異常食欲者3

家を出て程なくして、赤い屋根のありふれた一軒家が見えてきた。



そう、あそここそが今回のターゲットであるミチコの家なのである。



「着いたけど・・・どうしようかな」



インターホンを押して素直に朝ごはんをくれとお願いしても、とてもご馳走してくれるとは思えない。

かといって、朝から窓を割って入るのも流石に体裁が悪い。



ジルは思案した。

どうすればトーストにありつけるのか。

地球が丸い理由。

戦争がなくならない理由。

サ◯エさんのジャンケンの必勝法。

世界の成り立ち。

人間とは。

生きるとは。

生と死。

輪廻転生。


様々な思考がわずかコンマ数秒の間にジルの頭の中を駆け巡った。


ここで急にジルの特性の話になるのだが、

彼は考え事をしている時に散眼が発動する。

つまり考え事をしてる時に外敵から身を守るために、目線が全方位に広がるのである。



ギョロギョロ動き回る目が正直気持ち悪くて仕方ないのだが、この時はそれが功を奏した。



「あれは・・・」



ミチコ家の二階の窓が開いていることに気付いてしまった。

洗濯物でも干した後なのだろうか、とても不用心である。



「・・・うん、あそこから不法侵入するか」



ズザザザザッッ!!


軽々しく禁句をつぶやいた彼は、まるでゴキブリのように壁を這い窓から侵入する。



「ふぅ、難なく侵入完了っと」



ジルは部屋を見渡す。

変わらない見慣れたミチコ家の一室だ。



アハハハハハハハッッ!!!

(ミチコの笑い声が聞こえる。テレビでも見ているのか?油断したな)



朝食作る時に油断もクソもないが、

ともあれ、容易にミチコ家二階へと侵入できたジルは不適な笑みをこぼしたのだった。



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