第8話石川五右衛門と足利義尚


8代将軍足利義政と妻の富子の元には子どもが生まれず、足利義政の弟である足利義視を養子として将軍にすることが決まっていた。しかしその後、子どもが生まれる。名前は足利義尚と言う。元気に育ち、優しく聡明な義尚は兄の義視と非常に仲が良かった。また、当時将軍の御用商人であった石川五郎の息子である石川五右衛門とも年齢が同じことから非常に親しい間柄だった。実は石川五右衛門こそ、魔物を狩る傭兵集団「忍者」の創始者だった。


幼い頃母を亡くし、体が弱かった五右衛門は、商売が忙しい父の代わりに友人である京都の山科時継の元で育てられていた。山科時継は足利義尚の芸事の先生をしており、そこで石川五右衛門と足利義尚は出会い、仲を深めていった。その時、義尚は五右衛門が体が弱い理由が気力が弱く呪力が強いことに原因があると気づき、将軍の秘密書庫に忍び入り呪力の扱い方と水遁の印「忍」「知」「刀」と木遁の印「者」「前」「陣」 を見つけ五右衛門に伝授した。


五右衛門は呪力を使えるようになり、次第に体調が良くなり、父の商売にも協力できるほどになった。その後、商人である父と共に大和皇国や大陸を訪れた五右衛門は、義尚に大和皇国の状況や世界のことを語った。その一方で、義尚は五右衛門に剣術や武道を教え、2人は非常に良い関係を築いていた。


ある日、五右衛門の話を聞いた義尚は、将軍になる兄の力になるには、民の魔物被害を減らすために魔物専門の軍隊を作る事、そして世界を巡り新しい技術を取り入れる事が大和皇国の為、兄の為になると夢を抱いた。そんな夢を聞いた五右衛門は、是非共にしたいと同じ夢を持つようになる。


だが、世界は残酷である。義尚の母富子は義尚こそ時期将軍に相応しいと周りに言うようになる。義尚は兄の方が相応しい。時期将軍は兄である。と仕切りに母を説得するが、我が息子が将軍になる夢を捨てきれない富子はとうとう東将細川勝元を頼り足利義視の暗殺を計画してしまう。

これを事前に察知した義視は西将の三好元長を頼り、とうとう合戦へと発展してしまうのだった。仕切りに和睦をと声をかける義尚だが義視からの要求は母富子の首と父足利義政の首だった為に和睦はならなかった。

そして10年にも及ぶ合戦が続き兄義視を討った義尚はこの合戦の責任をとると自害した。と歴史書には記載されている。結果的に10年にも及ぶ合戦の勝者は無しとなり、長い戦いによる細川家と三好家の確執、足利家の権威は失意する事となる合戦を京都大乱と呼ばれることになる。

友である石川五右衛門は合戦の最中何度も何度も傭兵団を結成して義尚に助太刀に行くがことごとく追い返された「余達の夢を先に追いかけてくれ。手が空いてるなら魔物を狩って民を助けに行け」と。

そして合戦が終わった後に石川五右衛門は足利義尚から手紙を受けとる。「我が友よ。この合戦にて失くなった命を思うと心が挫けそうになる。何度自分が自害して兄の天下を決めた方が楽かと思った程だ。兄の目には憎しみが宿っておった。兄を裏切った愚かな母、将軍でありながら母の暴走を止められなかった愚かな父。そして、その2人の愚かさをわかっていながら家族を切る勇気を持てない私だ。もうそちらにもこちらの勝利が届いている頃だろう。私ら家族のせいで失った命が無駄にならないよう。私は将軍になる。いつか話してくれた兄の夢を私が叶える。この合戦で失くなった兵の家族が、友が、子孫が笑って暮らせる世の中を作る。私達2人の夢は五右衛門お前に任せたい。いつか次の世代にバトンを渡した後、一緒に酒を飲みながら2人の夢の話しを聞かせてくれ。」

手紙にはこう書かれていた。しかし、その手紙を受け取った。5日後足利義尚合戦の責任を取り自害との連絡が入る。石川五右衛門は有り得ないことだと激怒する。「足利義尚は死ぬことが責任をとることだと絶対に考えない男だ! 手紙で将軍になると書いてあるのに自殺はありえない! 」

今にも両陣営に殴り込みにいく勢いの五右衛門を傭兵団の仲間全員が止める。その勢いはワイバーンを倒すときより大変だったと当時の仲間は語った。

仲間達に落ち着くまでだ。と牢に入れられた石川五右衛門は、何度も何度も手紙を読み復讐心を落ち着かせる。そして手持ちぶさたになると義尚に教わった呪力のコントロールと印を結んだ。水遁の印「忍」「知」「刀」と木遁の印「者」「前」「陣」

そして3日後牢を出た五右衛門はこう宣言する。

「今日からおれは石川五右衛門ではなく、五右衛門と名乗る。家名は絆であり力だが呪いでもある。大和王国ができた時武士と陰陽師は国を魔物から守る事こそ誇りだった筈だ。だが、家名という呪いが本質から遠ざける。家や個の利を追い求めるなら、今日改めて作る傭兵団には必要ない。本質は魔物から民を守ることだ。新しい傭兵団の名前は魔物専門の傭兵団『忍者』と付ける。友、足利義尚にもらった力、水遁の印「忍」「知」「刀」、木遁の印「者」「前」「陣」から取った名前だ。堪え忍ぶ覚悟がある者を求める。」

そうして『忍者』は結成されたのだ。


「以上が五右衛門と忍者結成時からの仲間が語った真実を語り継いできたものになります。ちなみに足利義尚様からの手紙は忍者本部のある里に大切に保管されてあります。」


「………そうか。そうか。」

伊織はただただ今の話しを噛み締めるのだった。


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