第6話龍馬との決闘


「龍馬、お客さんいるんだから静かにしてよ。」


「客やと? ……なんや汚い乞食やないか。んなことより親父さんの一大事やて!!早よ助けにいくで。」


「なに言ってるの。父さんは客として毛利元就様に呼ばれてるんだから滅多なことおこらないよ。」


「か~ 牛若丸お前わかってないで。武士なんて小綺麗にした山賊や。今頃親父さんが袋叩きされてたらどないすんねん。」


「武士が山賊じゃと……? 今の言葉取り消すんじゃ」


「なんや、乞食?? 武士に憧れがある口かい。やめとけやめとけあれは屑がなるもんや。」


「取り消す気はないんじゃの? …… よかろう。表に出ろ。武士がなんたるか教えてくれる。」


「ブッハハハ 乞食が武士を語るんかい。面白い。毛利乗り込む前の準備運動や!!」


「ちょっと!! 2人とも止めなよ。伊織くんは怪我してるんだよ??」


「これくらい大したことない。それより牛若丸よ審判を頼む」


「そう言うことやな。牛若丸頼むで。」


「もう!! 知らないよ!!」



~魔物素材屋「小早川」裏庭 ~


裏庭は訓練用に広く作られており様々な武器が並んである。その中から少し短めの木刀を伊織は選んだ。


この身体の大きさならこのくらいの長さが丁度良いか。

そう考えながら伊織は気力を探る。

やはり殴られ前世の記憶を戻した時も感じたがこの身体に気力は全然ない。これは普通では有り得ないことだった。どんな人間も大小あれ気力、呪力どちらもある。前世は気力が8割呪力が2割といった感じだった。それが今世では気力が全くない。そのかわり呪力が圧倒的に大きい。それこそ気力がすべて呪力に変換したように感じるほどだ。


気力による身体強化などの術を使えないとなるといよいよ武士と呼べんな。長年修行し磨いたものがなくなった事で大きな喪失感を感じる。

だが、それでも負ける事はないとハッキリ言える。気力の術と同じように、いやそれ以上に磨いた剣術が伊織を支える。


「負ける準備できたんやな?」龍馬が挑発する


「二刀流か。それはナイフか?」


「これはクナイちゅうもんや。1本に減らしたろか?」


「問題ない。はやくかかってこい」


「乞食の癖に偉そうな。牛若丸、合図頼むわ。」


「2人とも。身体にあてないようにね!! いくよ? 始めッ!!」



龍馬は一瞬で距離を詰め、クナイを振り下ろす。彼の動きは圧倒的なスピードだった。しかし、伊織は冷静だった。木刀を持つ手に全く揺らぎはない。


伊織はクナイの軌道を冷静に読み取り、木刀を正確に合わせる。その一撃で、龍馬の攻撃はすべて防がれた。龍馬の速さに対して、伊織の剣術はまるで完璧に調和した舞のように正確だった。


「なんや、乞食がここまでやるんか?」龍馬は歯を食いしばりながらさらに攻撃を続けた。


「見せてやる、武士とは何たるかを。」伊織は冷静に応じ、木刀を流れるように動かした。


龍馬の攻撃は次々に防がれ、逆に伊織のカウンターが鋭く入る。その度に、龍馬は一歩、二歩と後退した。攻撃の度に、彼の顔に焦りが浮かぶ。


「どうした、もう終わりか?」伊織が挑発するように言い放った。


「まだだ!」龍馬は力を振り絞り、全力で攻撃を仕掛けた。しかし、その一撃も伊織の木刀に完璧に防がれ、逆に彼のクナイがはじき飛ばされた。


「まだや、わしが武士野郎に負けるかいな。とっておきや!!」

龍馬は印字を結ぶ 「者」「前」「陣」

「木遁 分身の術!!」


「いくで!! 武士野郎!!」

龍馬が2人に増えて伊織に猛スピードで迫る


「なに!? 足利流 空蝉の術か!? いや違う。これはあの時の黒装束と同じ技か!!」


伊織は驚愕しながらも龍馬の攻撃を止めるが、横から分身体の攻撃で蹴り飛ばされる。


この戦いで初めて攻撃を受けた伊織だが、そんなことはどうでも良いほど疑問と怒りに溢れていた。

「聞きたいことができた。小僧相手に悪いが少々手荒にいくぞ。」 伊織は鋭い眼光を向ける。


木刀を地面に刺し弓を引く構えをとる

「足利流 空弓の術」


何も持っていない筈の伊織は弓を引く動作をする。空気は矢になり、分身体に突き刺さる。

パンッ

分身体が消え再度龍馬一人になる。

「なんやそれ!?」 龍馬はひどく動揺した。


「次はお前じゃぞ。」


「ちょい待ち、参った。降参や降参!!」


「そうか、じゃあさっきの技について教えてもらおうか。何故お主があの技を使えるんじゃ」


「その事については私から説明させてもらいます。将軍足利義輝様。」


後ろから声がした、伊織が振り向くと自分を助けた大男弁慶が立っていた。

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