第10話牛若丸の可能性


「牛若丸の問題が解決できるってほんまなんか!?」

決闘に負けて放心してた龍馬が突如大声をあげる。


「忍術のことについてわからぬ。専門外だ。まぁおそらくあの呪力大きさだとお主がやった術は使えんだろう。だが、気力の方はなんとかなるかもしれん。」


「ほんまか!? 頼む将軍様!!牛若丸は散々悩んでたんや。助けたってや!」


「将軍と呼ぶな。伊織じゃ。じゃがいいのか?お前の嫌いな武士の力じゃぞ?」ニヤリと笑い煽る


「んなもん、かまへん。友達のが大事や!! よっしゃ反転の秘薬持って牛若丸連れてくるわ!!」

龍馬は走って店に向かう。


「申し訳ありません。伊織殿。龍馬の故郷の村は魔物の被害がひどく税を納めていた細川家に何度も助けを求めましたが、織田との戦いがあり助けて貰えなかったそうです。その後織田に敗れた細川家の落武者によって村は略奪にあい、そこを私達の仲間が助けました。」



「そうか。それで武士が山賊と同じか……。」



「龍馬程酷い事は中々ありませんが、魔物被害により村が被害にあい、街で乞食をしてるものも沢山おります。そんなこともあり、乞食達には食べられる魔物『魔獣』を狩ってきて、食べさせるのも忍者の活動の一つになります。」


「確かに、伊織の記憶を思い出すと魔物素材屋からの肉の差し入れが無いと生きていけなかっただろうな。」


「はい。まぁ乞食達からも情報を集めたり、見込みのありそうな者を忍者に誘ったりといい関係は築けています。」


「施すだけではないということじゃな。」


「その通りです。」


そんな話しをしてると牛若丸を連れた龍馬が走って戻ってくる。


「伊織連れてきたで!!はやく見たってや!!」


「もう!!龍馬なんなんだよ!!突然引っ張って。」


「龍馬、反転の秘薬は?」


「これや!!」

龍馬が勢いよく懐から出した薬を受け取る。


「伊織殿どのように使うのでしょうか?」

弁慶が問うてきた。


「余も気力の大きさに子供の頃苦労したんじゃ。その時に師匠である塚原卜伝に直接気力を動かして貰ったことがある。」


「他人の気力に関与できるのですか!?」


「あぁ化け物であろう? 余も師匠以外出来たものを見たことない。これは、7門を開き皆伝に至った上杉謙信でもできなかった。」


「それを伊織殿はできるので??」


「ああ、師匠の得意気な顔がムカついてな。必死に練習したらできるようになったわ。あの時の師匠の驚愕した顔は今でも忘れん。ククククッ。じゃが、この身体になってから気力が全くないんじゃ。」


「なるほど、それで気力と呪力を反転させる、反転の秘薬が必要だったわけですか。」


「そういうことじゃ。さすがに呪力で気力に関与するのは無理じゃからな。薬の効果はどのくらいもつ??」



「1時間です。その後強い倦怠感を覚えます。」



「十分じゃな。さて、牛若丸よ。話しをきいて理解できたか?後はお主次第じゃ。どうする?」


「お願いします。僕に力を下さい。」


「良いのか?お主が求める忍者としての強さではなく武士としての強さじゃぞ?」


「正直忍術には憧れはあります。でも僕は、皆を守る力が欲しい。大和皇国の民を守る力が欲しい。力の種類で忍者になるんじゃない。どんな困難からも堪え忍び、逃げず大切な者を守る者こそ忍者だ!!」

強い意思のある瞳で牛若丸が見つめる。


「いいご子息をお持ちじゃな、弁慶殿。」


「はい。ですが、牛若丸は忍者の覚悟を語ったので、ここはいい仲間を持ったと言っておきます。」


「そうか。」伊織はにやりと笑う

「よし、服を脱ぎ背を向けろ。始めるぞ。」



龍馬から貰った反転の秘薬を飲む。

心臓と丹田が燃えるようにあつい。思わず膝を着く。

「くわっ これは強烈じゃの。」


「大丈夫か!?伊織!?」

龍馬が叫ぶ


「大事ない。慣れてきた。」

龍馬が駆け寄ってくるが手で制す。

慣れてきたら確かに慣れ親しんだ気力が全身を巡る。

20分程自分のなかで鳴らした後牛若丸に向き合う。


「よしっ始めるぞ。」

牛若丸の背に手をあて牛若丸の気力を探る。

これはそうとう大きいな、9割以上気力なんじゃないか??

丹田にある気力、心臓にある呪力も基本は同じだ。何重にも囲まれている城壁都市のような物だ。だから大陸では門という言われた方をするし、陰陽師がいた時代には、大和皇国も門の言われ方が一般的だったらしい。この1番外側の門を開けると一門から次の二門までの力が使えるということだ。だが、大きければ大きいほど門を見つけるのも難しく扱うのも難しい。今からやるのは牛若丸の気力に関与して1門の場所を見つけることだ。


「うわ~なんか気力が凄い勢いで動く。」


「そうじゃ。最初は油に不純物を合わせた物のように重く動きが鈍い気力を水のように滑らかに流れるように動かすことが基本であり極意じゃ。ほら、言ってる間に門が見つかったぞ。」


「えっもう?? あっわかった!!門を見つけたよ!!」


「一門の癖に相当大きな門じゃ。練習の為に塚原卜伝師匠を初めいろんな人の門を見たが一番大きいぞ。そこらの武士の3門に匹敵する大きさじゃ。これは得られる力も相当じゃな。」


「ここからどうすればいいの??」


「一門に関しては見つけることが試練みたいなもんじゃ。今から関与をやめるから自分で門に触れてみよ。」

そうして牛若丸の背から手を離す。

牛若丸は目を閉じ門と向き合ってるようだ。


「伊織殿、ありがとうございます。」

弁慶が後ろから声をかけてくる。


「なんの、弁慶殿には助けてもらった。牛若丸には看病してもらった。それに真実を知ることができたこちらが感謝したいくらいじゃ。 」


「それでもでございます。」

弁慶は深々と頭を下がる


「開いた!!一門を開いたよ!!」

少しすると牛若丸が声をあげる。相当な喜びようだ。



「よかったの。牛若丸。」



「うん!伊織くんありがとう!! 」



そんな、溢れんばかりの笑顔に少しの涙を浮かべた牛若丸の声を聞きながら、強い倦怠感を覚えた伊織は意識を手離したのだった。

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