第2話 婚約者を知ったのはッッッ!!!

「ぬおぉぉぉぉぉッッッ!!!」



私の名前はジュウ・ヨク・ゴウヲセイース。


ジュウ領のゴウヲセイース侯爵の次女として産まれ、現在婚約者であるキン領のサイコー公爵家の長男キン・ニック・サイコーに婚約覇棄を叩きつけられていた。


今まさに闘気を溢れさせているニックを前に、私は奴との馴れ初めを思い出していた。



奴との初めての遭逢は私がまだ6歳の時だった。


あの頃の私は、BIG3の合計820kg(ベンチ250kg、デッド300kg、スクワット270kg)

と4桁にも届かず貧弱であった。


私は、己の力のなさに嘆き悲しみ痛哭し、

母猿断腸ぼうえんだんちょう(はらわたが断ち切れる程の怒り、悲しみ、苦しみ)の日々を送っていた。


そんな私を見かねたのか、ある日、姉者からとある話を聞かされた。


何でも、キン領のサイコー公爵家の長男キン・ニック・サイコーが私と同い年にも関わらずBIG3の合計が、軽々4桁を超えていると。


尊敬する姉者を除いて、6歳でBIG3の合計が4桁を超える者がいるなど信じられなかった。


姉者はこうも言った。



「奴を超えてみせよ」



私は激怒した。

私は事の真偽を確かめ、奴をシバいて超えると決意した。

私は、すぐに出発した。

日没までには、まだ間がある。

私を、待っている人があるのだ。

少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。

私は、信じられている。

私の命なぞは、問題ではない。

死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。

私は、信頼に報いなければならぬ。

いまはただその一事だ。


「走れ! 私ッッッ!!!!!!」







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