★14★ 呪いの王
どうにかこうにか襲撃してきたゴンザレスを撃破した俺達は、その勢いのままにキッキーがいたよろず村へ向かおうとしていた。
でもその前に、俺達は傷ついた身体を癒やすためにキャンプを張る。
なんやかんやで激しい戦いだったからな。
おかしくなった俺の左腕は見た限り元に戻った気がするが、ニルフィが心配して見てくれた。
「そうですね、診た限り異常はなさそうです」
「さっきから言ってるだろ? あいつを倒したからもう大丈夫だって」
「念のためにですよ。それにしてもシキ様、結構身体に傷がありますね」
「そこそこ長く冒険者をやっているからな。回復はポーション頼み、ない時はできる限り無茶しないようにしてきたよ」
特に駆け出しの頃は死なないことを考えて立ち回っていたもんだ。
騎士という職業柄、パーティーの盾役をやらされることが多かったし、それもあって傷が多かったからな。
「シキ様、たくましいですね」
「そうでもないさ。生きるために必死だっただけだよ」
診断を終え、俺は服を着る。
そして、テントの外へ出て待っていたみんなと合流した。
まず声をかけてきたのはクリスだ。
彼女は彼女なりに俺を心配してくれていたようだ。
「大丈夫、だった?」
「大丈夫だよ。なんなら触ってみるか?」
俺が冗談交じりに言葉を口にすると、クリスは間髪入れずに左手を握った。
確かめるように手のひらを見つめ、そして俺の顔を見て綻ばせる。
「大丈夫みたいね。全く、無茶なことをして。心配したわよ」
「そいつはどうも。それより、いつまで握ってるんだ?」
「え? あっ、そ、そうね。ごめんねっ」
クリスは顔を真っ赤にして俺の手を離した。
なかなかにかわいらしいところがあるじゃないか、と感心していると見守っていたアルフレッドが声をかけてくる。
アルフレッドはアルフレッドで心配していたのか、こんなことを聞いてきた。
〈体調は悪くないか?〉
「バッチリだよ」
〈そうかそうか。それでこそワシの相棒じゃ〉
アルフレッドは安心したかのように笑う。
まあ、こいつはこいつで俺のことが心配してくれたんだろう。
それにしても、ゴンザレスがまとっていたあの力はなんだったんだろうか?
呪いと言っていたが、本当にそうなのだろうか?
「なあ、アルフレッド。あのゴンザレスが使ってた力なんだけど、あれは本当に呪いなのか? 確かに強力だったが、俺の知る呪いとは違う感じがしたんだが」
〈お前さんが感じた通り、あれは少し違うものじゃ。呼ぶならば【呪装】じゃ〉
「なんだそりゃ?」
〈かつてワシが戦った【呪いの王】なる者が使ってたスキルじゃ。呪いをまとい、様々な攻撃を無効化にするというもの。本来ならばその者しか扱えないはずなんじゃが……〉
「どうしてそんなスキルをゴンザレスは扱えたんだ? あいつは見た目は奇抜だったが、一般的なゴーレムっぽかったぞ?」
〈わからん。何かしらあるとは思うには思うが、それは憶測でしかないからのぉ〉
憶測か。
まあ、心当たりがあるなら話してほしいところだけどそうしたくないんだろうな。
何にしてもわからないことばかり。
頭の隅に情報を置いて進むしかないか。
そう考え、俺はみんなと一緒によろず村へ向かおうとした。
「きゃあぁああぁぁぁぁぁっっっ」
だが、その時にニルフィの悲鳴が響き渡る。
俺達が慌てて振り返ると、そこには一人の男がニルフィを抱えて立っていた。
精悍な顔つきになびく銀髪、赤く輝く目を向けるそいつは異様な威圧を放っている。
なんだこいつ!?
俺は思わず警戒するが、クリスは違った。
「ニルフィを離せ!」
「待て、クリス!」
怪しい男にクリスは短剣を手にして飛びかかる。
しかし、男は動かない。
ただクリスの剣を見つめ、目を光らせると直後に短剣が弾け飛んだ。
「え?」
思いもしないことにクリスは呆気に取られる。
男はそれを見て、クリスの懐に潜り込み腹部に拳を突き刺した。
クリスはそのまま男にもたれかかるようにして動かなくなる。
俺は慌てて男へ飛びかかろうとしたが、その前にクリスをぶつけられるように俺に投げ飛ばされた。
俺は慌ててクリスを受け止める。
すると銀髪の男はそんな俺を見て、こう告げた。
「悪いがこいつはもらっていく」
「待て!」
俺は止めようとした。
しかし、銀髪の男はどこかへと消え去ってしまう。
ニルフィを連れ去られた。
あまりにも突然すぎて、俺は思わず奥歯を噛んだ。
〈そうか、あいつ生きていたのか〉
何なんだあいつは。
俺が悔しがっていると、見守っていたアルフレッドがそんな言葉を口にした。
思わず俺が食ってかかろうとすると、アルフレッドはこんな言葉を放つ。
〈シキよ、あいつは強い。今のワシらでは勝てん〉
「勝てんって、知ってるのかあいつのこと?」
〈ああ、あれこそが【呪いの王】じゃ〉
「あいつがか? なんでそんな奴がニルフィを連れ去ったんだよ?」
〈そのことも含めて話そう。だから少しワシの話を聞いてくれ〉
アルフレッドはそう告げた。
俺は仕方なく変態の言葉を聞くことにする。
そんな俺の態度を見て、アルフレッドはまずこんなことを告げた。
〈レディを助けるには、ワシの失った力を取り戻す必要がある。そのためにも探してほしいものがあるんじゃ〉
「それはなんだよ?」
〈ワシの記憶でもある【千切れたページ】じゃ〉
それを見つければニルフィを助けられるのか。
確信を得るためにも俺は、アルフレッドの言葉に耳を傾けたのだった。
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