転生したら11番目の勇者だった~先に転生した10人のチート級の悪徳勇者たちに全て奪われたので歴代最強の魔王娘や仲間たちと共に世界を取り戻す~
【10番目の悪徳勇者編<第3章:2/2>■零和充一の視点■】「十塚剡弐を倒すために【新たな力】を手に入れる!」&「ブリジットとエリクの意外過ぎる関係とは!?」
【10番目の悪徳勇者編<第3章:2/2>■零和充一の視点■】「十塚剡弐を倒すために【新たな力】を手に入れる!」&「ブリジットとエリクの意外過ぎる関係とは!?」
「つまりフェイは十塚剡弐と別な悪徳勇者の目的に付き合わされたってことね」
「私は……魔王軍を……大切な仲間を……うう……」
ミコナは涙を流すフェイの頭を優しく撫でる。
「よくがんばったね。無理させてごめんね。私があなたの側にいながら気づかなかったから」
「本当に……ごめんなさい……」
「だからみんなの分まで生きよう」
「……はい」
フェイさんは本当に辛かったんだ。
「どうしてエリシアさんたちは何も対策しないんだ」
ヒルダが代わりに返答する。
「しないのではなくできないんです。悪徳勇者たちを束ねているのは誰ですか?」
「あ、そうか。バックに1番目がいるんだ」
「世界政府が『悪徳勇者たちとは争いではなく対話で解決せよ』と各国に圧をかけてきまして」
「解決できるわけないじゃん」
「悪徳勇者の思うつぼでしょうね」
妖精たちの被害を見て見ぬ振りしなければならないなんて……。
そんなの許されない。
――【冥界の女神の力】を手にするのだ。
え? アマナ様?
どうして声が聞こえるんだ?
――契約者には余の声が直接脳内に届くようになっている。それに【Eランク】にならなければ冥界の女神の力が使えない。
なるほど。
――これから話すことについて皆の者に伝えてくれ。
明日の11時にとある場所でフレちゃまと共に来てほしい。
そのことをミコナたちに伝えた。
「アマナ様と言えば創造神と肩を並べるほどの強さを持ち、魔神たちがひれ伏すほどの力を持つと言われているよ」
「ブリジットは物知りだな」
「アマナ様を知らない者はいないからね。ソルネール王国にはアマナ教と呼ばれる宗教があるし」
主神はアマナ。
一神教に見えて実は多神教。
信仰は自由らしい。
「窓の外を見ればわかるけど、のぼり旗が民宿や建物の壁面に取り付けてあるじゃん。アレが我が国の国旗で、アマナ様の思想を反映させたものなんだ」
白と赤の二色カラー。
全体は真っ白に塗られており、中央に赤いハートが四つ並べられてある。
それがクローバーを形作っていた。
赤は愛。
白は希望を意味するらしい。
「ん? どうした? フレちゃま」
ミコナとヒルダも何かに気づいたのか、お互いに顔を見合わせてうなずき、なぜかドアに近づく。
「そこにいますよね?」
ヒルダに言われると同時だった。
ドアが開き、カルラとエリクが堂々と部屋の中へ侵入してきた。
「あらばれちゃったわぁ」
「何の用ですか?」
ヒルダは素早く剣を抜いた。
「落ち着きなさいよ。ここで戦うつもりはないわ」
「では一体?」
「剡弐から頼まれたのよ。『俺様を倒したければ闘技場へ来い』って」
「なんでわざわざ闘技場なの?」
「充一くんに勇者として生きるのを諦めてほしいからよぉ。みんながいる前で公開処刑しようって魂胆」
参加者は俺、ミコナ、そしてブリジットの3人らしい。
「ミコナ様はともかくヒルダでしょうよ!」
「闘技場はギャンブルや殺害が禁止になったの知ってるわよねぇ? 違法なのよ。ってことは悪徳勇者以外は世界政府も国も容赦なく罰するの。あたしだって自警団に捕まりたくないしぃ」
「こればかりはあなたの言う通りです。悔しいですけど騎士団の信頼を失ってはいけません。団長はもちろんのこと、団員すべてにご迷惑をおかけしますので」
ヒルダは副団長だ。
多忙なのにこうして俺たちと一緒にいられるのも、エリシア王女から「当分の間は騎士団から離れて零和充一様のサポートをお願います」と指令が下されたからだ。
違法上等な闘技場で顔が知られたらマズいもんな。
「私が本気を出したら闘技場……いえ、この国を火の海にしてしまうでしょう」
「中二病?」
「違うし! これは脅しのための文句であって、本当にやったら処罰どころか国から追放されちゃうって!」
ならいいけど。
するとエリクは何を思ったのか「相変わらずだな。ブリジット・ローレンス」と声に出した。
「なんて言ったの?」
「ごめんなさい。聞こえませんでした」
「覇気が感じないな。生きてるのかこの男」
「というかいたんですね。気がつきませんでした」
4人のそれぞれの感想を聞いて俺はエリクに同情してしまう。
普段しゃべらない人間が口を開くと思った以上に声が出なくなるんだよな。
それでみんなの前で聞き返されるという流れだ。
恥ずかしいんだよアレ。
「カルラさんのペットですか?」
「犬よ」
「コイツの冗談に付き合うな。痛い目見るぞ」
「犬がしゃべってる!? すごい!」
「……チッ」
わかるよその気持ち。こっちは必死なのに相手は何も分からないままイジってくる。
「部外者はすぐにお家に帰ってくれませんか? 例のアレ、バラされたくないでしょ?」
「……ヒルダ・ゴールトンは高く評価できる。だがお前は許さない」
「あれれ~? さっきから私のことばかり見ててキモいんですけど。あ、もしかして私のファンですか? サインいります?」
「いらない。本当に癪に障る女だ」
「え~何のことですかぁ? 人気者の私にはわかりませーん」
「知り合いなの?」
「いえいえ違いますよ。ミコナ様が聞いたらドン引きするかもしれません」
「ドン引き?」
「世にも奇妙な都市伝説があったんですよ。女子更衣室を覗いて――」
「許さん!」
突然の大声に俺たちはびっくりする。
というかそんなに大きい声が出せるなら最初からそうしろ。
肺活量が弱いのは分かる。
だってもう息が上がってるじゃん。
「ねえエリク。あなたここへ来る前からずっとブリジット・ローレンスのことを気にしていたみたいだけど、この子はあなたの何なの? もしかして……初恋の子? ロリコンだったの?」
「ロリコンじゃない。俺の人生を破滅に導いた悪魔だ」
「なるほど。ブリジットって言ったっけ? 一部の界隈では有名みたいだけど。彼は彼で有名なのは知ってるわよねぇ?」
「ストーカーですよね。知ってますよ。だから我が母校に侵入し」
「これ以上言ったら殺す……ゴホッ……ゴホッ……」
喉弱すぎないかこの人。
運動苦手そうだもんな。
エリクは固い表情のままブリジットを見下した。
「くだらない本やダサい絵など描いてるヒマがあれば全うに生きろ。絵師は滅べ。ついでにリア充は爆発しろ」
ブリジットのこめかみがピクッと反応した。
先ほどまでの笑顔から一転し、険しい目つきに変わる。
「……ダークメイジって本当に陰湿だね。だから嫌われるんだよ」
「言ってろのぞき魔」
「失礼な! のぞき魔ではなく、情報収集だし! ってかあなたに言われたくないから!」
杖と杖が同時に出される。
エリクは黒く染まった魔族が使いそうな禍々しい杖。
反対にブリジットは杖の先端に宝石が浮かんでおり、いかにもファンタジーらしい物理法則を無視した魔法武器だった。
どちらも自由に武器を召喚できるタイプのようだ。
「落ち着けブリジット」
「わかってるよ先輩」
カルラは「それでぇ~どうするのぉ?」と聞いてきた。
「もちろん参加する」
「私も参加するわ」
「この男は私が処します。絵師をバカにした罪は大きい」
カルラは唇を歪ませる。
「ならば決定ねぇ。明日の23時。闘技場でお待ちしてるわぁ」
エリクは「テレポート」と唱える。
二人はその場から消失した。
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