十一灯

カランコロン.....

店主「いらっしゃい。御好きな席へどうぞ。」

子供「わぁひろーい、ここはなんのおみせなの?」

店主「ここですか?ここはですね。御食事屋さんですよ。」

子供「御食事屋さん?じゃぁレストランだぁ。」

店主「そうですよ、レストランです。美味しい物沢山作るので、是非食べていってくださいね。」

子供「わぁい。おいしいのたべたーい。」

店主「好きな食べ物はありますか?」

子供「うーん、カレー。」

店主「カレーですね。かしこまりました。」

子供「わぁい。カレー、カーレー!」

女性客「フフ。」

子供「おねぇさんもカレーすき?」

女性客「う....うん。好きよ、美味しいもんね。」

子供「うん!おいしい。」

子供「おねぇさんもカレーすきだったんだね!」

女性客「私の事知ってるの?」

子供「うん、しってるよー。」

女性客「ほんと!?教えてほしいんだけどいいかな?」

子供「うーん、しってるけどおねえさんとは話したことないんだよ?」

女性客「そ、そうなの?」

(どこかですれ違ったとかかな.....)

子供「うん、ボクのヘヤのとなりのヘヤでね。ずっとネてたから。」

女性客「え?それってどういうことか教えてくれないかな?」

子供「えっとね。ボクからだが弱くてね。ずっとびょういんにいたんだ。」

子供「それでね。さいきんとなりのヘヤにあたらしいひとがきて、そのひともガンバってるっておしえてくれて、あいにいったんだけど。」

子供「おねぇさんずっとおきないし、こえかけてもへんじないから......」

(私....今病院にいるんだ....。)

女性客「そうなの.....。ごめんね?」

子供「うぅん。おねぇさんもがんばってたんだもんね!」

女性客「えっと....うん。そ、そうだよ。頑張ってたの!」

子供「ボクとおんなじ!」

女性客「同じだね。」

店主「あら、仲良くなったのですね。」

子供「うん!おねぇさんとお友達になったの!」

店主「お友達出来て嬉しいですね。」

子供「うん!」

店主「こちら、甘口カレーですよ。」

子供「わーい、カレー、カレー!」

女性客「私も食べていいんですか?」

店主「良かったら、一緒に食べてあげてください。」

店主「この子もその方が嬉しいと思いますよ。」

子供「おいしいね!」

女性客「....そ、そうね。美味しいね。」

店主「どうでした?何か自分の事、思い出しましたか?」

女性客「えっと.....まだ自分の事思い出せてはいないんですけど.....あの子が言うには私病院にいるらしくて。」

店主「とりあえずは、生きてらっしゃるようで良かったですね。」

女性客「はい.....。これで戻れるのでしょうか?」

店主「一応入れ物があることはわかったのですが、あなた自身が思い出せていないとなると.....。」

女性客「そうですか......。思い出せるように頑張ってみます。」

店主「とりあえずは、良かったじゃないですか?」

女性客「そうですね。」

子供「なにかいいことでもあったの?」

女性客「うぅん。何でもないのよ。カレー美味しい?」

子供「うん!」


子供「ごちそうさまー!」

女性客「ご馳走様です。」

子供「それじゃぁおねぇちゃん、またね。」

女性客「そうね、またね。」

店主「それでは、ご案内しますね。忘れ物は御座いませんか?」

子供「うん!、てんいんさんも、げんきだね!」

店主「はい。それでは、またのご利用をお待ちしております。」

子供「ばいばい!」

女性客「ばいばい.....。」

カランコロン.......

女性客「...........」

店主「納得いきませんか?」

女性客「少し.....。」

店主「それでも、私たちが出来ることは悔いの残らない選択をさせてあげることと、料理を提供してあげること、そして話を聞いてあげることだけなのです。」

女性客「............」

店主「お客様も何かお困りの時は、私どもにお話しください。」


女性客「........はい。ありがとうございます。」

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