試写
いはし
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試写
8月、そろそろと夏の終わりが近づいている。ワンルームのアパートで、私はテレビを見ている。さしておもしろくもない、ゴールデンタイムによく流れるバラエティ番組だ。司会の薄ら笑いが目に映る。
テーブルに置いてある飲みかけの麦茶を手に取る。網戸から入ってくる少し涼しくなった風に、眉間を寄せた。
声が。声が聞こえる。
先ほどから声が。リリリリリリ。
蝉のなく声に混じって、女の声が。
リリ。リ。
ろくでもない。
いつになく調子よく喋るものだ、と私は関心した。女の声は責めたてる。己の不幸を嘆き、怒り苦しみ悲しみを、その真黒な口から吐き続ける。延々と。延々と。
女の顔を見る。その顔はどこか輪郭がおぼつかない、しかし良く見知った顔だった。私は女へ言葉を吐く。
「もうそろそろやめにしたらどう。どうせ変わりゃしないのだから」
ここへ辿り着いたことが果たして偶然だったのか必然だったのかは、端から判断しようがないことだ。
女からテレビに視線を映した。
良く見知った、女の顔が映っていた。
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試写 いはし @iwtomimimin
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