第15話長介との決闘
城門を出て森の前の解体場に到着した。
そこには多くの狩人や商人のような格好をした者がいる。
「結構な人がおるんじゃな。」
「まぁ広島で一番大きな都市が近くにある狩り場だしね。地元の狩人はもちろん、全国各地から来る商人の傭兵達もこの森や山で狩りをするんだよ。そして、あそこにあるのが毛利の兵の詰所。あそこで狩り場利用の受付をするんだ。」
牛若丸が伊織に答える
「狩りをするのに受付がいるのか??」
「それはそうだよ。ここ黄金山と麓の森は毛利家の大事な税収の場だもの。狩りをして獲た獲物の4割を納めるんだよ。ちょろまかしたりしたら毛利の兵に追われるよ。ここだけじゃなく村に隣接してる狩り場なんかを利用する際もだいたい、3割ほどの獲物を村に寄付したりするんだ。それが狩人の礼儀であり、それをやらない人は嫌われて仕事がやりにくくなるんだ。」
「なるほどな~ 人間が生きるには街や村は欠かせない。そことの付き合い方も大切だということじゃな。。」
「そう言うことだね。あっ龍馬も到着したね。」
「おーい、木刀持ってきたぜ!!はよう始めようや!!長介、伊織準備はできてるんやな?」
「はい。わしはいつでも大事じゃ。」
長介がこちらを睨み付けてくる。
「余もいつでもよいぞ。」
伊織はニヤリと笑いながら長介を見る
「2人とも準備はできたようじゃな。受付の時に毛利の兵にも入店試験をすると伝えておる。始めるぞ。」
受付を終え戻ってきた鬼一が2人にそう伝える。
木刀を持った伊織と長介が向き合う。
「伊織~怪我したぁなかったら今の内に降参せい!!」
長介が伊織に吠える
「やかましいの。声がでかいのは虚勢を張っておる証拠じゃぞ。金玉の小さいやつじゃ。」
伊織がニヤニヤしながら煽る
「今までビクビクして後ろ着いてきたガキが!!昨日から頭おかしいなったんか!?ぶちのめしちゃる!!」
長介は激怒しながら伊織に突っ込み木刀を振り下ろす
「やれやれ、猪みたいなやつじゃの。」
伊織は半身になり長介の振り下ろしに木刀を添えて円を描く様に絡めとる。長介は振り下ろした勢いと伊織の木刀の動きにより回転するように勢いよく地面に叩きつけられた。
「グヘッ」
カランカラン
長介の落とした木刀を拾いながら伊織は問いかける
「長介よ、もう終わりか?」
「あほか!!ちょっと勢いつけすぎただけじゃ!!まだまだやれるわ!!」
長介は気勢をあげ立ち上がる。
「そうか。じゃあもっとかかってこい。」
伊織は長介に木刀を投げ渡し構える。
「くそが!!どうなっとんじゃ。絶対にぶちのめす。」
長介は木刀を持ち直し再度伊織に立ち向かう。先ほどの勢い任せの振り下ろしではなく、小早川屋の人間が乞食達に自衛できるように教えている剣術で伊織に立ち向かう。
「ほう?先程とはうってかわってそれらしい型になっておるの?じゃがここが隙だらけじゃぞ?」
伊織は長介の攻撃を避けたり、反らしたりながら隙をついて攻撃する。
「グハッ」
「ブホッ」
「ゴホッ」
「ガッ」
長介は攻撃を続けるがその度に伊織からの反撃にあい、ボロボロになる。
長介が絶対に勝つと思っていた乞食仲間は騒然としている。
「長介よそろそろ降参せい。これ以上続けたら仕事にならんくなるぞ?」
伊織が肩に木刀を当てながら降参を勧める。
「ふざけんな、伊織の分際でまだ負けとらんわい!!」
先程と同じ様に勢いよく突っ込み振り下ろしを仕掛ける。
「やれやれ、それは通用せんかったじゃろ?」
「同じじゃないわい。くらえっ!!」
長介は振り下ろしと見せかけ、木刀を伊織に投げる。
伊織は慌てずに木刀を払いのけ小さく呟く
「足利流 空蝉の術」
「掴んでしまえば体格の大きいわしの勝ちじゃ!!」
長介は勢いよく伊織に掴みかかった。
「とったわい!!」
「残念じゃが、それは幻じゃ。」
長介が掴みとったと思った伊織は消え横から伊織の声がする。
「首ががら空きじゃぞ。」
伊織は長介の首に木刀を振り下ろし長介を気絶させた。
「そこまでじゃ! 勝者伊織!」
しかし、最後の技は呪力による技ではないか?鬼一は伊織が呪力の技を使ったことに疑問を覚えた。
乞食達は信じられないような顔で伊織を見る。
それを見た鬼一が乞食に語りかける。
「お主らの境遇にはたしかに同情を覚える。じゃからこうして狩りに連れてきて肉などの食料を分け与えておるし、自衛の能力がつくように月に1度稽古をつけてやっておるんじゃ。じゃが、今の境遇から抜け出すには己の力でどうにかするしかないんじゃ。月に1度の稽古で他人から必要とされる能力が付くと思っておるのか?この中で稽古以外で毎日剣を降っておるやつがおるか?所詮乞食だと諦めておるのはお主ら自身じゃないのか?まずは心を鍛えよ。毎日自分と向き合え。自分に自信が持てるようになったとき、他人もお主らを必要とする。お主らは心が弱い!!以上じゃ。」
鬼一から叱咤された乞食達は下を向き考えこむ。
「鬼一殿、厳しいの」
伊織は苦笑いを浮かべながら鬼一に近づく。
「伊織様、それだけ乞食から抜け出すのは大変なのです。世間からの偏見、後ろ楯もなく日々を生きるのに大変な毎日。そんな環境に生きると周りのせいにしないと心が持たないのです。ですが、他責が当たり前になると自分が成長しません。自分と向き合った人間のみが乞食から抜け出し自分の人生を歩めます。」
「そうか。乞食の人生か。」
伊織は鬼一の言葉を聞き乞食について真剣に考えるのだった。
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