第7話足利と忍者


「弁慶殿、お帰りか。先程はかたじけない。」


「とんでもないことでございます、将軍様。」


「いやはや、苛めてくれるな。先程は殴られて混乱した後に出た言葉じゃ。将軍様など恐れ多い。」


「えっ?伊織くん、隠してるつもりだったの??」


「何がじゃ?牛若丸??」


「普通の乞食はそんな偉そうなしゃべり方しないよ?普通の乞食はあんなに武士について詳しくないよ?普通の乞食はあんなに剣術できないよ?普通の乞食が足利流の技を使えないよ?普通の乞食は「もう良いわ!」」


「あっ、将軍様ってお呼びしたほうがいい?」 牛若丸はニコニコしながら問うた。


「伊織で良い! まったく、いい性格しておるわ。弁慶殿も伊織と呼んでくれ。」


「かしこまりました。では、伊織殿と。それで、先程の龍馬の技ですが、あれは忍術と呼んでます。」


「忍術? 聞いたことないの。 足利流 空蝉の術に類似しておるが、空蝉の術は動かないし、何よりも触れられない。幻を見せるだけじゃ。蹴られた時は、本当に1人増えたように思えた。」


「実際に増えています。印に意味を持たせ、呪力を纏わせることで術が発動しております。」


「印に呪力……ッお主ら!もしや陰陽師の流れを組むものか!!」 伊織は鋭い眼光で睨み構える。


「いえ、そんなことはありません! むしろ、忍者設立と足利家には大きな繋がりがあります。」


「何?足利が関係しておるとな?」 伊織は構えを解き続きを待った。


「はい。私たち忍者の目的は、魔物被害から民を守ることです。そのための魔物専門の傭兵集団『忍者』を創立したのは、8代将軍足利義政様の御用商人を務めた石川五郎の息子、石川五右衛門です。」


「8代目様の御用商人石川。あぁ、そういえば3代目様から石川家の人間が御用商人を務めておったと帳簿で見たの。9代目様から毎年変わっておったがな。」


「はい。非常に繋がりが強かったと聞いております。石川家は大和皇国内だけでなく、大陸や魔物領域からも商品を仕入れ、足利家の望むものを集めて強い信頼を得たそうです。」


「なるほどの。それは重宝するじゃろう。しかし、何故それが魔物専門の傭兵集団、忍者の設立に繋がるんじゃ?」


「伊織殿は、京都大乱をご存じですか?」


「当たり前じゃろ。歴史的にも大きな出来事じゃし、足利の衰退を決めた出来事じゃ。忌々しいわ。」


「それを石川五右衛門の目線で話させてください。」


「石川五右衛門の?」


「はい。8代将軍足利義政様、妻の富子様の息子、足利義尚様と石川五右衛門は友人でした。」

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