第14話因縁再び


食事を終えて狩りの準備をする。忍者の基本装備である忍び装束を牛若丸のお下がりを借りて着る。身長は龍馬、牛若丸、伊織の順だ。伊織は他の2人より一つ若い11歳であるのと乞食により栄養が足りず身長は低めである。


「いーくん、忍び装束似合ってる!!」



「そうか?牛若丸と龍馬も流石に着なれておるようじゃの。鬼一殿、鎧はつけないのか??」



「忍者は機動力を大事にしております。その為に鎧は着けず忍び装束のみか、中に鎖帷子を着るのが一般的でございます。」



「なるほどの。実用的じゃ。武士の鎧は身を守るためもあるが見栄を張る意味合いもあるからの。」



「はい。魔物相手に見栄を張ってもしかたありませんので、それに忍び装束は魔物の糸を仕様しております。なので、ただの鉄の鎧程度の強度はあります。」



「よくわかった。武器は刀でよいのか?一応槍や弓も使えるが。」



「今日は黄金山麓の森に乞食達の食料を狩りに行きます。兎型、鹿型、猪型の魔獣が狙い目なので刀よりも弓の方がいいでしょう。後は緊急様に小太刀をお持ちください。」



「あい。わかった。」



鬼一の助言を聞きながら伊織は準備を進める。小さめの和弓と腰に差せる小太刀を選び伊織は準備が完了した。


「では、まず城門まで行きましょう。そこに乞食を待たせております。」



☆☆☆☆



魔物素材屋『小早川』は広島の首都広島にある。都市広島は二重の城壁都市になっており本丸は広島城を中心に毛利家の家臣の住まいがある。二の丸には商人、職人、農民などが暮らす民の住まいになっている。そんな二の丸にある魔物素材屋『小早川』から外に出る城門はすぐ近くにある。

店の外に出て少し歩くと城門が見えてきた。

乞食達がこちらを見つけて一斉に頭を下げる。



「鬼一殿、乞食達を狩りに連れて行っておるのか?伊織の記憶にはその様な記憶はないが。」



「乞食に全体に食べさせる肉を狩ろうと思うと、我々では手が足りません。乞食達には主に森の外で解体と運搬をさせてます。後は基本的には子供は参加させません。外に出るというのは魔物に襲われる可能性がありますのである程度自衛できる人間にしております。」



「なるほどの。それで伊織の記憶にはなかったんじゃな。」



「おい!!伊織!!何をしとるんじゃお前は!!お前は連れてかんぞ!!」

ふと、乞食から見たことのある顔が見える。義輝の記憶を思い出した時滅多打ちにされた乞食の長介である。



「おぅ長介か。今日はよろしく頼む。」

伊織は気にした様子もなく軽口をたたく。



「じゃから、連れていかんと言うておろうが!!街道で物乞いをしておれ!!」



「長介よ。伊織は小早川の見習いになったのじゃ。今日はわしが見ておるから気にするな。」

鬼一が静止する。



「伊織が小早川の!?」

乞食全体がどよめき伊織を見る。



「そう言うことじゃから準備ができておるなら出発するぞ。」

鬼一は全体に号令をかける。



「お待ちください!!先生!!伊織なんかが小早川の見習いになれるんじゃったら、わしらも見習いをやれます。なあお前達!?」

乞食達は皆長介の言葉に同意を示す。




「何?? お主らわしの決定に異を唱えるつもりか?」

鬼一は腰の刀に手を当てながら凄む。




「「「「うっ」」」」

あまりの覇気に乞食達は後退る




「鬼一殿、よいではないですか。長介よ。一対一で決闘しようか?決闘の結果で鬼一殿を説得した方がはやかろう?」




「何?お前わしに勝てるつもりておるんか!?面白い!!いいじゃろう。先生是非やらせてください!!」




「伊織様………まったく戯れを。龍馬よ、店から木刀を持ってこい。ここじゃあ門兵に迷惑がかかる。森の前の解体場所まで移動するぞ。」



「やっしゃ!おもろい喧嘩が見えるで!!」

龍馬は嬉しそうに店に戻っていく。






龍馬以外の人間は先に城門を出て歩いて解体場を目指す。


荷車などを引く乞食達を後ろから眺めながらご機嫌に歩く伊織を見た牛若丸が声をかけてくる。


「いーくんなんか嬉しそうだね?」

牛若丸が疑いの目で聞いてくる。



「いいか?牛若丸よ。おれは聖人君子ではない。武士の長だったものだ。決闘、喧嘩は大好きだ。それに記憶を戻した時に滅多打ちにされて負けたんじゃ。やられたらやり返す、10倍返しじゃ。」

伊織は獰猛な顔でニヤリと笑った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る