【10番目の悪徳勇者編<第2章:1/7>■零和充一の視点■】「神絵師にしてゴッドウィザードであるロリ美少女……ブリジット・ローレンス登場!」

「なんだ?」


 食事中のことである。

 女の子の甲高い声が聞こえたのでそちらを振り向く。

 受付所付近にいたのは三人の美少女だった。


「ああ……激推しが目の前にいる……くぅ~たまりませんなぁ」


 ちょっと待て。今、なんて言ったあの子?


 聞いたことがある単語に少しテンションが上がるも、場所も場所なので冷静になった。


 とんがり帽子をかぶるツインテールの橙色だいだいいろの髪で琥珀こはく色の瞳を持つ美少女。

 ヒルダと比べると背丈は低く幼い印象があった。

 13~15歳ってところだろう。

 魔法使いらしさを感じさせる個性的溢れる独特な衣装姿。

 スカートは短く、ニーハイソックスとロングブーツの組み合わせは絶対領域を生み出している。

 しかも萌え袖。

 いわゆる袖口から指先だけが出ているのだが、オーバーサイズだから可能だ。

 庇護欲ひごよくがかき立てられる。


「サインください! あとイラストのモデルになってくれませんか? ファンのために是非!」

「も、モデル?」

「安心してください。薄い本……じゃなくて、健全さを大事にしておりますので」

「薄い本だと?」

「若い成人男女の愛欲を満たしてくれる娯楽本のことです」

「知ってるよ」

「は、破廉恥な本ですよね。でも最近、家に帰った後に一人でじっくり読むことが多いです」

「へぇ読むんだ」

「その……す、スッキリできますので……」


 顔を赤らめて説明するヒルダ。もじもじしているところが可愛らしい。


「もしかしてM?」

「……実はドMです。内緒にしてくれますか?」


 小声で言われると聞いているこっちもドキドキしてくるのだが。

 この世界は16歳で成人を迎えるらしい。

 17歳の俺やヒルダは大人として扱われる。


「ブリジットは絵師と呼ばれていまして、若干14歳にして神絵師と呼ばれるほどの腕前なんです」

「それってアウトじゃね?」

「ビリィ先生の時は成人女性に化けているんです。法律違反になると営業できないので」


 しかも最初の読者がヒルダらしい。

 友人として辛口評価をしているのだそうだ。


「薄ピンクの髪をした子って魔族だよな?」

「あの麗しきお方こそ、歴代最強と名高い魔王娘ミコナ様だ」

「あの子が……魔王娘」

「だが変だな。なぜここにいらっしゃるのだ?」

 

 ブリジットは大きく手を振ってこちらに近づいてきた。


「やっほーヒルダ! みてみて~ミコナ様だよ!」

「ここは冒険者協会ですよ。みんながいる前で騒がないでください」

「神推しが目の前にいたら人生の全てを捧げるものでしょ。ん? あれぇ? そちらにいるのは……まさかッ!」


 ブリジットは俺に気づいたのか、いきなり俺の両手を握ってきた。


「充一先輩じゃん! 神発見しちゃったんですけど!」

「俺のこと知ってるの?」

「昨日の戦いっぷりを覗いたからね。宿に泊まったみたいだし」

「覗いた?」

「魔法だよ魔法。透視魔法って言うんだけど、先輩の様子を観察させてもらったんだ」

「それって法律的にどうなの?」

「本人の同意があればOK!」

「いや同意してないからな!?」


 ブリジットは俺の手を離した。


「さっきから先輩って呼んでるけど」

「日本では常識なんでしょ? 一度でもいいから勇者様を先輩って呼んでみたかったんだ。ってなわけで早速なんだけど服を脱いでちょーだい」

「へ? 服?」

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