三灯

カランコロン....

店主「こんばんわ、僕一人で来たの?」

子供「うん.....」

店主「そっか...........」

店主「何か食べる?」

子供「ううん....いいよ。おなかすいてないもん.....」

ぐぅ~

子供「..........」

店主「こっちおいで? 持ってきてあげるから。」

子供「でも....僕、お金もってないよ......」

店主「大丈夫よ。お金のことは気にしなくていいから今まで食べられなかった分も、いっぱい食べきゃね?」

子供「..........」


コト.....コト......

店主「はい、どうぞ召し上がれ。」




子供「ほんとうに食べていいの?」

店主「良いのよ。」

店主「これはね。あなたの料理なのだから.....いっぱい食べなきゃね?」

子供「僕の?」

店主「そうよ。これはあなたのための料理なの。」

店主「ここの食堂はね?その人だけの。その人のために作られた料理をその人に食べてもらう食堂なの。」

子供「すてきだね。」

店主「フフ....そうかもね。」

子供「せんせいみたい。」

店主「先生?」

子供「うん。せんせいはね。僕のためにないしょでごはんをつくってくれるんだ。」

子供「それでね。いつもだいじょうぶ?ってきいてくるの。」

子供「だいじょうぶなのに。へんだよね。」

店主「そうかもね.....」

子供「いっつもね。だいじょうぶってきいてくるの。」

子供「そしてね。なきむしなの。」

店主「泣き虫なの?」

子供「うん、それでね。せんせいだいじょうぶ?いたいの?ってきいたらね。」

「先生は大人で強いのよ。だから大丈夫!何か困ったことがあったり辛かったらいつでも相談しなさい。何処にいても助けてあげるから。」

子供「っていうんだ。せんせいないてるのに、おかしいよね。」

店主「..........」


子供「でもね。せんせいいなくなちゃったの。」

店主「そうなの.....」

子供「ほかのせんせいがね。しばらくせんせいとおいところにいってるんだって....」

店主「そう....それは、残念ね。」

子供「ううん。ちがうよ。ざんねんじゃないよ。せんせいがんばってるもん。」

ガタ.....

子供「ごちそうさま!」

店主「お粗末様でした。美味しかったですか?」

子供「うん!」

店主「それじゃぁお送りするからね。忘れ物はないかな?」

子供「あ....もしね。せんせいがきたら、ありがとうとってもうれしかったってつたえてほしいんだ。それからね....」

店主「かしこまりました。お伝えしておきますね。」

           ・

           ・

           ・

「それにしても変な料理名ばっかりだったな。」

店主「そうでしょうか? あの子にとってはあれが、人生で全てだったのでしょう。」

店主「例えそれが、先生と一緒に食べた運動会のお弁当。だったとしても、あの子にとっては一番の宝物で、思い出だったのでしょう。」

「そうか。それで、先生とか言ってたか、そいつは大丈夫なのか?」

店主「さぁ。どうでしょう.....立ち直れるかどうかは私には関係ありませんが、きっと大丈夫なのではないでしょうか?」

「どうしてだ?」

店主「あの子が見守っていてくれるので。」













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