第2話
そんな日が何回かあったが、その後は吹っ切れたのか何事もなかったように日々を過ごしている。俺は女子との関りがないままここまで来たからこういう時にどう対応するのが正解かわからなかった。だから、関わらないでいたのだ。ただ、さすがに心配だから友達の陽輔ようすけに相談してみた。
「女子が一人でいるときいつもと雰囲気が違ったら何かあったのか聞くべき?」
「まぁ聞いてみて隠すようなら深堀せずにいるべきだし、そこで相談されたり助けを求めるようならそばにいてあげるべきなんじゃない?朝子の場合はとくにな」
なるほどって思った。陽輔は朝子と幼稚園からの幼馴染で昔から関わってきたそうだ。
「朝子はそうなると話はしないけど、寄り添ってやると安心するって言ってたぞ!」
「またそうなったら助言通りやってみるよ」
「今からでも遅くはないと思うから聞くだけ聞いてみたら?」
「放課後にでも聞いてくるわ!ありがとな」
さすが幼馴染だよな、いろんなことを知ってる。ただ心配もあった。俺が好きってことになってないかだ。今好きな人をつくろうと思ってないのに勝手にそうなってたらと思うと感じたことのない不快感に襲われた。
「気を付け!礼!さようなら」
やっと一日が終わったが今日はこれからが重要なんだ。
「一緒に帰っても良い?」
「えっ、、?わたしと??」
「うん。学校以外で話してみたいな~って思って」
「なるほどね、良いよ。私も寿一くんのこと気になるし」
なんか聞きにくくなってしまったような気がした。あんまり気にしてもしょうがないからと自分に言い聞かせて帰ってた。
「動物好きなんだね!今度さ、一緒に動物園行かない?」
「良いの?俺なんかで。友達といかないの?」
「なんか寿一くんだと話しやすくって、気疲れしないから笑」
温かい気持ちになった。のと同時に聞きやすくもなった気がした。
「あ、あのさ!今日帰るの誘ったのって理由があって・・・」
「気づいてないと思った?でも何のことが聞かれるかわからないんだよね。今日誘ってくれたから色々話してみると面白いし、楽しいからそのこと忘れちゃってた笑」
「そっか。俺はさまた演じてんのかなとか思った。」
「演じる?なにを?」
「友達と話してる時、明るくふるまってたのに一人になると暗いというか、落ち込んでいるみたいな感じがしてたから、今も演じてるのかな~って」
「気づかれてたんだ、、」
「うん、、」
「よく気が付いたね!実はさ、人間関係ってどうすればうまくいくとか調べたりしてたらガタが来ちゃって、最近一人になると疲れが全面に出てるのよね」
「そっか、、」
「でも、寿一くんは良い意味で気を使わなくて楽なの。」
「だから動物園を誘ってくれた?」
「それもある。けど一番は陽輔以外の男子と出かけてみたかったの。だめかな?」
女子のこのセリフだけは反則だろ。断りにくい。けど事前に陽輔から聞いてた情報と違っていたけど、勇気出して言ってくれたんだ。
「俺で良ければ行こう」
「ありがとう。いつが良いかな?」
元気になったみたいで良かったとホッとしてる。
動物園当日。休みの日だからか子供連れの家族が多いが、みんなマナーがしっかりしている。そんな中朝子さんは、めっちゃ目がキラキラしている。学校の時や2人でいる時とは違うから新鮮。
「猛禽類ゾーンだって!!珍しいよね!行こ」
たしかに動物園に猛禽類ゾーンは珍しい。が、ここまで子供みたいに喜んでる女子ってかわいいんだなと思いながら追いかけた。
「かっこい~!あの鷹さ寿一くんに似てない?」
「どういうところが似てる?」
「なんか周りと関わらないようなところかな~?まだ学校始まってから2カ月くらいしかたってないけど」
「あんまりそこは意識してないけどね。昔の癖で人と関わるのを避けてるのかな」
「そっか、、でも大丈夫でしょ!意外と面白いし」
「面白いか、、ありがと。続き見よ!」
「そうだね!!」
俺はしばらく純粋に動物園を楽しめなかった。昔のことを思い出してしまったのだ。
俺はあの時、ペアとか作っていなかったため
「カッコつけてやんの、すかしてんじゃねぇ、ダッサw」
などと言われたが、かかってきたやつらはボコボコにしてたため後半は恐れられてしまった。あの時の不快感以上のものはまだないからか余計にキツくなっている。
「寿一くん!寿一くん!やっと気づいた、大丈夫?」
「あ、あぁごめんごめん」
「急に顔色悪くなるし、怖くなるんだもん。心配しちゃったよ」
「昔のこと思い出しちゃって、、多分もう大丈夫だから。安心して!」
「うん!じゃぁさ後半戦いこう!!」
「よっしゃー見るぞー!!」
やっぱりだ。朝子に話すとなんだか気が楽になる。だが先ほどから誰かにつけられてる。こういうところの勘はまだ衰えてないらしい。このまま何事もなければ良いんだが、、
そろそろ終園の時間になる。
「あっという間だったね~」
久々に楽しい時間が過ごせた気がした。小さい頃家族で動物園に行ったきり、親が家出してしまった。それからは引き取られることもなく、一人で生活してきた。
「今日誘ってくれてありがとな。久々に羽が伸ばせたわ」
「ここね、私がまだ小さい頃だったかな。迷子になっちゃって、同い年くらいの男の子が一緒に親を探してくれたの。お礼言えてないんだけど、かっこよかったのよね。」
「思い出の場所なんだな。」
「私の初恋の場所なの!」
「そんな大事に場所に俺を誘ってくれたのか。」
「うん。なんか話しやすいし。私にもしものことがあったら、守ってくれそうだったし!!」
「買い被りすぎじゃ、、それと漫画とかアニメの見過ぎ!」
「それは無いんじゃない?女子がピンチ、元不良の2つがあるならやってくれると思ったんだけどな~。」
「っ、、」
痛いところをつつかれた。確かに元不良で度胸はあるし、体力はある。ただ、誰かを守りながらの戦闘はやったことがない。今の俺にできるかどうかわからん。
「じゃあ、私こっちだから」
「気を付けてな」
「うん!ありがと、楽しかった。また学校で」
「だな。俺も楽しかったよ」
別れた後、突き詰めてみる。
「そろそろ出てきたらどうなんだ。ずっと付きまとってきやがって」
「…」
顔が見えた。正体は同じクラスの彩音だった。だが、俺はまだクラスの人の名前と顔を覚えてないのだ。
「どこかで会ったことあります?」
「同じクラスの彩音よ」
「そうか、だが悪いなまだ全員覚えてないんだ」
「そう、残念だわ」
彩音がこういうのには訳があった。高校入学式まで遡る。入学初日に道に迷っっているところを寿一が親切に聞いてきた
「大丈夫か?」
「えっ、あ、はい」
「そうか、なら良かった」
「あ、あの!1-Bってどこにありますか?」
「1-B?俺と同じじゃん!なら一緒に行こうぜ」
それからは話さなくなった。寿一は緊張してほとんど覚えてないし、彩音に関しては一目惚れをしていた。ずっと目で追いかけてる日々だった。それくらいの距離がちょうど良いと思ってた。けど、帰り道に聞こえてしまった。今回のことを。
「ここじゃなんだ。少し歩こうか」
「…」
「話戻すぞ。なぜ俺についてきた」
「あなたのことを好きになってしまったから」
すこし考えてる
「俺は人を好きになったことがないからわからない。けど、この行動はやりすぎだと思うよ」
「ごめん。」
「でもなんで俺のことが好きになったんだ?」
「入学式の日覚えてない?」
「わりぃ、その日緊張してたから覚えてないんだ」
「そっか、、あの日私は道に迷っていたの」
「敷地広いもんな~」
「うん。そんな時通り過ぎようとしていた、火野君に道を聞いたの。そしたら同じクラスだから一緒に行こうって言ってくれたのがうれしくて、それ以来ずっと目で追いかけてた」
「なるほどな、、」
「あのさ、もしよかったら私と付き合ってくれない?」
「えっ、、付き合う??お互いのことよく知ってからのほうが、、」
「付き合ってからでも遅くはないと思う!」
さすがに今まで言われてこともなかったし、言ったこともなかった。そんな俺が告白されてる。
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