ひとりの長男のお話

ただのうに

第1話「はじめに」

これはとある田舎に生まれた長男のお話です。

もしかすると長男として生まれてきた人なら共感がもてる

そうじゃない人でも「そんな事おもってるんだ」って

思ってもらえたら幸いです。

このお話はある長男のお話ですが、主にその長男が

どのような事を考えて、どのような事を思って生きてきたか

その一部を物語にして書いていこうと思います。


長男として生まれてきた人の中にはもしかすると

同じ境遇や思いを持って生きてきた人もいるんじゃないでしょうか?

ここに書かれる「長男」はこの世に生まれて

両親の「理想の長男」の仮面を被り

両親の「自慢の長男」を演じ続けた

ひとりの人間のお話。


では、はじめにその長男の生まれを書いていきましょう。

しかしその長男は私のことなので小さい時代のことは

あまり覚えていないので知っていることを書いていきます。

その長男は生まれる時からとても大変で

母親のお腹の中でヘソの緒が首に2週、肩に1週絡まってしまったことで

緊急で予定より早く生まれることになり

生まれて早々に両親はきっとかなりの心配をしたと思います。


記憶の中でのいちばん小さな時の記憶

それはきっと世界で一番大好きだったおじいちゃんのお葬式の日

それは今でも忘れることができない

人生で最も辛い思い出

そしてその日から「感情」というものが

無くなってしまった日。

なぜそんなにおじいちゃんが大好きだったのか

それは両親がかなり厳しい両親だったからです。

田舎特有なのかその時代特有なのか

今では考えられないような独自のルールーがありました。

たとえば「食事は家族全員で必ず食べる」や

「お風呂は父親が入り次に長男」と順番が決まっていたのです。

もちろん食べ物の好き嫌いもダメだし悪いことをすれば

叩かれるは当たり前、反抗すれば家の外に出され鍵をされ

反省するまで入れません。

そんな幼少期に唯一優しくしてくれていたのが

地元で一番頑固者と言われていたおじいちゃんだけでした。

家の外に出された日も

すぐに駆けつけて「はよこっち来い!」と裏口から

家に入れておじいちゃんの部屋に匿ってくれていました。

そんなおじいちゃんが亡くなったのが

長男が5歳の時。

お葬式の日は今でも夢に見るほどで

鮮明に覚えています。

母曰くその日から5日間の間ずっと泣いていたそうです。


小さい頃の思い出は基本的に

おじいちゃんのお葬式の日しか記憶になく

両親の「お前が小さい頃は・・・」の昔話で

聞いたことが何度かある程度なので

あまり深くは触れませんが、長男にとって

唯一頼れる人が居なくなってしまった。

唯一優しくしてくれる人が居なくなってしまった。

唯一大好きだった人が居なくなってしまった。

その日の記憶しか残りませんでした。


そんな長男はもうすぐ小学生

大切な人をうしなったその子は

これからどうやって生きていくのか

どんな学校生活が待っているのか


そんな長男ですが実はこの時点で

子供として大事な色々な物が実はおじいちゃんと一緒に

消えていってしまっていました。

そんなことに気づいたのは大人になってから・・・


つぎは沢山泣いて沢山怒られた小学生時代のお話

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