転生したら11番目の勇者だった~先に転生した10人のチート級の悪徳勇者たちに全て奪われたので歴代最強の魔王娘や仲間たちと共に世界を取り戻す~
【10番目の悪徳勇者編<第1章:3/6>■零和充一の視点■】「美人騎士ヒルダ登場!」戦場ではすでに戦いが始まっており、その敵集団はまさかの……。
【10番目の悪徳勇者編<第1章:3/6>■零和充一の視点■】「美人騎士ヒルダ登場!」戦場ではすでに戦いが始まっており、その敵集団はまさかの……。
「ヒルダさん! ご無事でしたか!」
「もちろんです。騎士団の副団長として私が負けるわけにはいきませんから」
すると俺に気づいたようだ。
「おや、こちらの方は」
「11番目の勇者である零和充一様です」
「ついに救世主様が現われたのですね!」
めっちゃ期待されてるじゃん。
ヒルダは俺に深々とお辞儀をする。
礼儀正しそうな子だ。
「ヒルダ・ゴールトンと申します。職業は騎士です」
腰まで届くロングヘア。
引き締まった肉体。
全身を覆うプレートアーマーは西洋騎士を象徴する鎧だ。
首当て、肩当て、胸当て、
鎧に模様が描かれてあり、ゴージャス感があった。
「お久しぶりです。フレちゃま様」
「フレちゃまでいいぞ。いつ以来だ?」
「副団長に就任した時期なので去年になりますね」
「もう1年も経つのか。立派になったな」
「いえ。これもフレちゃまのおかげです。ミコナも祝っていただけましたし」
「そうだったな」
知り合いなのかこの二人。
「早速なんですが、戦いに参加していただけますか?」
「もうやるの?」
「当たり前だろ」
「そもそも俺の能力ってなに? 武器は? 転生特典があるんだよね?」
「もちろん。これから契約の儀式を行いたいのだが」
「時間がありません! 現地でお願いできますか?」
「それなら仕方ない。いいぞ」
「いいの!?」
「ではいきますよ!」
ヒルダは俺の手を握ってきた。
「手を放さないでくださいね」
ヒルダを中心に幾何学模様が出現した。
これが魔方陣……リアルで見るのは初めてだが、こんな非科学的な現象が目の前に起きているなんて夢にも思わなかった。
ヒルダは「テレポート」と唱える。
すると周囲の空間が溶け始めた。
やがて別な景色が視界に飛び込んだ。
「ここは……?」
「東区です。先ほどいたところは中央区なんです」
美しい光景が目の前に広がった。
レンガで敷き詰められた道がまっすぐ伸びている。
オシャレでカラフルな色合いの家が道沿いに並んで建っていた。
周りは商店街なのか、レストランをはじめ、武器屋や薬屋などファンタジーゲームにありがちな光景である。
「キャアアアア!」
女性の叫び声が城下町に響き渡り、一気に緊張感が増した。
「な、なんだ……」
「山賊です」
「山賊?」
「10番目の勇者が山賊たちと手を組んで東区を乗っ取ろうとしているのです!」
遠くから大量の人影が見えた。
「ヒャッハー!」
血だらけの斧を持った男たちがいた。
ボロボロの歯にモジャモジャな髪の毛。
タンクトップが血や泥などで滲んでいる。
無地の黒いズボンを穿き、汚れたブーツが目立った。
「十塚剡弐の命令通り東区は乗っ取るぜぇ!」
え? 今なんて言った?
「騎士団の副団長としてあなたたちの悪行を許しません!」
「待ってくれ! 10番目の勇者について聞きたいことが……」
ヒルダは剣を鞘から抜くと同時に山賊たちの群れへ突入した。
「死ねぇ!」
「甘い」
ヒルダは上体を低くする。
身のこなしが軽く、無駄の無い動きだった。
そもそもプレートアーマーは全身装備なので重たい。
鎧の種類にもよるが、最大20㎏を超えると言われる。
だがそれすら感じさせなかった。
軽やかな動きを見せるヒルダは相当な鍛錬を積んでいることが分かる。
ヒルダの持つ細身の長剣は長さが60センチ程度。
西洋の剣は刀を比べると反りが無くまっすぐな形をしているのが多く、厚みがあった。
そこそこ重量があるため、片手で扱うと手首や腕全体に負担をかけやすいと言われている。
しかも細身の剣は脆く、無作為な攻撃は適していない。
何人も斬れるほど耐久性が優れていないのだ。
確実に殺すためには急所を狙うしかない。
「覚悟」
ヒルダは山賊の首にめがけて前傾姿勢のまま振り下ろす。
「ぐあ……」
一撃必中。
体格がある山賊でも頸動脈を狙われれば一溜まりもない。
ヒルダはすかさず周囲を取り囲む山賊を追撃する。
「なんだこの女……」
彼らの振る斧が一切当たらなかった。
体を反転させては背後にいる山賊の肺の部分にめがけて突き刺す。
「魔法を使うまでもありませんでしたね」
ヒルダは剣を鞘に収めた。
「さすが名誉騎士の娘だな。副団長の名も伊達ではない」
「いたの? フレちゃま」
「私もテレポートは使える」
これ、ヒルダ一人でも余裕じゃね?
周辺に転がる山賊たち。
死体の山と化していた。
「舐めてんじゃねぇぞテメェら!」
「え?」
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