第12話鬼一との出会い


「御仁、頭をあげられよ。将軍をしてたときもそのように見事な挨拶をされたことがないわ。」

深々と頭を下げる白髪の老人鬼一に伊織は声をかける。


「当然の事ございます。8門を開き神の子になられました。我が兄弟子塚原卜伝以来の快挙でございます。よくぞ剣と向き合い気力の道を極められましたな。」

鬼一の声には尊敬の念が込められていた。



「兄弟子っ!? 塚原卜伝師匠と同門なのか!?」



「はい。塚原卜伝の父が営んでいた道場の出でございます。もっとも兄弟子は17歳の時には道場の誰よりも、師匠よりも強くなりました。地元の近くにある魔物の生息地でも相手がいなくなった為に故郷を離れ、修行の旅に出られました。一緒に修行したのは一年もありません。」



「そうか。師匠らしいな。そんな年から国を回っていたのだな。だが、師匠は確かに武士の戦い方をしておった。そなたも武士なのか??」



「某も、30歳まで必死に兄弟子を追って武士として強さを求めましたが、残念ながら気力の門は4門までしかありませんでした。そこで絶望してる所を兄弟子に誘われ忍者と会いました。魔物を狩り民を守ることを条件に忍術を教わりました。」



「鬼一先生はすごいんやで。30から忍術を習って20年で6門まで開いたんや。それから里の先生になって剣術と忍術を教えたんや。今の若い特級上忍、上忍はほとんど鬼一先生の弟子なんや!」

龍馬がうれしそうに語る。



「これ!龍馬!なんて口の聞き方をしておるのじゃ。」



「御仁、良いのじゃ。新しい人生、1から関係を作りたい。しかし、師匠は忍者とも関係があったのか?」



「なるほど。かしこまりました。あの人は何故か強い人、強い魔物を見つけてきます。先々代の里長とも戦って友になったと言っておりました。その伝で紹介してもらいました。」



「本当に師匠は魔物より魔物なジジイじゃな。」

伊織は呆れたように笑う。



「もう!お話し長いとご飯冷めちゃうよ!」

牛若丸が口を膨らましながら怒る。



「先生、伊織殿先にご飯を頂きましょう。」

弁慶が水をむける



「おぉ。悪かったわい。神の子に会い年甲斐もなく興奮してしまったようじゃ。伊織様頂きましょう。」



「あぁ頂こう。」

皆が席に着き、食事を始める。



出された米と野菜と味噌汁を食べながら大皿の肉を見てるとふと牛若丸と目が合う。



「いーくん好き嫌いしたら駄目だよ?」

牛若丸が咎めるように声をかけてくる。


「いや、好き嫌いというか前世の記憶を思い出して食べにくくなったのじゃ」

バツの悪そうに伊織は答える


「え?どうして?」



「神教の教えで肉を食べると魔が入ると言われ肉を食べずに生きてきたからの。伊織に生まれてからは肉を食べてたから食べられるとは思うんじゃがなんとなくな。」



「「「ブッ」」」

伊織以外の全員が吹き出した。



「御待ち下れ!では、伊織殿は肉を食べずに8門を開けたということですか!?」



「??? 8門を開ける、極伝に至ることと肉を食べる事になんの関係があるんじゃ?剣と向き合い気力を練って巡る、そして全国から会いに来る武士と手合わせし、また自分を見つめ直す。それの繰り返しじゃ。」

伊織は怪訝そうな顔をする。



「その言い方では普段から魔物を狩る事もしてなかったということですか。 これは……先生。」

弁慶は鬼一を見る。



「………なるほど。20年前程に兄弟子にあった時、わしは凡人かもしれん。と言ってた意味がようやくわかり申した。伊織様、一門を開けた後次の門開けるために必要なことはなんですか?」



「師匠が凡人?そんなわけなかろう。化け物じゃぞ?一門を開けた後?気力を練って巡る、そして己の武器と向き合うことで悟りを開く。そうすることで気力が濃くなり濃さが一定になれば次の門を開けると言われておる。」



「その通りです。大陸では酒を蒸留するみたいだと例えます。気力も呪力も濃くなればなるほど次の門を開け、また濃くなる事ができる。しかし門を開いていきなり濃くなるわけではありません。気力も呪力も一門を開くと1%~3%程の力まで使えます。そこから鍛練して10%まで上げると次の門を開けます。しかし鍛練だけではありませぬ。魔物を狩り魔物の肉を食べる事でも気力、呪力は上がることがわかっております。」



「は?? ………はぁ!?」

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