第13話 食事と皇国の歴史


「それでは、お主らは魔獣を狩り肉を食べると強くなれるというのか?」

伊織は疑わしそうに見る



「正確にはマナを吸収すると言われております。人間は空気中にあるマナを吸収して心臓から呪力、丹田から気力を精製してます。なので戦闘などで消費が多ければ呼吸法での回復が有効なのもその為ですし、気力を練る修行中も呼吸法が基本であったはずです。これは、食事からもとれます。穀物など植物にもマナはありますが、魔獣は圧倒的に濃いマナを保有してます。もちろん強ければ強いほどです。魔物、魔獣を狩ると空気中に多くのマナが溢れるのでそのマナを一部吸収すると言われてます。もちろん基礎修行が一番大事ですが、魔物を狩り魔獣を食べることで掛け算のように上達します。」



「………理にかなっておるな。あれだけの苦労をしたのじゃ縛りを設けていたとはなかなか信じたくないがの………」

伊織は遠い目をする。



「だから、鍛練や稽古だけで剣と向き合い気力を極めたあなた様に心から尊敬の念と畏怖を覚えます。信じられない事です。師匠が自分を凡人だと思った経緯はそこでしょう。ところで、神教の教えで肉を食べないのは王家の方もそうなのでしょうか?」



「それで師匠は将軍を辞め足利家から抜ければすぐにわしに追い付く。強さを求めるならわしと来いとしきりに勧めてきたのか。

元々魔を入れないように肉を食べないのは、王家と余程信仰の強い信徒くらいじゃったらしい。魔獣の生息地はマナが濃く植物や魔獣の成長が早い。それを食べないと一気に食糧難になり人間の数は激減するだろうしな。それを京都大乱後足利家は魔が入り過ぎて呪われておると肉を立ったと聞いておる………………ッ!なるほどそう言うことか!」




「はい。おそらく三好、細川の謀略でしょう。大乱後足利家が3歳の幼子が将軍になったのを良いことに、神教を煽り肉を辞めさせて将軍が個人の力をつけるのをとめたのでしょう。肉を食べず魔物を狩らないとなれば人生をかけて向き合っても凡人なら4門を開ける事もできないでしょう。4門を開く。武士なら下段になるのは達人の領域に入ります。文字通り筋肉や骨格が達人に相応しい体に生まれ変わります。上級と下段では桁違いに強さが違います。上級止まりなら細川、三好の兵で難なく抑えれますしその為かと。それを証拠に8代将軍足利義政様が下段で達人だったと言われておりますが、その後、13代の義輝様まで達人に到達した人はいません。」



「くそっ!また、三好と細川か!! とことん弄ばれておるな!!」

伊織は吠える!!



「ですが、最後の最期に三好の鼻を明かしたのは間違いないですな。三好は鍛練と稽古しかしてないのを一番わかっていたはずです。その事からどれだけ才能があろうと下段であると思い襲撃をおこなったのでしょう。しかし、そうなってくると王家も同じ様な扱いを長年受けておるかもしれませんな。」



「ふっ三好の鼻を明かしたか、そうじゃといいがな。王家が足利と同じ??」



「はい。2012年前に生きた大和武尊は大和の歴史上最強の人間でした。これは、この国に生きるものならおそらくみなそう思うでしょう。1012年前の百鬼夜行の際も四国から攻めて来た酒呑童子を討伐した王の大和武蔵様も北海道から攻めて来たぬらりひょんを討伐した王太子の大和武聖様率いる王家の面々も時代を象徴する猛者でした。ですが1012年前から今まで王家からその様な猛者は現れておりません。これは、百鬼夜行後混乱する王家の代わりに政治を行った武士と陰陽師により、王家の力を削ぐ為の施策であり、神教で肉食を悪に変えて王家を神教のトップに置いたから起こったことではないのかと思いました。」



「神教の教義を変更する?そんなこと起きうるのか?」



「伊織様、神はおられる。それは私もそう信じております。力の弱い人間が魔物から負けず生きていけてるのも呪力、気力のお陰です。しかし、教義というのは人間が作ったものです。神に感謝し人として素晴らしい人間であろうと。大和武尊様をはじめお仲間が作ったのが初めだと言われてます。そうした善ある人が作ったのものですが、同時に人の悪意によって利用される事もあるということです。だから、どんな時代でも大切なのは神に感謝はすれど、己の人生を歩くのは己だということです。」



「己の人生は己で歩くか………。よし、肉を頂くとしよう。」



「いーくんがお肉食べて魔物を狩ったらすぐまた、8門を開けて最強になれるね!」



「牛若丸それは違う。余は剣と向き合い悟りを開き、気力を極めたのじゃ。しかし気力がまったくない今、呪力は精々一門を開くレベルじゃ。」



「そっか~あっじゃあ忍者になろうよ!」



「おっ!ええやん!伊織も忍者になってチーム組もうや!!忍者は基本三人一組でチーム作るんや。わいと牛若丸と伊織が組めば最強のチームになるで!!」



「忍者か……」



「伊織殿、実は私も勧めるつもりでした。伊織殿がもし将軍足利義輝様であるとバレればまた暗殺されるか、権力利用され籠の鳥になるかどちらかです。なので、私は自由に生きる為に大陸に渡るか、将軍時代の事があってなお、国を守る気持ちをお持ちなら忍術を覚え忍者になられるがよいのではと思ってます。」



「なるほどな、確かに今を生きる武士にとっては足利の名は邪魔か利用の対象でしかないであろうな。」

伊織は少し寂しそうにうつむく。



「伊織様、とりあえず今日1日狩りに同行されませんか?牛若丸と龍馬が狩りに行くのに同行するつもりなのですじゃ。」



「伊織、行こうや!!」

「いーくん行こう!!」

牛若丸と龍馬が期待いっぱいの目でせまる。



「よし、では着いていくとしよう。」

伊織は牛若丸と龍馬の勢いに押されながら同行を承諾したのだった。

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