第1話剣豪将軍足利義輝

不穏な風が吹き抜ける夜。 将軍足利家の武家屋敷の回りは謀反者100人が囲んでいた。剣豪将軍と言われた足利義輝は刀を手に持ち静かに立ち上がる。ふと自分の違和感に気づく


「気力の巡りが悪い、毒か。」


どうやら食事に気力を乱す毒が混ぜられていたようだ。

無味無臭で気力のみを乱す。毒味役に気付かれず幼い頃からさまざまな毒の耐性をつけて生きてきた余に効く毒とは謀反者も本気と言うことか。




「出てこい将軍足利義輝!! 世が乱れる元凶を三好家三好義継が討ちにきた!!」



「世が乱れるか、面白いことを言うもんじゃ。世が乱れる一番の原因が細川と三好の争いだというのは、その辺の童子でもしっておろう。当主の西将三好長慶は東将細川晴元を討ち取った時深傷をおったと聞いた。絶命したか?」



「やかましい!! 者共やってしまえ!!」



やはり三好長慶死後の後継者争いの為に暴走したか。

大和皇国の京都から東を纏める東将細川晴元、西を纏める西将三好長慶。両将ともの圧倒的なカリスマで纏めておった2人が死んだことで、両家とも後継者争いで荒れることだろう。三好の犯行と言うことはこの屋敷内に味方はおらんのじゃろうな。



「まあ良いわ 。余は三好も細川も好かん。やっと斬り捨てる理由ができたわ。」



内気にて身体強化した三好の兵が次々と襲いかかってくる。それを見極め必要最小限の動きで避け斬りつける。避けては斬る。避けては斬る。

気の乱れにより内気による身体強化もままならずとも相手の動きにあわせ切り捨てる




「三好家の精鋭兵10人を毒が回りうまく気力を使えない状態で簡単に斬り捨てるとは、剣豪将軍の名は伊達ではないの。実戦を知らず、屋敷に籠り訓練だけをやっておる名ばかりの剣豪将軍だと馬鹿にしておったのだかな。」



「この程度で精鋭とは三好は長慶以外は大したことのない集団か?内気による身体強化も外気による防御もお粗末じゃ。刀に気力を纏わずとも愛刀の鬼丸国綱で撫でるだけで簡単に倒れよるわ。」




「ざれごとを。所詮多勢に無勢だ。弓隊構え!!放て!!」



屋敷を囲った三好の弓兵から一斉に矢が放たれる。



「足利流 空蝉の術」


四方八方から放たれる矢が足利義輝を射るが幻のように消える。伝説の虫空蝉が殻を残して逃げるように。



「次はこちらから行くぞ。」



義輝は屋敷の障害物をうまく利用しながら弓隊を斬り込む。10、20、30周囲を囲っていた弓隊とそれを守る剣士を次々と倒していく。



「化け物か、、、この数の上級武士達だぞ。足利義輝は上段に至っておるとでも言うのか。」



順調に敵を斬り倒していた時だったふと首に痛みがはしる。気配がない後ろからの攻撃だ。振り向くと黒装束の男が吹き矢を構えていた。一足で近づき切り捨てると煙のように消える。


「なんじゃと?足利流 空蝉の術か??」


足利本家のみに伝わる技はいくつかある。足利本家は余と武の才が無かった弟のみのはず。 余以外に使える人間がいると思えぬ。



「空蝉の術じゃなく、分身の術さ。空蝉の術と違い実物が存在する上位互換だよ。初めまして将軍足利義輝殿 足利に奪われた物を返してもらうよ。代々将軍しか入れない秘密の書庫の場所を教えてもらおうか。」



「何者やお主? 三好の者ではないの。」



「あぁ下郎達なら代わりに始末しといたよ。もう少し将軍殿を弱らせてくれると期待したんだけど全然相手になってないからね。」




気がつく三好の者はすべて倒れ、周りに黒装束の男が5人に増えていた。



「うまいこと毒を盛ってくれたみたいだし及第点かな。そろそろ吹き矢の毒もまわる頃じゃない?」



「なんじゃと?、、、ゴフッ、、、!」

体が焼けるように熱い。

腹から喉をとおって熱いものが溢れてくる。




「無理しないほうが良い吹き矢の毒は少量でも食事の毒と混ざると猛毒になる特別な毒だ。動くと死を早めるよ?ここに解毒薬がある。さあ早く秘密の書庫の場所を言うんだ。」




「ふっ、、、古今東西毒をもちいる卑怯者が言う約束ほど信じられない者はないわ。」


体は熱く血は止まらん。今にも死にそうだが、吹き矢の毒が混ざった時から気の巡りは今までで一番良い。

今なら師(塚原卜伝)の領域に入れる極伝に至れる。今にも死にそうな体を無視し気力を巡る。


武士の長である将軍として刀に生きてきた。

京都では細川家と三好家が天下争いをし地方でも武士同士争いがおきている。世の中が乱れてるのは自分に力がないからだと。師(塚原卜伝)に並ぶ事ができれば自ずと足利の元にまた武家は集まるとそう信じていた。


結局将軍として皆を纏めることはできず死ぬことになりそうだ。だが、1人の武士として最強である師(塚原卜伝)に並ぶことができる。それで十分だ。これ以上何もいらない。青白い気力が全身を包む。それが手元に集まり刀の形を成す。



「それは、、、霊気、、、馬鹿な八門の門を開けたのか!!」

黒装束の男はここにきて初めてうろたえる。



「名も知らぬ卑怯者よ。感謝するぞ。毒のお陰か火事場の馬鹿力か人間としての最高峰に至る事ができたんじゃ。自分の力でないのが口惜しいが長年の夢が叶った。礼として苦しまないように一撃で殺してやろう。」



「奥義 一之太刀」



青白い気力の刀を一文字に斬る黒装束の男の体は上と下でずれるように崩れ落ちた。



バサッ

義輝は力尽きたように倒れ込んだ

「はぁはぁはぁ、、、、刀を降るときは嫌な思いを振り切る為に降っていたんじゃがな。最後の最後に悪くない気持ちになれたわ。、、、満足じゃ。」




剣豪将軍足利義輝死す。

三好の謀反により命を落としたが謀反に来た100名を斬り捨てる離れ業をしてのけたという。剣豪将軍の名に相応しい最後だった。体の傷は首に針が刺さっており。体から毒が検出されたことにより毒殺だったと言われる。翌日足利義輝の死体を見つけた家臣は死に顔が笑顔であったと話した。享年30歳






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