【10番目の悪徳勇者編<第1章:1/6>■零和充一の視点■】美人過ぎる双子の王女様にテンションが上がる充一。

「零和充一を連れてきた」

「お疲れ様です。フレちゃま」


 転生はあっという間だった。

 フレちゃまが俺の胸に手を当てると同時に気を失ったのだが、その時に別な肉体へと移し替えたらしい。

 それから気がつくと見知らぬ城へたどり着いたのだ。

 どうやらここが王宮の間らしい。

 宮殿の天井はとても高い。

 交差するアーチや柱の彫刻、壁を埋め尽くすほどのステンドガラスは素人目線からみても壮大の一言。

 歴史を感じさせるそれらの造形技術に圧倒された。


「ってマジか!」


 俺は自分自身の体に変化が起きていることに気づく。

 黒をベースに襟や裾、前立てといった細かい部分が銀で統一されている。

 スタイリッシュでカッコイイデザイン。

 てっきりド派手な色合いで目立つ格好かと思った。


「というか武器持ってないぞ!?」

「今はまだ持っていないだけだ。まずは王女たちに挨拶をするんだ」


 玉座の位置は階段の高い位置にある。

 まさかの双子だとは。

 見たところ歳は俺と同じくらいか。

 正しいお辞儀の仕方が分からなかったので、とりあえず頭を下げてみる。


「顔を上げてください。11番目の勇者様」


 11番目?


 他に勇者がいるってことだよな?


「初めまして。私は双子の姉のエリシア・ソルネールと申します」


 一人目は礼儀正しい清楚系の美少女。

 白髪のロングヘアに碧色へきしょくの瞳。

 服装はいかにも王女らしい優雅さが漂う。

 両膝に両手を乗せており、脚をそろえた綺麗な座り方をしている。


「隣に座るのは妹のルナリアです」

「ども」


 黒髪のロングヘアに朱色しゅいろの瞳。

 姉のエリシア王女と比べるとクールそうなのに露出度が高いドレスがギャップ差を生み出している。

 足を組んでおり、アームレストに肘を乗せたまま、片手で頬杖をつく。

 視線を外してはどこか遠くを眺めていた。

 俺に全く興味がなさそうだ。


 というか、角度的にパンツが見えそう……。


「ようこそソルネール王国へ。異世界へ転生してすぐのところ申し訳ないのですが使命を言い渡しますね」

 どうやらこの世界の住人は異世界はともかく転生という概念まで知ってるようだ。


「あなたの使命は先に転生した10人の悪徳勇者たちを全員倒すことです」

「悪徳勇者?」

「勇者であるのにも関わらずその特権を利用して勇者らしからぬことをするのです」


 漫画やアニメ、ラノベにおいて嫌われ役として登場することが多い。

 そして悪徳勇者になった主人公はロクな終わり方をしないことで有名だ。


「勝手に放置しておけばいいと思いますよ。どうせ最後は処刑でしょうし」

「それが可能でしたら10人も増えることはありません」


 たった10人だろ?


 別に問題なくない?


「今世界で起きている事情について簡潔に説明しますね」


 現在、世界政府&亜人・魔族連盟VS悪徳勇者連合という構図だそうだ。


「悪徳勇者の中でも異次元の強さを誇るのが1番目の勇者と言われています」

「1番目の勇者?」

「最初にこの世界に転生した勇者だよ」


 1番目より以前から勇者や英雄たちが存在していたらしい。

 人類と魔王軍は敵対関係。

 王道ファンタジーでは定番と言える。


「俺と同じ元日本人ってことか?」

「全員、そう名乗っていたみたいです」


 10人の元日本人に苦戦してるのか? マジかよ。

 少なくともこの世界に生きる人たちのほうが強いと思うんだけどな。


「原点にして頂点。9人の悪徳勇者たちが束になっても勝てなかったらしい。神が警戒し、全ての種族が恐れるほど。それが1番目」


 それだけ聞くと本当に強いのかよ? って疑ってしまう。

 肩書きだけ立派なのにいざ戦ってみると、言うほど強くなかったりするんじゃないのか?


「1番目の目的は【悪徳勇者たちを集めて神々に最終戦争を起こすこと】です」

「しかも1番目は世界政府にこう告げたらしい。『零和充一が悪徳勇者になった時、全世界が崩壊し我々が勝つだろう』と」


 え……?

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