第4話

ずっと引っかかってることがある。


今の俺には家族というものがない。あれは、中学2年の頃だ。俺が塾から帰ってくると、お母さんも、お父さんも倒れていてすごい量の血が出ていた。どうしたら良いのかわからず、とりあえず警察に通報した。それからのことはほとんど覚えてない。が、たくさん話を聞いたからわかりはするけど、思い出したくなかった。当時、急に出てきた暴力団【品川組】がいた。そのメンバーの1人が俺の両親と口論になり、家に上がっていたため、包丁で刺し殺されたらしい。俺が通報する30分前の出来事だったらしい。その後俺はしばらく家から出れずにいたためカウンセラーが付いていたが、何も話さなかったらしい。


しばらくたっても、貰ってくれる人もおらず一人で暮らしてきた。だんだん話せるようになってきたので、今は生活に困っていないが、思い出すと誰ともかかわらず生きていきたいと思った。でも高校で過去を知りたがる人や、気にする人がいなかったため楽に過ごせていた。まさか、ここで地雷を踏まれるとはな、、。




次の日。俺はいつもより早くに目が覚めた。昨日の夜から胸の奥が苦しくってそのまま寝てしまったのだ。夜中もうなされていたのか布団が汗でびしょびしょだった。それでも普段と変わらないような朝ごはん、準備を終わらせ、家を出た。


彩音の家に10分前に来てしまった。チャイムを鳴らそうとしたとき


「あっ、おはよう」


「おはよ」


「もうちょっと待っててくれる?」


「ちょっと早いから、ゆっくりで良いよ」


「ほんと?!ありがとう」


俺の今の顔死んでなかったが心配だった。


「行ってきまーす!おまたせ!」


「じゃあ、行こうっか」


「うん!」


「何か良いことでもあったのか?」


「なんで?」


「いつもと雰囲気も違うし、なによりテンションが高い」


「あぁ、バレるの早かったか~」


「どういうこと?」


「実はさ、初彼氏だからうれしくって」


「そういうことね」


「寿一君はいつも通り?よりテンションが低いような」


「そ、そんなことないよ。俺初彼女だからうれしいよ」


「それにしては低いよ。大丈夫?彼女だから相談してね!」


「だ、大丈夫だよ!相談するときはちゃんとするよ」


危なかった。俺の過去はだれにも理解されないし、同乗されたらキレる可能性があった。


「彼氏と学校に行くって新鮮で良いね。なんか青春って感じがする!」


「そうだね」


「学校ではどうする?」


「どうするって?」


「話すのか放課後とかだけのかかわりにするのか」


「あ~、放課後とかの限られた時間でどう?」


「おっけー」


2人でクラスに入り、お互いうなずいて席に着いた。


「おはよう!今日早いね!」


登校してきた朝子が話しかける


「おはよう。なんか早くに目が覚めちゃって、、」


「そっかー、無理はしないでね!」


「おう!」


朝子と話すと、気持ちが少し楽になっていた。


今日は特に何事もなく授業が終わった。最後の時間だけ爆睡していたがそれ以外は何にもなかった。


「最後、気持ちよさそうだったね!私まで眠くなったよ笑」


「気づいたら授業終わりのチャイムだった、、」


「ノート貸そうか?」


「良いの?」


「明日返してくれれば良いから」


「じゃあ借りるね!ありがとう」


どれくらい書くのかわからなかったから、覗いてみたが今日はやけに多い。めんどくさいが借りているものだから、ちゃんとやろうと思った。帰りのホームルームが終わり、彩音の委員会を待っている間にノートを少しでも進めていた。ちょうど半部くらい進んだところで、彩音が戻ってきた。


「待っててくれたの?」


「ちょうどノート書けてないところ写してたから」


「そっか、もう大丈夫なの?」


「残りは帰ってからやるから帰ろう!」


「おっけー」


こんな日々が続けられるように努力はしているが、初めての恋人なのでどうするのが正解かわからなかった。が、問題はまだ始まってすらいない。


「じゃあまた明日?」


「ごめん!!明日はやく行かなきゃいけなくって、、」


「そっか。まぁ学校で会おう」


「うん!ごめんね~」


それから一人歩いていると、


「今の彩音さんだよね?」


突然、朝子が後ろから話しかけてきた。


「びっくりしたぁ」


「ごめんごめん。2人は付き合ってんの?」


「えっ、、なんで?」


「よく朝一緒に来るし、帰ってるよね?」


「そうだけど、、」


「けど、なに?」


「関係ないよね?」


「、、」


「今までもついてきたってことで良いんだよね?」


「うん、、どんな人と関わってるかが知りたかったから」


「そっか、、」


「ごめん」


まさかの出来事に戸惑いを隠せない2人。俺の家の前に着いたとたんに、滝のような雨が降ってきた。さすがにこの雨の中朝子を返す勇気はなかったため、一旦家にあげた。


「豪雨がおさまるまではゆっくりして行って」


「ありがとう、、」


それからしばらくは一言もしゃべらなかったが、俺はノートを終わらせたので返した。


「ノートありがとう。助かった」


「お役に立てなのなら良かったです」


「雨止みそうにないけど、まだ待っとく?」


「親に連絡はしたんだけどそれっきり」


「鍵あるなら、送って行こうか?」


「さすがにそろそろ時間も遅くなるし」


「お願いしても良い?」


「わかった、ちょっと待ってて」


俺のレインコートと傘を朝子に貸し、支度は終わった。


「よし、行こうか」


「うん。これありがとう」


「濡れるのを最小限にしないとな、後々めんどくさいし」


「助かります」


それきりその日は会話せず、朝子の家の前に来た


「家ここだから。」


「そっか、じゃあまた明日」


「うん。助かったわ、、レインコートとか明日返すでも良い?」


「かまわないよ。最近使ってなかったやつだから」


「そうだったんだね、、じゃあ明日学校で」


「じゃあな」


次の日の学校生活からは今までと同じように関わってくれた。だんだん俺も今まで通り話せるようになったため、解決したといえるだろう。ただ、俺が馴れ馴れしく女子と話してるのが気に食わない者もいた。

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