第19話 オーク戦その後
オークを倒し毛利の兵と話しをした鬼一は伊織の元に帰ってきた。
「鬼一殿、素晴らしかったぞ!いいものを見せてもらった!」
伊織は興奮しながら鬼一を称える。
「神の子にお目汚しをしました。武士とは異なる戦い方なので新鮮だったことかと思います。あれが忍者の戦い方の一つでございます。」
鬼一は伊織に言葉を返す。
「目汚しなどとんでもないぞ。クナイというリーチの短い武器でとのように致命傷を与えるのかと考えていたが、あのような忍術があるのだな。」
「はい。忍者の基本は木遁印による分身の撹乱と水遁印による武器の生成です。水遁印による武器の生成が有るため忍者はクナイなど機動力を損ねない武器を基本的に持ちます。」
「最後の兵士の前で気力とクナイだけで戦ったのは兵に気をつかい止めを譲るためか?」
伊織は鬼一に訪ねる。
「それもありますが、目の前で忍術で圧倒してしまうとどうしてもその力の詳細について知りたくなるものです。傭兵や狩人には力の差をわからせるためあえて全力を見せたりしますが、権力の後ろ楯のある兵の前では力を見せるのは悪手になる事もあります。」
「なるほどの。」
伊織は鬼一の言葉に感心する
「伊織様、まずはここに残した解体班と見回り班と合流しましょう。その後龍馬達を迎えに行かせます。」
「あい、わかった。」
こうして見回り班と解体班と合流する。どちらの班も戦闘の邪魔になると離れた場所に居た為に無事だった。
起きていた長介に龍馬達を迎えに行くよう指示する鬼一。長介は、鬼一の後ろをついて歩く伊織を化け物を見るように怯えながら急いで迎えに行くのだった。
「やれやれ、怯え過ぎじゃろ。少し痛め過ぎたか?」
伊織は長介の背中を見ながら呟く。
「丁度いい薬でございましょう。これで心を入れ替えて自分と向き合えばあやつも道が開けるかも知れません。元々身体能力に優れ、人を纏めるのにも長けているので。」
鬼一は伊織にそう返す。
「ほう、長介の事を評価しているようじゃな。そう言えば午前中解体班は何をするんじゃ? 仕事がないように思うが。」
伊織は鬼一にそう質問する
「解体班の人間は周りの商会の雑用などをして過ごしています。」
「雑用?お金が貰えるのか?」
「いえ、基本は無償です。乞食は社会的な信頼が無いので商会などで雇って貰うのが難しいのです。しかし、今日のように小早川屋としてきてる場合は後ろ楯に小早川屋がいるため無下にされません。ここで雑用などを一生懸命する事が商会へ就職したい人間のアピールの場になってます。」
「なるほどな。よく考えられておるな。」
伊織が感心しながら話していると牛若丸と龍馬が乞食達を連れて戻ってきた。
「先生ただいま戻りました。人、狩った獲物どちらも無事です。」
「鬼一先生戻りやした。オーク相手に大活躍やったみたいですね。」
牛若丸と龍馬が帰ってきて鬼一に話しかける。
「2人ともご苦労。午後からの狩りは中止とする。午後から毛利の兵と森の見回りに行くことになったのじゃ。今回の見回りはわしと龍馬で向かう。牛若丸と伊織様は解体場の警戒をしてください。」
「「「えー狩り中止なのか」」」
牛若丸と龍馬に加えて、午後からの狩りを楽しみにしていた伊織まで残念そうに声をあげる。
「伊織様まで。……はぁ明日も狩りの日としますので今日は我慢してください。今後もこの狩り場を使う上で兵の要請はなるべく断りたくありません。」
「ほんとか!よし、なら楽しみは明日まで残しておこう。」
伊織は納得した様に明日を楽しみにウキウキする。
「いーくん良かったね。」
「まったく、伊織は子供だな。」
牛若丸と龍馬は仕方ないなと言う目で伊織を見る。
「なんじゃ、その言動と目は?お主らも残念がっておっただろう?」
伊織は納得いかんという目で二人に言い返す。
「いや、いーくんのがはしゃいでたから子供だよ。」
「伊織の方が子供やな。」
「なんじゃと?」
そんなやりとりをする三人を呆れながら、しかしどこか微笑ましく鬼一は見守るのだった。
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