転生したら11番目の勇者だった~先に転生した10人のチート級の悪徳勇者たちに全て奪われたので歴代最強の魔王娘や仲間たちと共に世界を取り戻す~
【10番目の悪徳勇者編<第1章:4/6>■零和充一の視点■】「なんでアイツが10番目の悪徳勇者なんだよ」充一にとって最悪の男だった……。
【10番目の悪徳勇者編<第1章:4/6>■零和充一の視点■】「なんでアイツが10番目の悪徳勇者なんだよ」充一にとって最悪の男だった……。
俺の背後に巨大な影が迫っていた。
「死ね!」
ヒルダは俺を守るようにして抱きつき、一緒に転がる。
間一髪だった。
もしヒルダが守ってくれなかったら、175㎝の俺と同じくらいの両手斧で真っ二つにされていただろう。
「ヒルダ!」
肩を押さえたまま苦痛の表情を浮かべている。
「大丈夫です……」
よく見ると服から血が滲み出ている。
肩当てが破壊されたのか。
鎧の一部を破壊するとは……なんて力だ……。
「避けたはずだろ? どうなってる?」
「え?」
「気がつかなかったのか? ヒルダは敵の攻撃をかわしてお前を守ったんだ」
フレちゃまはそれを見抜いていたからこそ、何も手を貸さなかったそうだ。
「おそらく能力か何かだと思います」
「能力?」
「噂ではどんな相手でも必ず仕留めるそうです。アレがカシラです。山賊最強の男」
身長2メートル以上。
プロレスラー顔負けのどっしりとした体型。
ボルドヘッドで黒い顎髭が似合う。
他の山賊たちが小さく見えてしまうほど巨漢だ。
カシラは俺を見つめてこう告げた。
「十塚剡弐が言ってた通りだな。11番目の勇者はテメェか?」
聞き間違いじゃなかった。
まさかアイツがこの世界にいるなんて……。
中学時代の俺は勇者の資格にふさわしいと思っていた。
世界を救うためにはまず悪人を懲らしめる必要があると。
その結果がコレだ。
「嘘だろ? 軽く殴っただけなんだけどな」
俺は仰向けに倒れていた。
青空をバッグに屈強な男がのぞき込んでいる。
日差しの影響で男の表情がよく見えなかった。
「十塚剡弐さんだ。なんでこんなところに」
「さあ? あのガキが喧嘩売ってきたんじゃね?」
「相手を知らずに挑むとかバカ過ぎ」
警察や救急車など誰も呼ばず、俺と剡弐を囲んで見守っている。
いや、近くにいるサラリーマンの男性がスマホを耳に当てていた。
これなら安心できる。
「俺様が何者か分かっていて成敗したいって言ったんだよな?」
「もちろん……です……」
剡弐は元総合格闘家として有名だった男だ。
タンクトップからむき出しな筋肉は丸太のように太く、両腕にそれぞれタトゥーが彫られている。
しかも彼は素手だった。
「!」
お腹に強い衝撃が走る。
軽く蹴られたのだが、胃に直撃したため胃液を吐き出す。
相手は大人だ。
やはり戦おうとした時点で間違っていた。
呼吸が苦しい。このままだと……死ぬ……。
「二度と俺様に逆らえないように痛めつけてやる」
「どうして……」
「あ?」
「どうして……世界チャンピオンになる夢を諦めたんだ」
「お前……」
「無敗の記録を保持していたはずのあんたが、傷害事件で引退って……」
剡弐はため息を吐いた。
「夢を諦めた? バカか。現実は甘くねぇんだ」
「あんた……」
「止めた。お前をいじめてもつまんねぇ。帰る」
「ま、待って……」
俺は震える手で剡弐の足を掴もうとするが届かなかった。
ヤクザの事務所へ単独で乗り込んで警察に捕まった後、刑務所から脱走してトラックにはねられて死亡したとニュースで話題になった。
まさか同じ世界に転生していたなんて……。
「十塚剡弐はどうやって知ったんだ? 充一はたった今転生したばかりなんだぞ……充一?」
体の震えが止まらない。
呼吸が浅くなる。
「知り合いだったのか?」
「……ちょっとね」
「何があったのか知らないが、怖じ気づいている場合ではないぞ。戦闘神アマナ様から力を授けてもらうんだ」
「アマナ……?」
山賊たちは奇声を上げてこちらに近づいてきた。
「ヒルダは下がってろ。ここからは私と充一でやる」
「で、ですが……」
「足手まといだとは思っていない。よくぞ充一を守ってくれた。感謝する」
「わかりました。ですが気をつけてください。相手は最強の山賊です」
「ああ」
フレちゃまは両手を合わせた。
「
突然、俺の視界に変化が起きた。
山賊たちの動きがスローモーションに見えたのだ。
「
俺とフレちゃまを取り囲むように魔方陣が出現する。
頭上に六芒星の紋章が浮かび上がった。
五角形や八角形といった術式が立体感を帯びて青く輝き始める。
「なんだこれ」
「ジッとしてろ。
火(赤)、水(青)、風(緑)、地(黄色)を象徴した宝玉が東西南北に俺たちを囲む。
すると、巨大な結界が山賊たちの行く手を阻んだ。
空間を遮断しているのか?
内側へ侵入できないようになっている。
視界に移る景色を彩る色が失われていき、やがて白黒に染まった。
歴史を感じさせる巨大な観音開きの扉が目の前に出現する。
「なんだこれ……」
「ここは霊界の一部だ。儀式中は時と空間が静止している。今の私では3分が限界ってところだ」
扉が開く。
現われたのは大賢者のような格好をした巨人だった。
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