第3話 魔法少女バトルロワイヤル

「はぁ…今日も怪人?」

 先日巨大な怪獣を倒したのだ…今日くらいは休ませて欲しいものだ…


 私は走りながらアストラに話しかける。変身はしていない。セーラー服のままだった。


 正直やる気はなかった。警報がなっていないから、私がいなくても大丈夫だと思っていた。


「既に他の魔法少女も複数向かっているらしい。」



 私は立ち止まる。

「じゃあ…私要らなくない?」


「それが…いつも通り…魔法少女同士で…」


「あぁ…(絶望)」

 いつも通りと聞いて私は落胆した。なるべく行きたくはないけれど…

 行かなければならない…


一応は私の役目だから…給料も何も無いけど…


 現場の公園にたどり着く…いつも通りだが、一般人には信じられない光景が浮かんでいた。

 少なくとも魔法少女に憧れる、小さな女の子には見せられない光景…


 既に怪人1体は縄でぐるぐる巻きにされて、拘束されていた。つまりは任務は終わっている…

 だが…魔法少女達はまだ戦っている…


 なぜかって?


「オラァ…あの怪人はあーしのもんじゃあ!」

「寄越せよ!あれはあたしの怪人よ!」

「縄で拘束したのは私よぉ?」


 赤や紫、黄色に水色の可愛らしい服装の…

 本当に可愛らしい魔法少女達が…


 殴り合い…魔法で魔法少女同士を攻撃をしていた。

 醜い争いというか…ほぼ殺し合いだ…


イケメン系の凛々しい短髪赤髪の少女…


ちょっと病んでる系だが、地雷メイクで可愛らしいツインテで紫髪の少女…


長髪ライトイエローの美女


水色ポニーテールで活発そうなクリリした目の可愛らしい女の子…


パッと見で美少女のパラダイスなのに…

パラダイスの筈が…何故こんな地獄絵図と化すんだ?


「これが終わったらブランドバック買うんだ!」

「私には病気の親戚を養う人間に借金があるの!」

「正直に言えよ!テメェらホストに貢ぐつもりなんだろ?」



「はぁ…」

 私はため息をつく。魔法少女にも2種類いる。

 自分の夢(欲望)の為に戦う魔法少女、他人の夢(平和)の為に戦う魔法少女。


 昨日の巨大な怪獣が出た場合は、まずこの公園にいるような魔法少女は前線には出ない。

 だって…命の危険に瀕するから…得が無い。


 だからこのように雑魚を狩り、ディザイアシードを換金して大金を得る。


 私はゆっくりと拘束された怪人の元に歩いていった。

「まだ生きているのか…」



「てめぇも魔法少女か?人のモンに手ぇつけるとどうなるか分かってんだろうな?あぁぁん?」


 まったく…五月蝿い…


 私は腰の部分のベルトにシードをはめて

「変身」


 眩い光と共に私は黒いゴスロリ衣装を身に纏った。



「てめぇ…変身の仕方がヒーローみたいでダサいんだよ!」

 血で汚れたかのような深紅のコスチュームを身に纏う魔法少女は呟く…


 ………言ってはならないことを、彼女は口にしたようだ…

 いや…格好良いでしょ?ビジュアル系クール女子みたいな感じで?


『神の右手(ゴッドハンド)…感度…100倍』


 私は超速で移動し右手で赤色の魔法少女に触れる。


「てめぇ…何を…?」


 その後、ものすごい速さで彼女の後ろに回り込み…


 耳元に「フゥ」っと息を吹き掛けた。


「あ、あぁぁぁぁぁん…」

 その深紅の魔法少女は悶絶し、その場に倒れた。


 感度100倍での囁き…それは快楽堕ちにて全神経を麻痺させる。


 一撃必殺…その光景に他の魔法少女達は恐れをなす。



「ねぇ?アイツ…ヤバくない?ドレッドちゃんを…」

「まず協力してアイツを倒そう。その後でまたあたしらがヤり合えば良い。」

「さーんせい。」


「じゃあ、みんなで行きましょうか?」


「悪(自分達の邪魔をする魔法少女)を滅ぼすために…」

 3人の息はぴったりだった。それを争わない方向に持っていけないのだろうか?


 こうして3人の魔法少女達が私を倒すためにチームを組んだ。


「ねぇ…アストラ?こんなくだらない争いしたくないんだけど…」


「しょうがない。本当にしょうがない。」


「やっぱりこんな無駄な戦いあるし、ロボット導入しよう?」


「……それこそ街がいくつあっても足りないよ?」


 それもそうだ…欲望に走る人間にロボットを渡してはならない。


 私たちは余裕そうに会話している。3人の魔法少女に囲まれたところで少しも怖くない。



「てめぇ…無視してんじゃねぇぞ!」

 水色のポニテの魔法少女のがステッキで氷魔法を飛ばして来た。


 それを私は難なくかわす。


「あのさぁ…あなた達とやり合っても良いけど、絶対に後悔することになるよ?やめない?」

 平和的な解決の道を模索する。まぁ…きっと…聞いてはくれない。


「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ。」

 そう言って黄色の魔法少女は私が逃げられないように縄を飛ばす。

 みるみるうちに私はぐるぐる巻きに拘束される。


「魔法少女になったことを後悔させてやんよ」

「あーしらの邪魔をする奴こそが悪!」

「こいつのシードを奪えばシャンパン代になるかなぁ?」


 ダメだ…コイツら…

 魔法少女にふさわしくない…


いや…魔法少女の成れの果てか…他の子みたいな…


「はぁ…使うか…左手を…」


悪魔の左手デモンズ・レフト

 私は縄を左手で触れる。すると縄は一瞬で消え去った。


「こいつ…やべぇぞ!ビッチイエローの強固な束縛を…」


「諦めるな…私たちが諦めない限り、決して敗けはない!」


 まるで理想的な魔法少女のセリフね…それは平和の為に言えないの?



「あなた達…もう魔法少女をしなくて良いわ?」


「うっせぇ…ゴスロリ衣装に眼帯とか、お前のが魔法少女にふさわしくないんだよ!」


 …………言ってはいけない事を言ってしまったようね…


悪魔の左手デモンズ・レフト

 私は超高速で動き、左手で残りの魔法少女に触れていく。


「魔法少女の弱点を教えてあげるわ。」


 パァン

 すると魔法少女のコスチュームは弾け飛んだ。

つまりは彼女達はただの素っ裸の少女に戻ってしまったのだ…


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁああああ」

「見ないでぇぇぇぇぇぇぇ…」


 魔法少女の弱点…素っ裸では戦えない。羞恥心があるならば…


 一瞬で決着がつく。彼女達はかがみ、両手で大事な部分を隠した。


 私は笑顔で彼女達に近づく。


「ねぇ?大丈夫?諦めなければ、決して敗けはないんだよね?


 さぁまだまだやれるね?」

 私はにこやかにその子達に話しかける。


 さすがにマズイと思ったのか、少女達は土下座をした。


「…めんなさい…」


「大丈夫!頑張ろう?まだ希望はあるよ?巨大な悪は目の前だよ?」

 まだ諦めたらいけない。だって…魔法少女でしょ?


「すみませんでした…」


「大丈夫!服が消し飛んだだけだよ?」

 そう…素っ裸でも立ち向かえるよ?


「許してください!何でもします!」



「じゃあ…アンタらのシード寄越しなさい!」


「え…それだけは……」


「どうして渡せないの?」


「平和を守るために…」

 白々しい嘘をつく。


「……平和の為じゃないよね?お金の為だよね?」


「………はい。でも反省します。」


「そう言って反省した子を見たことないの!」


「私だけは違います。」


 埒が開かないが……




「お前達…そこまでだ!そこのお前…何をやっている?」

 赤・グレー・ピンクのヒーロースーツを身に纏った戦隊ヒーロー・殲滅ジャーがやって来る。


「私欲で平和を乱す魔法少女を懲らしめてました。」

 私は涼しい顔で言う。この場面だけ見れば信じられないだろう。


 だってやっている事が、深夜アニメとかの敵幹部が主人公達を辱しめるシーンなのだから…


「嘘をつ…」


それが嫌であるタグを地面に投げつける。


『No.XⅢ』


「キミ…いや…あなたはナンバーズ…『漆黒の麗嬢』失礼いたしました。」

 殲滅レッドは昨日の事を思い出し、どこか納得したように敬礼した。


「はい。ではナンバーズとして命じます。

あなた達にこの子達の処分を任せて良いですか?」


「それが…No.10よりこの場に魔女が出現すると予知を承りまして…近場の私たちが…」


「魔女が来るならば仕方ないか…


 ではあなた達にこの場は任せましょう!この子達は…」

 私は先程まで争っていた少女達を見る。怯えた目をしていた。


「許して…ください…」

「助けて…」


「魔女が来る。逃げるわよ!」

 私は少女達に服を着せて、その場から離脱する。


 だって魔女は…基本的にはヒーローしか戦ってはいけない規則があるから…

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