第2話「比較」

さて、色んな事や物に興味を持つ小学生時代。

今思うとこの頃から他人との違いや家庭の違いを

気にしだしたのかもしれません。

小学生時代一番大きな出来事として

今でも唯一といっていい親友が一人出来たことかもしれませんね。

その親友とはフルネームの読みが2文字しか変わらないことから

「俺たち実は兄弟なんじゃない?!」なんて

大したことでもないようなことで仲良くなって

結果いまでも一番信頼している友達になっていました。

ほかに友達はいなかったのか?

そもそも友達って概念がよくわかりません。

よく遊んでいたらトモダチ?よく話していたらトモダチ?

友達って何なんでしょう?

しかし私はどちらかというと気がついたら周りに

人がいた気がします。

その点では恵まれていたのかもしれませんが、周りに人が増えると

どうしても考えてしまうのが「違い」だと思います。

私の家庭は親が厳しく

「子供が家で遊ぶな!外で遊べ!」「男が泣くな!」「男は野球をしろ!」

こんな感じでした。

特にやりたいこともなかったし一応言われた通りに生きていました

家で遊ばずとにかく外に出る。住んでいたところが田舎で

遊ぶとこといえば海や川と山

ほんとにそれだけでした。

だからいつも家が有行船と漁師をしていたこともあり

子供時代は基本釣りをしていた気がします。

休みの日に家にいると怒られるので朝起きて

ゆっくり準備をして自分でおにぎりを作り

いつも行く人の居ない崖の下にある洞穴のような場所に行き

荷物を置いてずっと釣りをして

その頃から本能的になのかすでに焚き火も出来ていました。

釣った魚を雑ではあったけど捌いて焼いて

持ってきていたおにぎりと食べる。

そんな日々の繰り返し。

今思うと羨ましく思う人もいるかもしれません。

でも、それが価値観の違いでもあり人との比較の1つだと思います。

私は別にそれはたのしいからではなかく

怒られないための時間つぶし

ほかの子は当時絶大なる人気を誇っていた

「64」ってゲーム機を親に買ってもらい沢山遊んでいました。

ん?私の家は買ってもらえなかったのか?

それは当然で家に居ること悪い事のように教えられ

ゲームなんて以ての外でした。「みんなやってる・・・持ってる・・・」

勇気を出して発した言葉も「○○君家とは違うから」

みんな子供の時代によく言われたんじゃないでしょうか?

そこで少し他とは違うんだと思い出しました。

4年生になると他の男の子たちと

少年野球をすることになります。野球が好きなのか?いいえ

することが当たり前だからです。父親が子供の時にしていたから

皆しているから。田舎にはよくあることでした。

でも、おかしくないですか?ゲームを皆もってるから欲しい

みんなと一緒がいいって思いはあの家とは違うからと

否定されたのに野球は皆してるからやらないといけない

どうして?

でもするしかありません。何を言っても「ダメ」この言葉をいわれれば

子供は言う事を聞くしかないから。

でも、野球をしていない子だっていました。羨ましかった。

その子の両親は見た目も口調も全てが優しく感じ

いつからかその子の家庭が羨ましい・・・そんな風に思うようになっていました。

そんな家庭の違い

田舎の少年野球では子供たちのおとうさんたちが

練習に参加しコーチのような事をすることがよくありました。

正式な監督の立場の人ももちろん仕事をしているので

平日は特に空いているお父さん達が練習に参加して

子供たちにメニューをさせます。そう

うちの父親もです。

それはもう厳しいですよ。特に自分の子供にね

そんな事が続けは当然嫌になっていきます。試合でもいい結果が出ないと怒られる

練習でも失敗すれば怒鳴られる。練習という口実をつけて

なんでもしていいと思っているんじゃないか?そんな風に思っていました。

だから怒られないために頑張るんです。必死になるんです。

やりたいことも全て諦めて怒られないようにするんです。

たのしいから、上手くなりたいから

そういった前向きな感情なんてないです。

思うことはいつだって1つ

「怒られないため」

そうして6年生になる頃には私は打順も4番

ピッチャーもしていましたがあまりの重圧に耐え切れなく

親には内緒にして欲しいという約束で監督に

ピッチャーはしたくないと伝えてファーストになりました。

一応はチームの中では1番上手と言われるくらいにはなっていました。

でも、ほんとに嫌でした。

楽しくもないし自己防衛の一つでしかなかったから。

それでも父親は嬉しそうに他の人に言うんです。

「うちの子は4番だ!」とか「おれも昔ファーストだったからその血があいつにいっている!」

そうして自慢の息子の誕生です。

そうなってからは特に親のマイナスになることができなくなってきます。

練習が嫌で何度か逃げようともしました。

「頭が痛い・・・」そんな言葉に対しても「大丈夫」

「気分が悪い・・・」「お腹が痛い」「体がきつい」

全部全部「大丈夫」もう魔法の言葉ですよね。

そんなある日

私が感情を1つ失うきっかけになった出来事が起きます。

ある日の土曜日。朝から野球の練習があるため起き上がります。

するとまともに歩けません。体も重いしなんだか身体の色んなところが

痛い。気分も悪いしどうしよう。あまりの辛さに思わず出た言葉が

「体調が悪い・・・」でも魔法の言葉でかき消されます。

死に物狂いで練習をして、ご飯も残すことができなかったので

吐きそうになりながらも食べて

翌日も家にいると怒られるので練習が休みだったので

いつもの洞穴に行きダンボールを敷いて寝る。

そして月曜日になっても体調は悪いまま

学校にも行きたくない。体調が悪いことを頑張って伝えてみるも

「大丈夫」

20分かけて自転車で学校に向かいます。

しかしそんな無茶苦茶なことをしてて大丈夫な訳ありません。

気がついたら私は保健室のベットでした。

聞くと熱が40近くまで上がっており

授業中に気を失っていたそうです。担任も慌てて保健室に連れて行き

親に連絡したからもうすぐ来てくれるよ。だから安心してね。

その言葉で安心なんてできず

むしろ私の目には恐怖で涙が溢れてきていました。

「絶対に怒られる・・・」その感情でいっぱいでした。

必死に先生に伝えます。「大丈夫です。だから親には・・・」

しかし40近くまで出ていて先生もそんなわけにもいかないし

すでに親には連絡がいっていました。迎えに来た親に言った言葉は

「ごめんさい」怒られないための精一杯の言葉。

結局人生で初めてのインフルエンザでした。

そして初めての入院。ちなみに両親にはどうして気付かなかったのか

子供は何も言わなかったのかそういったことを病院の先生も

学校の先生も聞いていました。

親は「言わなかった」それを聞いたとき

私は「そっか。だったらもう何も言わないし何も望まない

だって言っても意味ないから」そう心に決めました。

勇気を出して言った言葉も行動も

なにも伝わらないならその勇気も行動も無意味だと

子供ながらにそう思いました。

そして私は1つ感情がなくなりました。その出来事から

少し親も気にするようにはなったように感じました。

食べたいものある?お菓子欲しいのある?

だけど諦めていた私が言うのは「いらない」「とくにない」

その事に親は「面白くない子供」だと言っていましたが

もうそんなことどうでもよくなっていました。

どうして自分だけこんな過酷な生活なんだろう

どうして自分だけこんなに楽しくないんだろう

そして比較しだすんです。

「○○君の家はいいなぁ・・・お父さんもお母さんも優しそうで」

どうしてこんなに皆違うんだろう。羨ましいな。

感情がなくなっていた私には気になることがありました。

それは友達たちがする「喧嘩」

両親が怖くあまり言いたいことを言わなくなった私には不思議てたまりませんでした

皆思ったことを口にするから

怒られないために身につけた親の機嫌を伺う

表情や態度をみて悪い日は一切近づかない何も言わないし

悪いことをしない。だから学校でも自然とそうしていました。

そもそもそんなに人と話したいこともなかったし。

だからこそ思ったことを口にする周りの子を見て不思議に思っていました。

家庭環境で人はこんなにも違う感情を持つんだと

改めて思います。

我慢と疑問と違いと感情は必要なく

自分の言葉は無意味だと思い知らされていた小学生時代

他の子の親が羨ましく家庭環境が羨ましく

その中で育った子達があまりにも自分と違うことを知った。

親は近所の人たちに言っていました。

「わがまま言わない手のかからない子」だと

わがままを言わないじゃなくて

言わせてないだけ。

手がかからないじゃなくて

聞く耳をもって無いだけ。

でも、そうしていれば怒られない

怒られるのは嫌だから怒られないためにしないといけないこと

それは「何も求めないこと」

言われたことをするだけ。そうじゃないと怒られるから

だから何も言わない。

「○○君達はいいな。欲しい物もってて好きなこと出来るんだー」

「羨ましいな。今日のごはんハンバーグなんだ」

「ゲームセンターなんてあるんだ・・・行ってみたいな」

「皆カードゲームしてる・・・楽しそうだな」

そう思って頑張って生きた小学生時代。

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