十灯

ガタンゴトン.......ガタンゴトン.......

「この電車は、食×方面行きDEす。次は〇世、×〇。お出口は川××ですので、御足モと弐ご注意くダさイ。御乗換え之際は、出口とハ反対ガわでス。」

ガタンゴトン......ガタンゴトン.......

女性客「うーん......」

「まもなく×〇に到着いたします。乗り降りの際は御足もとにご注意ください。」

女性客「私....寝てた?」

車掌「お客様、ここが終点です。」

(そんなに寝てたの......さっきまで昼だったのに。)

女性客「す、すみません。すぐ降ります。」

車掌「御足もとにご注意下さい。」

(なんだろう....あの人ずっとニコニコしてて気味が悪い。)

女性客「え。ここどこ?」

女性客「あのー、すみません。誰かいませんか?」

(なんで、駅なのに誰も居ないの?)

(それに駅の名前も見えないし。)

女性客「そうだ、携帯で。」

(え、電波がない.....。)

(近くのお店とか.......。)


ちりんちりん.......

店主「いらっしゃいませ。御好きな席へどうぞ。」

女性客「えっと、すみません。私食べに来たとかじゃなくて、ここって何処ですか?」

店主「あぁ、ここですか?ここは食堂ですよ。」

女性客「えっと、そうじゃなくて、この街の名前というか、場所って何処ですか?電車から降りたら、知らない場所で。」

女性客「駅の名前もわかんないし、誰も居ないしで。」

店主「そうでしたか、それは大変でしたね。ここはいわゆる、幽世という場所で、人間でいうところの"死後の世界"とでも言いましょうか。」

女性客「じゃぁ私って、死んだんですか?」

店主「自分の最後の事を覚えていませんか?」

女性客「えっと、電車に乗ってて、寝ちゃったことまでは覚えてるんですけど。」

店主「そうですか、とりあえず席に座って落ち着きましょう。」

女性客「は....はい。」

店主「お腹も空いているようなので、何か食べ物も持ってきますね。」

女性客「ありがとう....ございます。」


店主「こちら、オムライスです。飲み物は麦茶でよろしいですか?」

女性客「はい、すみません。ありがとうございます。」

女性客「えっと....その。」

店主「どうしましたか?」

女性客「私、どうしましょう。」

女性客「その、行く場所もわからないし。」

店主「そうですね。あなたはどうしたいですか?」

女性客「その、出来れば戻れたりとかってできますか?」

店主「そうですね、戻れるかどうか試してみるわけにもいきませんし。」

女性客「試してみることもできるんですか?」

店主「はい、ただ戻る入れ物が無かった場合、あなたは現世を永遠に彷徨ってしまうことになってしまいます。」

店主「なので、おススメはできません。」

店主「他に方法があるとすると、あなたの最後をあなた自身で思い出していただくか、他の者に教えていただくかですかね。」

女性客「.....他の者にですか?」

店主「はい、ここにはいろいろな方が来ますので。その方々にあなたの事を聞いてみるのはいかがでしょうか?」

女性客「その.....それなら申し訳ないのですけど、しばらくここにいてもいいですか?」

店主「大丈夫ですよ。」

女性客「えっと、その何かお手伝いとか出来ることがあったらお手伝いもしますので。」

店主「フフ、ありがとうございます。でも、あなたもお客様なので大丈夫ですよ。」

店主「気にしないでゆっくりお寛ぎ下さい。」

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