第18話オークと鬼一の実力
ゴブリンとの戦闘後は問題なく解体場の近くまで帰って来た一行。だが辿りついた解体場が騒然としているのに気づく。
「先生なんだか解体場が騒がしいです。」
「なんや戦闘音がするな。」
牛若丸と龍馬が鬼一に報告する。
「何やら魔物が入りこんだのだろう。牛若丸と龍馬は乞食と荷車を連れて解体場を素通りし都市側の歩道まで出よ。解体場の魔物が片付いたら呼びにいかせる。」
鬼一は指示を出す。
「森に待機じゃなくてわざわざ歩道側まで行くんですか?」
牛若丸が訪ねる。
「森から第二、第三の魔物が来る可能性もある。ここで待機してるのは危険じゃ。歩道側まで行き状況を見極めよ。」
鬼一は牛若丸に説明する。
「伊織はどないするんや?」
龍馬が訪ねる。
「伊織様はわしと状況の確認に行く。」
「えーおれもそっちがいいな。」
龍馬が呟く。
「いざとなった時牛若丸と龍馬の方が連携がとれるじゃろうが、それに門兵に顔が利くのもお前らじゃ。いいから早くいかんか!」
鬼一の顔がみるみる恐くなる。
「はいっ!すぐに向かいます!」
ヤバいと思った龍馬がすぐに牛若丸と乞食達を連れて行動する。
「ったく。あの気分屋で感情で動くとこがなおればもっと頼もしくなるんじゃがな。」
移動する龍馬の背を見ながら鬼一は呟く。
「この体になって前世より好奇心に引っ張られる感情が強い様に思う。子供とはこうなんだと思考する事もできるから不思議な感覚なんじゃが。龍馬も大人になれば落ち着いてくるじゃろう。」
伊織は鬼一に語りかける。
「だといいのですが。さて伊織様、今から解体場で戦いになると思いますが、我々の力が呪力という事がバレてはいけません。なので呪力の事はチャクラとお呼びください。大陸に縁のある小早川屋が大陸に伝わる気力をチャクラに変える技を用いて戦っている事になってます。我々はチャクラを用いて忍術を使っていると思ってください。」
「なにやらややこしいが。武士に陰陽師に連なる者だと思わせない為じゃな?」
伊織は鬼一に確認する
「その通りです。余計な争い事を犯す必要はありません。忍者が天下を目指すことはありませんので。」
鬼一は伊織に説明した
「あい、わかった。」
伊織は頷くのだった。
「では、いきましょう。」
鬼一が動きだし伊織が後ろをついていく。
森を出ると複数体の豚の二足歩行の魔物が解体場を襲撃していた。
「あれは?」
伊織が訪ねる
「あれはオークという魔人種の魔物です。ゴブリン、コボルトが最下層の10級なら8級に位置する魔物です。詰所の兵士が3名で一匹を倒せるといったとこです。今日は詰所に6名居たので二匹を兵士が受け持って、残りの三匹を見回りの人間でなんとか足止めしているといった感じですね。」
「伊織様、手前にいるオークに弓を射ってもらえませんか?」
鬼一が伊織に指示を出す。
「もちろんじゃ」
伊織は弓を構えてオーク目掛けて放つ。
放たれた矢はオークに刺さるがオークは特に気にした様子もない。
「なんじゃ??確かに刺さったが全く効いておらんぞ??」
伊織は怪訝そうに呟く
「あれがオークの特徴です。大きな脂肪に覆われてる為弓などの攻撃はなかなか通りません。そして脂肪の中には大きな筋肉があるので、ほらあの通り。」
大盾を構えていた傭兵がオークの突進を受けて盾こど吹き飛ばされる。
「完全なパワーファイターじゃな。では目や喉などの急所を狙うしかなさそうじゃな。」
伊織が再度構え直す。
「いえ、今回は私におまかせください。」
鬼一は伊織の弓をおろさせ前に出ると印を結ぶ
「忍」「知」「刀」「水遁 水武装 “刀 ”」
鬼一が印を結び唱えるとと水が発生し鬼一の右手の先に集まりそのまま刀の形になる。
「では、行ってまいります。」
鬼一は滑るように走り出すと、一瞬で先ほど伊織が矢を放った手前のオークに近寄る。そのまま気づかれずに首を切り飛ばしあっと言う間に一体目を片付けた。
二体目のオークは近くにいた為に仲間を倒した鬼一に気づく。オークは戦っていた狩人達を振り切り鬼一に突進を仕掛けるが、鬼一の右手の水刀は形を変え槍のような形をとり10メートル先の突進を仕掛けるオークを貫く。二体目のオークは貫かれそのまま動かなくなった。
三体目のオークは傭兵が囲っている為鬼一が近づく隙間がない。すると鬼一は右腕に纏っている水の刀を解き「者」「前」「陣」の印を結び分身の術を発動する。龍馬の場合は一人増えて二人になっていたが、鬼一は二人増えて三人になっている。増えた2人はしゃがみ、手を組んでその組んだ手に鬼一が足を片足ずつ乗せた。分身体は立ち上がる反動を利用して斜め上へと鬼一を吹き飛ばす。そのまま傭兵達の囲むオークの上まで飛んだ鬼一は、空中で再度印を結び水刀の術を発動させオークの肩に着地すると同時に首を切り落とす。首を落とされ崩れ落ちるオークを尻目に鬼一は兵が戦う4匹目、5匹目の方へと足を向ける。オークと戦うために囲んでいた傭兵達は今の状況に唖然としながらも鬼一の為に波が引くように道をあける。傭兵達の開けた道を傭兵達に見られながら威風堂々と歩く鬼一はまさしく歴戦の強者。
傭兵の囲みから抜けた鬼一は再度走り出す。
四匹目のオークの手前まで来た鬼一は毛利の兵に声をかける。
「小早川屋でございます。あちらの三匹は片付きました。助太刀はいかがいたしましょう。」
「おー!小早川の鬼一殿か!!頼む手を貸してくれ。」
ベテランの兵が声を声を返す。
「かしこまりました。」
先程の戦いとうって変わり気力による身体強化とクナイに気力に纏う武士の戦い方をする鬼一。オークの急所という急所を傷つけながら少しずつオークを弱らせていく。そしてアキレス腱をクナイで切ったときオークが膝をつく。そこを先程声を返したベテラン兵士が首を切り止めとなった。
「鬼一殿来てくれたのだな助かった。」
残りの一匹を倒し終えた兵の隊長が声をかけてきた。
「そちらも倒されましたか。遅くなり申し訳ありません。」
鬼一が頭を下げる
「どんでもない。今日に限ってベテラン2人が休みで見習いが2人入っていたのだ。見習い2人を気遣いつつ、オークの相手は難儀していたんだ助かった。」
隊長はほっとしたような声を出す。
「鬼一殿助かった。狩人や傭兵に犠牲者はおらんかったか?」
息を整えたベテラン兵が声をかけてくる。
「怪我人はおりましたが、今のところ死亡者は見ておりません。おそらく大丈夫かと。」
鬼一が答える。
「それは何よりじゃな。被害状況の確認が終わり次第、オークの残党がいないか周囲の確認を行う。鬼一殿も参加して頂きたい。」
隊長が声をかけてきた。
「はっ。この老骨でよければお使いください。」
鬼一は頭をさげる。
「かたじけない。では後程声をかけるから解体場にいてくれ。」
「はっ。では、失礼します。」
鬼一は頭を下げ兵の元を去る。
「誰だ?あのめちゃくちゃ強い爺さん。」
見習いの兵が鬼一の背を見ながら呟く。
「小早川屋って言う地元の魔物素材屋なんだが腕利きの狩人が揃っているんだ。中でも鬼一って言うさっきの爺さんと店主の弁慶って大男は毛利の精鋭兵でも勝てない程強いんじゃないかってのがわしらの予想だ。」
ベテランの兵が見習い兵に説明する。
「えっ?毛利の精鋭兵なんて上級武士の集まりじゃないですか。その上なんて最低でも下段の達人クラスですよ!?そんな人間が武士にならずに何で魔物素材屋やってるんですか!?」
もう一人の見習い兵は驚愕して質問する。
「さあな、世界は広いんだ。いいかお前達。ここで困った事があればまずは小早川屋を探せ。大抵の事は解決する。それがここの狩り場のルールだ。」
ベテラン兵は見習い兵にそう説明するのだった。
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