第四話 お茶会は三人で
「わ、、わあっ!!」
……思わず、座席からずり落ちそうになる俺。
『笹塚~笹塚~終点です…―――、、、』
車掌「お客さん!折り返しですよ?」
「あ………、あ…」
夢…?なんて…―悪趣味な!!
いや…本当に?
「…おまえか?秀美、おまえなのか?」
あいつが、夢枕に立ったのか?
「……おせっかいが」
おまえといい、成井といい、平田ちゃんといい、俺の周りはやさしいおせっかいばかりだ…そして、誰よりもおせっかいで頑固で…優しいのは…
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五月「お兄!待ってたよ~」
さっきの夢とは大違い…子供のような満面の笑顔で五月は俺を待っていてくれた。そして、その隣には…やさしい笑顔のゆうこちゃんが…
「待っていたのは、これか?これか?」
五月「あっ!タカノのティラミスケーキ!……うわあ!この髪飾り!ゆう姉とお揃い!?」
「ああ!」
五月「お兄!センス良い!!」
ゆうこ「あたしの教育の賜物ね!せ~んぱい?」
「おま!!……はい、その通りでございます…」
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三人できりたんぽ鍋を堪能する。
五月は子供に戻ってゆうこちゃんによそって貰っている。温和なゆうこちゃんが、鍋奉行を俺に譲って裏方を仕切ってくる。
五月「あ~~、締めのラーメンもっと~」
「あんまり食べるとケーキ入んないぞ!」
五月「デザートは別腹だもん!」
ゆうこ「五月ちゃ~ん?太るよ~」
五月「ゆ、ゆう姉~~(涙)」
―
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―
夕食もデザートも終わり、片付けも三人でやれば早く終わる。そして、
五月「さ~て、私は実家に戻るね」
「五月?」
五月「正太郎、今日、合宿から帰ってくるんだ。ちゃんと話してみるよ…だからさ!」
五月が耳元で囁く。
五月「(頑張ってゆう姉と仲直りするんだよ?)」
「(五月?)」
五月「(大丈夫!ゆう姉も心待ちにしてるって)」
「………」
―
―
―
―
「じゃ~ね~」と五月が出ていった。
「…と言うシナリオなのね?」
ゆうこ「話が早くて助かるわ」
「で、仲直りするのか?」
ゆうこ「…うまく行かなかったと、長距離恋愛いずれ疎遠とどっちが良い?」
「…そのハイブリッドでいこう。ゆうこちゃんは限りなく復縁を検討しつつ、九州に帰る」
ゆうこ「うわ~、何もやんないやつだ(笑)。じゃあ、後はそれを詰めてみよう!ベッド行こ?」
「…それなんだけどさ…、はい、部屋の鍵」
ゆうこ「?」
「この部屋なら、内鍵で外から開かない」
ゆうこ「うん?」
「ゆうこちゃん、きみはこの部屋で寝るんだ。鍵を掛けてね」
ゆうこ「…私と寝ないの?」
「ああ、そのつもり……だ…よ?」
ゆうこ「そこ、何で断定じゃないの?」
「…仕方ないじゃん、本当は抱きたくて抱きたくて仕方ないんだから…」
ゆうこ「先輩、抱いて良いんだよ?……何で?」
「…………」
ゆうこ「…………」
「…やせ我慢だ!」
ゆうこ「…ふふっ」
ゆうこちゃんが吹き出す。
ゆうこ「あ~あ、やせ我慢か~。仕方ないな。何かかっこいいこと言って来たら…問答無用で押し倒そうと思ったんだけど(笑)」
「…勘弁してくれ、理性が焼き切れるわ」
ゆうこ「あはは!……ねぇ先輩?」
「ん?」
ゆうこ「だったら……お茶会…しよっ?」
―
―
―
コポコポと芳しい薫りを立てるコーヒーメーカーを尻目に、俺は珈琲の準備はゆうこちゃんに任せて、五月のご機嫌取り用に用意していた取って置きのビスケットをテーブルに並べた。
「……あれっ?」
ふと見るとゆうこちゃんがカップを3つ用意している。
「(五月は帰ったのに?……そうか!)」
ダイニングの丸テーブル。今は五月と二人、一年前は、五月とゆうこちゃんと三人で使っていた。
そして、今このとき俺たちと席を共にするのは、
ゆうこ「この三人でお茶会なんて、一度も出来なかったね…でも、私と先輩の今後のことを話すなら……あなたには参加してもらわないとねっ!劉ちゃん?」
『そうだねっ!』
ふと目を凝らすと、そう言って微笑む秀美の姿が、俺にも見える気がしたんだ。
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