第4話ロボット導入会議
「では魔法少女界にロボットを導入するにはどうすれば良いか、会議を始めます。」
翌日、私はあの場にいた魔法少女達を我が家に招待した。
魔女と戦わない名目の元、ホープズシードを回収して。一番の目的は逃げないようにだが…
「はぁ…」
アストラは呆れた様にため息をつく。
「えっと…必要…無くないですか?」
ビッチイエローと呼ばれていた、タレ目でおっとりしてそうな金髪の少女は言う。
他の少女達も頷いている様だった。
「却下です。必要ない理由を述べなさい。」
言論は弾圧する。歴史から学んだ…
「いや…だって…怪人はあーしらで十分戦えるし…
巨大な怪獣には
正論と言う暴力で少女は殴りかかってきた。
ちなみにナンバーズとは私たち魔法少女の中でトップ13の魔法少女の事だ。
先程のように魔法少女同士の戦いを仲裁し罰を与える権限を持つ13人。
言わば魔法少女界のリーダー的な存在だ。
「いや…私にも私生活があるのよ?未来の事も考えなきゃいけないし…」
「未来…ですか?」
結局は今で手一杯なのだ…今は良くても、後でどうすれば良かったと後悔する。
ましてや、魔法少女の中身は成人していない少女だ。
しっかりと先輩が導かねばならない。
「ねぇ?今の魔法少女界がどこかおかしいと感じたことはない?」
私は集めた少女達に聞く。現場の意見はやはり大切だからだ。
「怪人が強い割に…報酬が少ない…いや…多いけれど…
それに怪人に負けたら…死ぬ…だから命の重さに報酬が合っていない…」
そう…現実的に魔法少女の生存率は高くない。
昨日までいた子が今日はいない事もザラにある。
強くなるためにディザイア・シードから魔力を手に入れれば報酬はない。
けれどディザイア・シードを換金すればいつまで経っても強くはなれない。
それに…
「消える子がいない方が良くない?その為に私はロボットを…導入したいの…」
肩に超巨大な砲台…
空を飛ぶごっついウイング…
手にはビームサーベルを持ち、まるで完璧で究極なロボット…
「あーし…バカだから分かんねぇけどよ…
別にロボットじゃなくても…魔法少女の両肩に全自動のガトリングじゃダメ?」
ホス卜狂いのヘイズパープルという、病んでる系の女子は呟く。
「それも…採用しましょう。だって格好良いから…新しいアイデアをありがとう!」
そういってパープルに笑いかける。自己肯定感が低いのかもしれない。
肯定感を高めて依存を無くす。メンタルケアも大切だ。
やっぱり魔法少女は可愛くあるのが一番だ。外面だけでなく、内面も…
けれど…格好良い装備があっても良いはずだ。時代の流れに合わせて。
アストラはため息をついて口を出す。
「はぁ…仮に採用することになっても、費用はどうするんだい?」
「???アストラ?あなた達マネージャーが何とかしてくれるんじゃないの?」
「僕が出来ることは、キミ達少女の中に眠る『生命力』を魔力に変換して魔法少女にすることだけさ!」
「その理論なら、希望からガトリングとかロボットを出すことも出来ない?」
「召喚獣を出す少女はいるし、銃を使う魔法少女はいるじゃないか?」
つまり理論上の可能性は無くはない…か…
「やっぱり…ディザイア・シードを換金するしかないか…」
「キミ…ロボットを1体作るのにどれくらいの費用がかかるか知っているかい?」
「そりゃ…○ンダムや戦隊モノの特撮で予習済みね…」
「何千体の怪人を討伐するつもりだい?」
「………」
私は言葉につまる。費用が一番の難点だった。
だが逆に費用をどうにかすれば良いんだ。
「
ドレッドという、紅い髪のいかにもヤンキーな少女は痛い部分を突いた。
ここで私は屈しない。なぜなら…屈したらなにも考えていない人間だとバレるからだ…
「では次の議題に移りたいと思います。
ロボットを製造する費用をどうするか?についてです。」
「そりゃ…ホープズシードに魔力を貯めて願いを叶えれば…」
水色のツインテールの少女が口を開いた。強力な氷魔法で、互いに戦っていた中で一番強かった少女。
「もうその頃には魔法少女ではないので却下です。」
魔法少女になるにはホープズシードが必要だ。
ホープズシードに祈りを捧げる事で、魔法少女の力と引き換えに願いを叶える事が出来る。
魔力の強い魔法少女であればあるほど、不可能そうな願いも叶える事が出来る…らしい。
「他にお金を稼ぐ方法は?」
結局、現実的な問題に突っかかる。
魔法少女になって真っ先に皆が思うこと…
『夢だけじゃ、現実は生きていけない…』
何だかんだで魔法少女は感謝される。怪人を倒せば大金も手に入る。
けどさ…それでもメンタルがどんどん病んでいく…
助けられずに大ケガの人間や他人の死を目の当たりにする…
助けが間に合わなかっただけで文句を言う人間…
昨日夢を語った仲間が今日には消えている…
お金があっても、満たされない心…お金を使っても刷りきれていく心…
魔法少女になって、少女の時には考えられなかった力・富・名声が手に入る。
『大いなる力には責任が伴う。』
その責任が押し寄せるのだ…それによってまだ未熟な少女の心は潰されてしまう。
「例えば…ヒーローの一人を魔法少女にするとか?」
赤髪のドレッドが口を開いた。
素晴らしいアイデアが出た。そうだ。
お金がなければロボットを持つヒーロー達を魔法少女に取り込めば良い。
「それだ!全ヒーロー魔法少女化計画を実行しよう!」
妙案だ。もはや国の偉い人の様に、検討を重ねる前に実行に移したい。
「いや…それは…やめよう?25歳を越えた女性が少女を名乗るのはツラいよ…」
アストラはここぞという場面で反対する。
「大丈夫!夢に年齢なんて関係ないから…
じゃあ今から殲滅ジャーの本拠地に乗り込んで話をつけてくる。」
私はそう言って、変身の準備をする。
「あ…あの
私が半ば強制的につれてきた少女達は私を見て困惑していた。
「はい、ホープズ・シード。」
私は彼女達にホープズシードを返却した。
「帰って良いよ。ただこれからは魔法少女同士で争わないでね?
困ったら私を呼んでくれれば良い。お金に困ったら工面する。
間違ってもやり直せる。だから無理だけはしないで?」
そう拉致した少女達に言った。
話していて彼女達は、争いが好きな根から悪い人間ではないことがわかった。
元は人を助けようとしていたのだろう…けれど心が潰されたのだろう…
私のかつての相棒の様に…
「変身!」
私はゴスロリ衣装に着替えて、ヒーロー達の元に飛び立った。
◇◆◇
「変身!だってさ…楽しかったね…あの人。」
公園で争っていた少女達は、楽しそうに帰路につく。
「………心が…荒んでなくて……羨ましかったなぁ…」
パープルと呼ばれていた少女が涙を流す。
「バーカ…あーしらだって、やり直せるさ。あの人みたいになりてぇな。」
「そうだね…お互いに支えあって頑張っていこう!」
互いに争うのではなく、お互いに力を高めあう事を考え始めた。
一人ではくじけそうでも…支え合えばきっと…
「やり直さなくて…良いよぉ?ここで終わりにしようねぇ?」
どこかから声が聞こえる。だがどこにも人はいない。
「お前は?」
「魔女…って言えば理解してくれるかしらぁ?」
「魔女?どうしよう?」
「戦うな…なんて無理だよね?」
「いくぞ!マギア・メタモルフォーゼ!」
こうして少女達はステッキを取りだし、シードをステッキに嵌めて魔法少女に変身する。
「美味しそうなシードねぇ…ぱっくんちょ」
影は魔法少女を飲み込んだ。
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