第11話 乞食はどう生きる?
夜も深まった深夜、伊織は目を醒ます。
窓から月が見える。「もう夜か。」
昼間に目を醒ました部屋の同じ布団で目を醒ます。
日に二度も気絶するとはな。細川、三好に連なる者達に囲まれ、屋敷の中に居た前世。そんな、籠の鳥だった前世では考えられんほど濃い1日だった。
よもや乞食に生まれ変わり、そして乞食に滅多打ちにされるとは。師匠以外に一対一で負けたことはない。引き分けも数える程だ。人生二度目の敗北が乞食か。余と決闘し、負けた武士が聞いたら発狂するであろうな。「ククククッ。」
そして、弁慶殿、牛若丸、龍馬達忍者との出会いと歴史の真実。武士とは将軍とはなんであろうか?石川五右衛門の言うように元々民を王を国を守る為にできたものだ。
今は、いったい何のために存在しているのか。
余自身もだ。極伝に至り、師匠に強さの位が並んで満足したと思った。人生をやりきったと思っていたが、それでも、生まれかわってしまった。大陸の言い伝えが本当なら余は前世に悔いを残したんだろう。強さではないなら、将軍としての有り様じゃろうか。今世は悔いなく生きれるだろうか?自分がどのように生きどのように死ねば満足できるのか。
そんなことを考えていると入り口に気配がするのに気づく。
牛若丸と龍馬がドアにもたれ掛かって寝ていた。
「看病してくれてそのまま寝たか? それとも護衛のつもりだったのか?ふっ なんにせよ明日も今日のように濃い1日になりそうじゃの。」伊織は布団の上で思わず笑みを深める。
そんなことを考えながら疲れが貯まっていた伊織は再度眠りに落ちた。
☆☆☆☆
「伊織起きろーーー!!!」
「なんじゃ!? くせ者か!?」
龍馬の声で飛び起きる。
「伊織朝飯やで!!」
「龍馬………もう少し品よく起こさんか。朝から元気過ぎるぞ。」
「元気?? それがおれのいいところやからな!!」
「はぁ……もういいわ。」
「あっ伊織! 牛若丸のことおおきにな。それと突っかかってわるかったわ。堪忍な。」
「よい。お互い様じゃ。それより故郷が落武者に襲われたようじゃな。武士の長、将軍だったものとして詫びる。すまんかった。」
「やめぇやめぇ。伊織の前世の人間になんかされたわけちゃうわ。それに里の仲間にも会えた。捨てたもんやない。」
「そうか。」
「おう!じゃあ先に食堂で待っとくわ!はようこいよ。」
龍馬は走って出ていった。
「あっおい!食堂の場所はどこじゃ!……はぁ自分で向かうか。」
「もう!龍馬がおこすって言うから任したのに、ややこしい作りなんだからちゃんと案内してきてよ。」朝食の準備をしながら牛若丸は龍馬に怒る。
「だから、悪かったって喋ってたら忘れてたんや。」さして気にした様子もなく箸を持ち朝食を待ちわびる龍馬。
「ここか。朝飯を頂きにきた。」
「あっ、いーくんおはよう!昨日はありがとう!!」
「いーくん!? なんじゃそのキテレツな呼び方は!」
「え?伊織くんは長いでしょ?だからいーくんだよ。」
「伊織でよい!」
「やだよ。龍馬と被るし作者がわからなくなるじゃん。」
「作者??」
「ん?作者?今口が勝手に動いたよ? とにかくいーくんで決定。異論はたまにしか認めません。」
「はぁもうよい。好きに呼べ。」
「よしっ!!」
「伊織殿、具合は如何か?」
弁慶が白髪の老人を連れて入ってくる。
「弁慶殿、この通り。すっかりよい。そちらの御仁は?」
「剣と向き合い気力を極めた。神の子に挨拶申し上げます。鬼一と申します。」
白髪の老人が膝を付き深々と頭を下げる。
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