愕する。



「あぁ悪いな。反転の秘薬に頼らせてもらった。あぁ勝負は引き分けで良い。じゃが、しっかり目を見開いて反応せい。」



伊織の身体は青白い気力で覆われたかと思うと、巴の目の前から姿が消える。


!?



「こっちじゃ。」

姿が消えたと思った瞬間に巴の後ろから声が聞こえ肩に手を置かれた。水の鎧を纏い普通は触る事ができないはずだが、巴の呪力より伊織の気力の方が強いため鎧が意味をなさない。



「くっ!?」

巴は振り向き様に水の棍を後ろに振り抜くが伊織の姿はすでにない。




「こちらは反則してるようなもんじゃ。このままでは相手にならぬ。どうせならお主の最強の技を出せ受けてやる。」

再び距離を離した伊織が巴に声をかける。



伊織に挑発をされたように感じた巴だかすぐに心を落ち着かせ呪力を練り両手に集中させる。圧倒的な量の呪力が巴の両手に集まり薙刀になる。

「水遁 水武装 “巴薙刀”」



「ほう!?まさか15のおなごがここまでやるのか!?面白い。迎え撃つ!!」

伊織は獰猛に笑いながら木刀を気力で纏い構える。



「笑止。あなたの方が子供。それともやっぱり魔物?」

巴も笑いながら構える



「行くぞ。」

「えぇ。」



「はあああああ!!」

「やあああああ!!」



2人の強烈な衝突で訓練場は砂煙に覆われた。

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