【10番目の悪徳勇者編<第3章:1/2>♡ブリジットの視点♡】ブリジットVSエリク「陰湿先輩が私に勝てるわけないじゃん」「これ以上言ったら殺す!」

「ミコナ様!」


 助けようとするもチャドに「ルール違反です! 失格になりますよ!」と注意されてしまう。


 仲間がやられそうになっているのにルールもクソもあるか!


「これだからデスマッチは時代遅れなんだよ」


 イラストに漫画、そしてラノベこそ志向である。


「こっちに集中しろ」


 黒魔術【髑髏快進撃アンデットアタック】は厄介だ。

 大量のアンデットたちを召喚し、敵を襲う。


「やるじゃん。エリク・ダーズリーさん」

「気安くフルネームで呼ぶな」

「だって私の母校出身なんでしょ? 落ちこぼれで退学になった腹いせに女子更衣室を覗いて自警団に逮捕されたおバカな犯罪者さんっ」

「殺す!」


 髑髏の数がさらに増えていく。


「!」


 足下に違和感があった。


「クズとはいえ、さすがに黒魔術を扱えるだけの実力はありますね」

「一言余計だ!」


 能力値と同様、すべての魔法には階級ランクがある。


 神聖級ディバインクラス

 最高位の魔法。

 神の力に匹敵するほどの力を持つ魔法。


 天帝級セレスチャルエンペラークラス

 非常に強力な魔法。

 天の力を操るレベルの魔法。


 覇王級オーバーロードクラス

 超高度な魔法。

 王にふさわしい人智を超えたレベルの魔法。

 

 聖魔級ホーリーデーモンクラス

 熟練者向けの強力な魔法。

 上級者が使いこなせる魔法。


 天魔級ヘブンリーデーモンクラス

 一定の修練を積んだ者が使える魔法。

 中堅レベルの力を持つ魔法。


 魔将級デーモンジェネラルクラス

 戦闘向けの基本的な魔法。


 さらにそれらとは別に【上級魔法、中級魔法、下級魔法】がある。

 それらはテレポート魔法といった非戦闘向けの魔法が多い。


「本当に殺すんですか? OBなのに?」

「あの苦々しい学園生活などくだらない。女性から嫌われ、バカにされた人生……」

「被害妄想にもほどがありますね。OGの方たちに聞きましたよ。『嫌うも何もはじめて知った。同じクラスの人だったの?』って」

「あの小娘を食い荒らせ! スケルトン!」


 私の体を這うように複数の骨の腕が伸びていく。

 とりあえず、あの術は発動しているから問題ないけど。


 この位置から見たら私ってこう見られているんだなって思った。


「や、やめてください。幼気いたいけな少女をいじめるんですか?」

「その手には乗らない。後悔しながら死ね。わからせてやる!」

「やめてーっ! 童貞で陰湿で卑怯な非モテ先輩!」

「死ね!」


 バリバリ……ボリボリ……。


「ぐ……あ……」


 改めて用意しておいた私の分身が襲われていた。

 スケルトンたちは私が見えなくなるくらい覆い被さる。


「エリートもこれだけの数が多いと動けないだろう」


 確かに分身が食われているのは見ていて心が痛い。


「見たか。これぞ我が偉大なる黒魔術なり」

「もういいですよそういうの」

「!?」


 私の声に会場内が騒然としている。


 チャドさんも「い、一体どうなっているんでしょうか。食い殺されたはずのブリジットさんの声が聞こえて……あ! ご覧ください! く、空間が引き裂かれました!」

「なに……!?」


 手で空間を掴むことは不可能。

 だが魔法は常に常識を覆す。

 指をパチンと鳴らすと同時に空間のカーテンは消散した。


「私はゴッドウィザード。だけどもう一つの顔がある。神絵師としての顔がね」

「それはお前の趣味活動だろ?」

「単なる趣味だけで好奇心は終わりませんよ」


 絵師の中でも私は特別。


「天魔級魔法……絵魔術イラストマジックです」

「絵魔術……だと?」

「描いたモノを具現化する。……なんてことは誰でも考えそうだよね。でもそんな当たり前のことができるのって素敵だと思うんだ」


 知識と経験があれば無限に生み出される。

 これこそ絵魔術の最大の魅力。

 何よりも好奇心を刺激する。

 エリクが髑髏快進撃アンデットアタックを唱えると同時に【分身】と【会場の一部】をすぐに描いた。

 彼が私を襲う頃にはすでに分身を身代わりにしたのだ。

 そしてマントのように私を隠せば気づかれない。

 スケルトンたちは術者に従って行動するので、本体を見つけることは不可能である。


「それでもスケルトンは無敵だ」


 確かにエリクの言う通りだ。

 光属性の魔法ではないと何度も蘇る。

 会場内を照らす光では意味がない。

 私は杖を掲げて黒魔術をすべて無効化にする天魔級魔法を唱えた。


燦々さんさんたる女王じょうおうよ。旭光きょっこうあおぎ、地上ちじょうらしたまえ。【金烏来光きんうらいこう】」


 上空に浮かぶ幾何学模様から手のひらサイズの小さな太陽が出現。

 周囲に光を放出させた。

 アンデットたちは悲鳴を上げて煙となって消失する。


「ゴッドウィザード。やはり最上位職なだけある」

「負けを認めたほうがいいよ。死にたくないよね?」


 すると何を思ったのか、エリクは私を見つめて「……くだらない」とつぶやいた。


「え?」

「ゴッドウィザードが趣味に時間をかける? 神絵師? そもそも絵師ってなんだ? 絵を描くだけなのにファンの前で師匠面か? 笑わせる」

「……ライン越えですよ」


 拳を強く握りしめる。


「推し活なんて所詮、弱者のための現実逃避だ」


 ブチッ!

 私の心の何かが弾けた。


「取り消してください」

「ん?」

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