六灯

ちりんちりん....

店主「いらっしゃいませ。御好きな席へどうぞ。」


お婆さん「............」

お婆さん「ご丁寧にどうもぉ。それじゃぁこちらの席にしようかねぇ。」

お婆さん「よっこいしょ。それにしても、綺麗な店やねぇ。」

お婆さん「こがいなとこに入ったのはいつぶりじゃろ。」

店主「こちらメニューになります。」

お婆さん「ありがとねぇ。それじゃぁ...........」



お婆さん「これにしようかね。」

店主「畏まりました。」

お婆さん「ねぇ店主さんや。あの子は............。」

店主「はい、ご案内いたしました。」

お婆さん「そうかい、そうかい。恨んでないといいんだけどねぇ。」

店主「恨んではいませんでしたよ。それともしあなたに会えたら。」

「せんせい、ありがとうとってもうれしかった。それと、せんせいげんきになってよかった。」

店主「と、伝えてほしいと頼まれました。」

お婆さん「..........。」

お婆さん「あの子は.......幸せだったのかい。」

店主「はい。幸せだったと思います。」

お婆さん「うらんで.....なかったのかい。」

店主「はい。」

お婆さん「私が不甲斐ないばかりに、あの子のことを助けてあげられなくて.....。」



お婆さん「助けてあげるって、やくそく....したのにねぇ。」

店主「それでも、あの子は恨んではいませんでしたよ。」

店主「とおいところにいっても、せんせいはがんばってるんだって言っていました。」

店主「あの子にとってあなたの存在はとても大きく、そして幸せな時間だったのでしょう。」

お婆さん「そうかい、そうかい.....。あの子は......"幸せ"だったのね。」

女性客「私が入院してる間にあの子が亡くなったって聞いて....とっても後悔したの。」

女性客「なんで私はそばにいてあげられなかったんだって、私は先生失格だって。」

女性客「あの子が夢に出てきた日には、何度も助けてって.....。どうして助けてくれないのって........。」

女性客「どうして周りの人は助けてあげなかったんだって、当たり散らしたこともあったんだけど....。それでもずっと後悔し続けていたの。」

女性客「でも、違ったのね....。」

店主「はい。それと、あの子はあなたのことをとても心配していらっしゃいましたよ。」

店主「とても泣き虫な先生だって。」

女性客「そうね.....。でも....」

「先生は大人で強いのよ。だから大丈夫.....。何か困ったことがあったり辛かったらいつでも相談しなさい.....。絶対.....今度は何処にいても助けてあげるから。」

女性客「って伝えてあげなきゃ。」

店主「そうですね。伝えてあげてください。」


店主「ハンカチをどうぞ。」

お婆さん「ありがとねぇ。この歳になると涙がもろくてねぇ....。」

店主「それでは、料理を御運びいたします。」

お婆さん「ありがとねぇ。」

店主「こちら...............。」



お婆さん「ご馳走様でした。それじゃぁあの子が待ってるといけないから、そろそろ行かないとねぇ。」

店主「ご案内いたします。」

お婆さん「よっこいしょ。」

お婆さん「店主さん、あの子の事教えてくれてありがとねぇ。」


ちりんちりん.........

「せんせい?」

「はい。先生ですよ。」

「せんせい、おつかれさま。」

「って、もぉせんせい、また泣いてる。」

「先生は大人で強いのよ。だから..........」

「今まで、ありがとう......」





「それにしても懐かしい料理を作ったよ。」

店主「そうですね。以前の子供のことを覚えていますか?」

「どの子供だ?」

店主「あなたが変な料理名だといった子のです。」

「あぁ。それでか。ほとんど同じ料理だったな。」

店主「そうですね。」

「それじゃぁ、さっきのが.....。」

店主「そうですよ。」

「会えたんだろうか。」

店主「それはわかりませんが、きっと会えたと思いますよ。」



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