第3話 婚約者の屋敷ッッッ!!!

「走れ! 私ッッッ!!!!!!」



私の名前はジュウ・ヨク・ゴウヲセイース。


ジュウ領のゴウヲセイース侯爵の次女として産まれ、現在キン領のサイコー公爵家の長男キン・ニック・サイコーをシバく為に走っている。



いや……走っていたッッッ!!!


気付けば、憎きキン・ニック・サイコーが暮らす屋敷の前に私はいた。



ここまで長い旅だった……。


姉者から不倶戴天ふぐたいてん(同じ天の下、生かしておけぬ程の憎しみ)の敵であるキン・ニック・サイコーの話を聞いて、行く千里の道を進みここまで辿り着くのに2時間1分8秒。



ここまでの冒険が私を更に高みへと引き上げたであろう。


2時間1分8秒前の私とは違う。

これなら……勝てるッッッ!!!!!



しかし、相手は公爵家の嫡男。

侯爵家の淑女として、それ相応の態度で挑まなければいけない。



「私は淑女……落ち着け」



滾る気持ちを抑え、静かに私は門に手をかけた。



「破ッッッ!!!!!!」



気合いと共に粉々に砕け散る門。


舞う土埃。



「ふむ、今宵は来客の予定などなかったはずだが……」



土煙が晴れて、壮年のおとこが私の前に姿を現した。




「お初にお目にかかるッッッ!!

私はジュウ領のゴウヲセイース侯爵の次女ジュウ・ヨク・ゴウヲセイースと申ぅぅぅぅすぅぅぅッッッ!!!!!」







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