Ep-8 針地獄
「はァァァ〜」
目が覚めた僕はとりあえず体を起こし大きなあくびをした。あっという間に朝になり気づけば抜いた針の傷もなくなっている。「
ダン!
「イタタタ……」
また強くおしりから落ちた!全く!木から絶対落ちる呪いでもあるの!?それにしても不思議だ。一昨日まではあんなにボロボロだったのに今じゃ傷もなければ割れた爪も治ってる。もう元気ピンピンだ……服はみっともない事になってるけど。
グゥゥゥ
そういえば今までいそがしかったから気づいてなかったけど僕目覚めてからこの3日間何も食べてないよね!?雨をたらふく飲んだから水は摂取している。近くには大きな滝もあるから最悪そこに行けば魚肉や水があるから困ることはない。でも怖い!まず見晴らしが良すぎて格好の的だ。僕は追われてる身らしいしあまり大胆には動きたくない。そもそもこの身体で泳いだことがない!いや、もしかしたら泳げるかもしれないよ?でも泳げなかったら……顔を真っ青にして想像する僕であった。ひとまず食料に関してはし……死活問題だ。なんとか対策を見出さねば。あ……そういやダークブルー色の果実が成ってる木を思い出した。ここにいても滝かトゲのある草木しかないし一旦戻るとするかな。あぁそうだ、せっかくだし……。
1時間程歩けばその果実が成っている木にたどり着いた。さて……どうするか……ざっと計算してみると10m上にあるんだけど、果実を落とす方法を考えてなかった。というかこの木が異常すぎるんだよ!木を登るにしてもこの木の表面が無駄にツヤツヤで滑るし。10mジャンプできるかって言われたら筋力2だから無理だし。そもそもあの高さから果実を落としたら絶対地面と激突して破裂してしまう。そうだ!思いっきりこのむかつく木を蹴っちゃえばいいじゃん。木を揺らして落とす作戦を作ったがすぐ挫折することになる。
ゴンッ!
この木……びくともしないじゃん!筋力2限定選手権で1位に輝いた(そんなものはない)僕でもこの木はびくともしなかった。四つん這いになり地面に八つ当たりをする僕。自分の自尊心がとても傷ついた!許せない!でも一体どうしたものか。整理してみよう。木を揺らすことができない。手も届かない。木に登ることもできない。逆にしてみれば揺らさず登らず遠距離しか取れない。遠距離……?いいことを思いついた!
カランカランッ
地面に散らかしたものはあいつ……ディパイロの大量の針。元の道に戻るついでに何かに使えないかと拾ってきたのだ。あいつと同じようなことをするのは気が進まないけどこのままでは飢餓で死んでしまう!!
「ソォォレ!」
カタンッ
思いっきり果実に目掛けて針を投げてみたが高さが足りず地面へと戻って来る。あいつこんな難しいもの使ってたの!?針って持ちにくいし重量がないから風ですぐ狙いがズレるしなんだこの武器は!?でもこれが僕の最後の切り札なんだ。何がなんでも当てるしか道はない!そこから地獄の針投げ練習が始まった。拾ってきた針の数はざっと150本。脇に抱えれないくらいあった針だったが気づけば手元には12本しかない。そろそろ肩も痛くなってきた。これは筋肉痛ルート確定だね。やっぱりどれだけ投げても高さが足りない。まずこんな持ちにくい針を上に投げるというのが馬鹿馬鹿しいのかもしれない。何本かはどっかいったが落ちてるのを全て拾えばまだ60本はある。絶対に諦めない!かれこれ30分、針投げを続けていたリゲロンだったが予想外の出来事が起こる。
シャァァァァ!!!
突如大きい草むらをかき分ける音がなったと思えば横の尖った草むらから大きな熊系魔物が現れる。4メートル近くあるその図体、中に水でも入ってるかの如く膨らんだ足、桃色にギラつく瞳に、見たものを萎縮させるほどの顔面、何より絶対の盾とも矛ともなりうる程尖った鋼の生物「ツスチールベア」
「こんな時に……!」
ツスチールベアはその巨体でありながら跳ねるために発達した脚部で空に飛び、青い鋼の刃で覆われた体で獲物に抱きついて穴だらけにする、森深くに住んでいる熊系魔物。その体の鋼は刃物を通しにくく生で触れば一瞬で血まみれになりさらに行動制限系スキルを所持してると昔どっかの図鑑で見た記憶が蘇る。状況が状況なだけに最悪だ……。針投げを否が応でも続けていた代償か既に体は鈍くしか動けず「
「グルルルルル!(
うだうだしている間にツスチールベアのスキルが発動する。
「う……動けない!?」
獲物が動けないと判断したのかツスチールベアの奥義とも言えるジャンプをした!そのジャンプの着地地点は既に僕を定めている。空高く飛び上がり抱きつく姿勢を見せたツスチールベア!対してろくに動けないのにスキルもかけられ身動きを取ることすら困難なリゲロン!!?
「ぶっつけ本番!やるしかないならやってやる!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます