どうやら11番目に転生した勇者は人類最後の希望らしい~先に転生した10人のチート級の悪徳勇者たちに全て奪われたので歴代最強の魔王娘や仲間たちと共に世界を取り戻す~
【10番目の悪徳勇者編<第4章:1/4>■零和充一の視点■】「なんだこの力……」冥界の女神エレシュキガル登場!
【10番目の悪徳勇者編<第4章:1/4>■零和充一の視点■】「なんだこの力……」冥界の女神エレシュキガル登場!
――12時間前に遡る。
この世界のランドマークタワーである時計塔――ウェストミンスター宮殿に付属するエリザベスタワー(通称、ビックベン)に似た豪華な大時計を背景に、長い大通りを歩いていた。
「着いたぞ」
アマナ東霊園。
東区最大級の広さを誇る。
アマナ聖堂が管理する民営霊園らしく、国から信頼されているそうだ。
ハート型のお墓がたくさん並んである。
「大切な人を愛し、世のために貢献する」と天国へ連れていってもらえるそうだ。
その意味を込めてハートの墓石が多いらしい。
アマナ宗教信者ではなくても利用できるそうだ。
その多様性と配慮はさすがだと思う。
「こっちだ」
フレちゃまと共に正門へ向かうと、受付所があった。
優しそうな老人が窓を開けてこちらを見つめている。
「よおブレンダン」
「久しぶりですな。ジークフレイヤ様」
老人特有のしゃがれ声でフレちゃまに挨拶していた。
「今はフレちゃまだ。11年前のことを忘れたのか?」
「ああ。そうでしたな。ほほほ、ワシも歳を取ったというわけですじゃい」
「何が『歳を取った』だ。老人のフリをするのもどうかと思うが」
「人間のままが一番良いのですじゃ。おや? そちらのお方が11番目の勇者様ですかな」
「どうも」
ブレンダンさんは墓の管理人を務めているそうだ。
「早速だが、彼を例の部屋につれていきたい」
「わかりました」
ブレンダンさんに霊園を案内してもらった。
墓と墓の間にできた細い通路を進んでいくと、ゴシック建築風の小さな聖堂が見える。
アマナ教のシンボルである『4つの赤いハートで作られたクローバー』が外壁の中央に飾られていた。
聖堂内は学校の教室と同じ広さだ。
中央の通路は赤い絨毯で覆われ、その先には祭壇が待ち受けている。
通路の両脇には長椅子がそれぞれ並んであった。
「表向きは祈りの場ですが、本当は封印の場なのですぞ」
ブレンダンさんが祭壇に歩み寄る。
彼は4つの道具を用意した。
「4つの法具に導きし冥界の道をいざ開かれよ」
すると祭壇は自動で動き始める。
豪快な音を立て、横へスライドしていった。
「隠し階段か」
「私とジークフレイヤ様以外、この道を空けることはできないのですじゃ」
「フレちゃまな」
地下へ続く大きめの螺旋階段を下りるのだが「あとはお任せしますぞ」と言った。
祭壇は再び閉まっていく。
周辺にガス灯があり、その灯りを頼りに薄暗い階段を下り始めた。
最深部に到達すると、苔や湿った土の香りが漂い始める。
足音が反響するレンガ作りの通路を慎重に進んでいった。
「着いたぞ。ここが冥界の女神【エレシュキガル】が封印された牢屋【ネクロマンティオン】だ」
地下なのに天井が高く、肌寒さを感じる。
静寂に包まれていたが、その静けさの中に俺たちの声が周囲に反響していた。
「ここへ立ってくれ」
中央にあるのは六芒星が描かれた儀式場だ。
壁の奥には祭壇があり、炎が灯されている。
何か特別な香木が焚かれているのか、かすかなスモーキーな香りが漂っていた。
「アレが……牢獄……」
高さ5メートルほどの巨大な観音扉型の鉄格子がある。
扉を鎖によって固定されており、空けられないようになっていた。
「かつて私とエレシュキガルは敵対関係だったんだ」
「敵?」
「今から1100年前の話だ。懐かしいな」
「そんな昔から生きていたの!? なんで歳を取らないんだ?」
「まず誤解をしないでほしいのだが、この姿は力を失った私自身だ。幼き頃の私に似ているが違うぞ。本来の私は成人の姿だ」
「それはなんとなく分かったよ。声でわかるし、アマナ様も『力を取り戻してもらいたい』って言ってたよな」
「歳を取らない理由についてだが、女神になれば永遠の若さを手にすることができるからだ。ただし寿命だけはどうしようもない。私もいつかは死ぬ」
「神は不老不死じゃないの?」
「あくまでも長寿なだけだ。不死身なら1番目を恐れる必要がないだろ。神に昇格すると【神細胞】と呼ばれる特殊な体質を手に入れることができる。若さと美しさの秘訣はソレだ」
元英雄たちは全員【神ランク】と呼ばれる最高ランクらしい。
「そして他者を転生する権利が与えられる。だから1~10番目を転生させたのは神あるいは神に昇格した元人間しかいない」
「1番目以外の可能性はあるのか?」
「仮にいるとすれば元英雄しかいないが、私以外全員死んでいる」
だから誰も分からないんだな。
「次にエレシュキガルが封印されている理由についてだ」
彼女の夫である死神の王――ネルガルは邪神に
当然、妻であるエレシュキガルも加勢する。
全盛期だったフレちゃまはネルガルを圧倒したそうだ。
その後「【和解の印】としてフレちゃまは死神の力をもらった」らしい。
つまり黒魔を使ってフレちゃまはネルガルの魔力を手に入れたのだ。
「今から手に入れるのは
神力と魔力を両方組み合わせることで生まれる第三の力らしい。
「そして魔神力を扱える
「女魔神?」
「整理するとこうなる」
【神ランク(最高レベル)に達した場合、人間は神(女神)に昇格できる権利を得られる】
【神ランク(最高レベル)に達した場合、人間以外の種族は魔神(女魔神)に昇格できる権利を得られる】
神になるかどうかは本人が決めることができる。
「ただし、充一の場合は神になることはできない。アマナ様が1番目対策って言ってたのを覚えているな?」
「それを教えないのも何かあるのかな?」
「さあな。神にも地位が存在する。3柱と呼ばれるアマナ様、ナゴミ様、そしてムスビ様。いわば彼らが世界を動かす上級神だ。人によっては全知全能の神とも呼ぶ。その方たちに聞くしかないだろう。ただしこちらからアマナ様へ連絡できないぞ。私なら可能だが」
「ずるくね?」
「天界規定だから仕方ないことだ。神同士なら連絡が可能なのだよ。……話を戻すぞ」
魔神力も黒魔と同じ方法で獲得できるらしい。
「女魔神も憎しみを持ってるってこと?」
「もちろん。いくら神ランクに到達したとはいえ、心の奥底に深い悲しみを持っている。それを受け入れてくれる男と魂を一体化したいのが女魔神たちだ。結婚するのと同じだからな」
「自分に正直過ぎないか?」
「生存本能だから仕方ない。Eランクはあくまでも女魔神と契約できる最低条件。エレシュキガルは女魔神の中で唯一Eランクで契約ができる」
「どうして?」
「女魔神は今まで契約した人数でランクが決まるからだ。エレシュキガルは未だにゼロだ。冥界の女神だから誰も契約したがらない」
「不人気ってことか」
「それ絶対に言うなよ! 一生冥界に閉じ込められるぞ」
「……りょ、了解っす」
フレちゃまは扉に手を当てる。
「
すると扉に撒かれている鎖が自動的に解かれた。
奥は暗くて見えない。
コツコツとヒールを鳴らす音が聞こえてくる。
「!」
強力な魔力を感じる。
肌がピリピリしていて、足下がすくみそうだ。
「なんだこれ……」
「気をしっかり持て。耐えられなかったらエレシュキガルと会話する資格すら無いぞ」
マジかよ。これ一般人だったら余裕でぶっ倒れるんじゃないのか。
「もう~なんなの。久しぶりに扉が開いたと思ったら……ジークフレイヤでしょ? あなたかアマナ様くらいしか封印が解除できないからね」
扉を潜って儀式部屋に入ってきた。
「これが……エレシュキガル……」
「美人過ぎて恐縮したか? 充一」
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